85 / 167
魔剣使いの闘い~サンダース編
ep85 国際平和維持軍
しおりを挟む
「どうすんだ?」
トレブルが判断を求めてくる。
俺は一瞬考えたが、
「いや、普通にしよう。ここで変に避けていくのも不自然で怪しくなる」
すぐに方針を下した。
「今なら人混みに混じって逃げていく分には問題ないんじゃねえのか?」とトレブル。
「いや、別の場所から観察している人間がいないとも限らない。今はいつも通りに振る舞うのがベストだ」
「なるほど。了解だぜダンナ」
トレブルとブーストは合意した。
その中で、シヒロは緊張感をむき出しにしてあからさまに固くなっていた。
「シヒロ」
俺はそんな彼女へ身を寄せて、安心させるように肩へポンと手を置く。
「く、クローさん?」
「大丈夫だ。奴らも俺の顔までは知らないはずだ」
「は、はい」
「シヒロ。俺が祭りを好きかどうかさっき聞いてきたよな?」
「え?あ、はい」
「正直、自分でもよくわからないんだ。俺はあまりそういうものに縁がなかったから。ただ、今日はお前と一緒に回るつもりだ」
と俺が言った途端、シヒロの目がぱぁっと輝いた。
「ダンナ。来たみたいだぜ」
トレブルの言葉と同時に、三人組の軽装備の兵士風の男が俺たちの所へ向かって歩いて来るのが視界に入る。
戦後の平和祭の市中で、さすがに甲冑などは着けていない。
だが、周りの視線や彼らの佇まいから、彼らが街の警察ではなく軍の者だというのがすぐにわかった。
「シヒロ、トレブル、ブースト。小腹が空かないか?なんか食うか」
俺はいたって普通に口をひらいた。
「そ、そうですね!」
「ああ」
「ついでに酒も飲もうぜ」
阿吽の呼吸で応えた三人は、おもむろに手近な屋台で飲食の物色をはじめる。
「おい、そこの銀髪の者。お前だ」
三人組の一人が俺を見るなり遠めから声をかけてきた。
「......」
とりあえず俺は聞こえないフリをする。
「そこのお前だよ。銀髪の」
「ん?俺、ですか?」
ここではじめて俺は反応する。
「私達三人は国際平和維持軍の者だ。お前はこの町の者ではないな?」
「ええ。旅人です」
「連れもいるよな?」
「はい。そこの屋台にいる三人です」
「ガラの悪そうな男二人と...少年か?随分と妙な組み合わせだな」
「武器の所持は?例えば剣とか」
「この通りありませんよ。俺は戦えませんので。なのでそこのガラの悪そうな二人の友人に護衛を頼んで旅をしているんです。少年は俺の従兄弟です」
「なるほど......そうか。では祭りを楽しんでくれ」
国際平和維持軍の三人組は必要な確認を終えると、特にそれ以上なにかを疑う様子はなく去っていった。
「......」
うまく誤魔化せたのだろうか?
とりあえずは事無きを得たようだ。
同時に、俺の頭にはある疑問が浮かんでくる。
(この状況で〔フリーダム〕の来襲はあるのか?)
もしそうなれば、フリーダムと国際平和維持軍がぶつかり合う可能性が出てくる。
それはおそらくフリーダムも望んではいないはずだが。
とはいえ、軍がいることを知らずにヤツらが来てしまうことはあり得る。
(いや、そもそも国際平和維持軍は今どの程度の規模の部隊がサンダースに入ってきているんだ?)
