上 下
71 / 167
魔剣使いの闘い~ロットン編

ep71 魔剣使いvs魔銃使い②

しおりを挟む
 俺は発砲より先に始動する。

「止まったらダメだ!一気に間合いを詰めて一撃で仕留める!」

 銃弾の軌道線上からズレるように俊敏にギザギザに跳びすすんでいく。

「いい動きだ!だがかわし続けられっか?」

 シヴィスは俺と呼吸を合わせるかのように跳び退がりつつ距離を保ちながら銃弾を発射する。

「きゃあ!」
「あぶねぇ!」
「やべぇ!離れろ!」

 周辺でおそるおそる観戦していた野次馬たちの悲鳴が上がる。
 被弾した周囲の建物が音と破片をバラ撒きながら次々と損壊していく。

「うわぁ!!」
 
 知った女の声が耳に入る。
 シヒロだ。

「!」

 俺は一瞬そちらへ視線を向ける。

「あ、ありがとうございます。ええっと、ドリブルさんと......ぶ、ブースカさん?」

「大丈夫か嬢ちゃん...っておれはトレブルだ!」
「おれはブーストだ!」

 シヒロに目がけて降ってきた瓦礫からトレブルとブーストが守ったようだ。

「よし、あとは......」

 俺は銃弾をかわしながらシヴィスに迫っていく。
 
「すばしっこいなテメー!」

 シヴィスは一定距離を保つように退がりながら銃を放つ。
 
「一定距離を保つ......?」

 なぜヤツは最初にいた屋根上からここまで降りて近づいてきた?
 もっと俺に踏み込まれない距離から撃ってきた方が有利ではないのか?
 ということは......。

『距離と威力の相反性そうはんせいですね。もしくは正確性と威力の相反性』

『だよな』
 
〔謎の声〕と見解が一致する。

『あの魔銃とやらは、魔力を銃弾にして攻撃するもの。魔力が続く限り使用できますので非常に便利な武器です』

『だが威力を上げようとすればするほど制御が難しくなり正確性が下がる。よって威力を維持したまま当てようとするなら結果的に相手との距離を縮めざるを得なくなる』

『そのとおりです。おそらく、彼が見立てたクロー様を仕留めるために必要な威力が今のそれなのでしょう』

『ヤツにとってはあの威力ならこの距離がベストってことだな』

『そして魔力は有限です。いずれ消耗してしまいます。そういう意味でもこの威力と距離かと』

『とはいえヤツが消耗するのを待つと街への被害が大きくなる。トレブルとブーストに守らせちゃいるがシヒロにも危険を及ぼしかねない』

『ワタクシの〔空間転移〕で一気に距離を縮めて仕留めますか?』

『いや、お前のそれはできるだけ温存しておきたい。いつ何があるかわからないからな』

『わかりました。ではどうするので?』

『試したいことがある』

 俺は唐突にビタッと動きを止めた。

「お?疲れちまったかぁ!?」

 シヴィスはここぞとばかりにバンッバンッバンッ!と連射する。
 弾道は正確に俺の体へ突き進んでくる。
 弾はそのまま俺を貫くのか?

特殊技能スペシャリティ〔ニュンパ・フガティオ〕」

 ヤツからは俺が忽然と消失したように見えただろう。
 弾丸は空を切り誰もいない建物へ着弾しボガァァァン!と破壊音を立てる。
 そのやかましい音は俺の気配を紛らせるのを手伝った。
 
「魔剣使い......そこか!」
 
 俺の移動した距離はせいぜい十歩程度。
 意表を突かれたとはいえシヴィスが俺を視界にとらえ直すのにものの二秒もかからなかっただろう。
 だが、そのわずかな間は、俺にとっては充分な溜めとなる。

「こいつもかわせるか?魔剣使い!」

 シヴィスは素早くバーン!と魔銃を発射した。
 同時に、すでに始動体制に入っていた俺も発動する。
 
「〔発閃はっせん〕」

 その場でズバァァッ!と空をえぐるように振り抜く渾身の一閃。 
 それだけであればただの素振りに過ぎないが、もちろん違う。

「なにぃ!?」

 斬閃は空気を斬り裂き鎌鼬かまいたちのような衝撃波となって、向かってくる弾丸をめっしながら敵へとはしる。

「クッ!!」

 予想外の飛び道具にズバァァァ!と被弾したシヴィス。
 咄嗟とっさに両腕で防御したものの、
「今のは......ちっと効いちまったかもなぁ!!」
 確実にダメージは負っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。

yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。 子供の頃、僕は奴隷として売られていた。 そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。 だから、僕は自分に誓ったんだ。 ギルドのメンバーのために、生きるんだって。 でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。 「クビ」 その言葉で、僕はギルドから追放された。 一人。 その日からギルドの崩壊が始まった。 僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。 だけど、もう遅いよ。 僕は僕なりの旅を始めたから。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

処理中です...