今の今まで俺が知らなかったということは、大きい部隊は来ていないと考えるのが妥当だ。
とすると、余計に判断に迷うな。
大部隊が入ってきているのなら、フリーダムの事は彼らに任せてしまうのがいい。
だが、少数部隊しかいないのなら、万が一フリーダムの襲撃が起こると街も人も被害が大変なことになる。
いや、勇者...はなくとも、それに続く実力者がいる少数精鋭の部隊ならばあるいは......。
「あ、あの、クローさん?」
考えこむ俺の顔をシヒロの小さい顔が覗き込んできた。
「ダンナ。どうしたんだ?」
「もうヤツらは行っちまったぜ?」
トレブルとブーストも酒瓶を片手に訊いてくる。
「いや、何でもない。とりあえず問題はなさそうだ。せっかくだ。祭りを楽しむか」
俺がそう言うと、シヒロは嬉しそうに微笑み、トレブルとブーストはニヤリと笑った。
俺もかすかに微笑んでかえし、歩き出そうとした時。
「ねえねえ、おにーさん」
背後からこっそり近づいて来たであろう一人の女がいきなり俺の腕に巻きついてきた。
トレブルが判断を求めてくる。
俺は一瞬考えたが、
「いや、普通にしよう。ここで変に避けていくのも不自然で怪しくなる」
すぐに方針を下した。
「今なら人混みに混じって逃げていく分には問題ないんじゃねえのか?」とトレブル。
「いや、別の場所から観察している人間がいないとも限らない。今はいつも通りに振る舞うのがベストだ」
「なるほど。了解だぜダンナ」
トレブルとブーストは合意した。
その中で、シヒロは緊張感をむき出しにしてあからさまに固くなっていた。
「シヒロ」
俺はそんな彼女へ身を寄せて、安心させるように肩へポンと手を置く。
「く、クローさん?」
「大丈夫だ。奴らも俺の顔までは知らないはずだ」
「は、はい」
「シヒロ。俺が祭りを好きかどうかさっき聞いてきたよな?」
「え?あ、はい」
「正直、自分でもよくわからないんだ。俺はあまりそういうものに縁がなかったから。ただ、今日はお前と一緒に回るつもりだ」
と俺が言った途端、シヒロの目がぱぁっと輝いた。
「ダンナ。来たみたいだぜ」
トレブルの言葉と同時に、三人組の軽装備の兵士風の男が俺たちの所へ向かって歩いて来るのが視界に入る。
戦後の平和祭の市中で、さすがに甲冑などは着けていない。
だが、周りの視線や彼らの佇まいから、彼らが街の警察ではなく軍の者だというのがすぐにわかった。
「シヒロ、トレブル、ブースト。小腹が空かないか?なんか食うか」
俺はいたって普通に口をひらいた。
「そ、そうですね!」
「ああ」
「ついでに酒も飲もうぜ」
阿吽の呼吸で応えた三人は、おもむろに手近な屋台で飲食の物色をはじめる。
「おい、そこの銀髪の者。お前だ」
三人組の一人が俺を見るなり遠めから声をかけてきた。
「......」
とりあえず俺は聞こえないフリをする。
「そこのお前だよ。銀髪の」
「ん?俺、ですか?」
ここではじめて俺は反応する。
「私達三人は国際平和維持軍の者だ。お前はこの町の者ではないな?」
「ええ。旅人です」
「連れもいるよな?」
「はい。そこの屋台にいる三人です」
「ガラの悪そうな男二人と...少年か?随分と妙な組み合わせだな」
「武器の所持は?例えば剣とか」
「この通りありませんよ。俺は戦えませんので。なのでそこのガラの悪そうな二人の友人に護衛を頼んで旅をしているんです。少年は俺の従兄弟です」
「なるほど......そうか。では祭りを楽しんでくれ」
国際平和維持軍の三人組は必要な確認を終えると、特にそれ以上なにかを疑う様子はなく去っていった。
「......」
うまく誤魔化せたのだろうか?
とりあえずは事無きを得たようだ。
同時に、俺の頭にはある疑問が浮かんでくる。
(この状況で〔フリーダム〕の来襲はあるのか?)
もしそうなれば、フリーダムと国際平和維持軍がぶつかり合う可能性が出てくる。
それはおそらくフリーダムも望んではいないはずだが。
とはいえ、軍がいることを知らずにヤツらが来てしまうことはあり得る。
(いや、そもそも国際平和維持軍は今どの程度の規模の部隊がサンダースに入ってきているんだ?)
今の今まで俺が知らなかったということは、大きい部隊は来ていないと考えるのが妥当だ。
とすると、余計に判断に迷うな。
大部隊が入ってきているのなら、フリーダムの事は彼らに任せてしまうのがいい。
だが、少数部隊しかいないのなら、万が一フリーダムの襲撃が起こると街も人も被害が大変なことになる。
いや、勇者...はなくとも、それに続く実力者がいる少数精鋭の部隊ならばあるいは......。
「あ、あの、クローさん?」
考えこむ俺の顔をシヒロの小さい顔が覗き込んできた。
「ダンナ。どうしたんだ?」
「もうヤツらは行っちまったぜ?」
トレブルとブーストも酒瓶を片手に訊いてくる。
「いや、何でもない。とりあえず問題はなさそうだ。せっかくだ。祭りを楽しむか」
俺がそう言うと、シヒロは嬉しそうに微笑み、トレブルとブーストはニヤリと笑った。
俺もかすかに微笑んでかえし、歩き出そうとした時。
「ねえねえ、おにーさん」
背後からこっそり近づいて来たであろう一人の女がいきなり俺の腕に巻きついてきた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった
根上真気
ファンタジー
高校生活初日。神社の息子の八十神は異世界に転移してしまい危機的状況に陥るが、神使の白兎と凄腕美人魔術師に救われ、あれよあれよという間にリュケイオン魔法学園へ入学することに。期待に胸を膨らますも、彼を待ち受ける「特異クラス」は厄介な問題児だらけだった...!?日本の神様の力を魔法として行使する主人公、八十神。彼はその異質な能力で様々な苦難を乗り越えながら、新たに出会う仲間とともに成長していく。学園×魔法の青春バトルファンタジーここに開幕!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。


捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる