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魔剣使いの闘い~ロットン編

ep65 酒場

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【登場人物】
クロー・ラキアード:主人公の青年。銀髪の魔剣使い。転生前は中年のおっさん。
シヒロ・モリセット:作家を目指す十六歳の少女。魔法が使える。
魔術師ゲイン:魔術師。クロー達をつけ狙う。
トレブル:〔ダムド〕のナイフ使い。
ブースト:〔ダムド〕の鈍器使い。
シヴィス:〔ダムド〕のボス。能力や実力は不明。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 *

 夜になると......。

 俺はシヒロを連れて夜の街へ繰り出していた。
 
「つ、次はその店ですか?」
「ああ」
「またいちだんと...」
「ガラ悪そうだろ?」

 すでに酒場も三軒目。
 俺たちは街のゴロツキどもがたむろしていそうな店を狙ってはしごしている。
〔フリーダム〕や〔ダムド〕に繋がる何かを求めての行動だ。

「こ、怖そうな人たちがいますね」
「そうか?その気になればシヒロの方が怖いんじゃないか?」

「は、はい?」
「お前の魔法で焼き殺すぐらいわけないだろ」

「な、ななななにを言ってるんですか!人に対して攻撃魔法を撃ったことなんか一度もないですから!」

「そうなのか?せっかく使えるのにもったいないな」

「魔物に襲われそうになった時に使ったことはありますけど、人に向けてはありません!」

 俺たちが席に着くと、まわりの街のゴロツキらしき男たちはそれとなく様子をうかがうような視線をチラリと運んできた。
 しかし、それ以上のことはなにもない。
 俺は周囲を気にしつつ、体裁で頼んだ酒のグラスを口に運んだ。

 小一時間ばかり過ぎると......。

「く、クローさん。あの...」
「ああ。客がやけに少なくなったな」

「な、なんかちょっと不自然じゃないですか?」
「妙だな」

 俺たちが入店して席に着いてから、店内の客が徐々に減っていっているのには気づいていた。
 だが、極めて自然とそうなっていたので、問題視はしなかった。
 どんな店でも客入りが悪い日はある。

「な、なんか不気味です......」
「オバケの仕業かもな」

「ちょっ!いきなり何を言うんですか!」」
「苦手なのか?」

 しばらくして......。

「か、完全にぼくたちだけになりましたね......」
「いつの間にか店員もいない。どうやら当たりってところだな」

「く、クローさんて」
「?」

「なんでそんなに躊躇ちゅうちょなく危険に突っ込んでいけるんですか?強いのはわかりますけど」

「俺には時間がないからな」

「時間?それってどういう......」

「シヒロ。立て」

「えっ」

 寝静まったような静けさに包まれる。
 明らかに夜の酒場とは思えない。
 店内から外は見えなくなっており、より不気味さをかきたてる。
 俺はシヒロを促して立ち上がると、
「〔グラディウス〕」
〔魔導剣〕を握った。

 それからほんの数秒後...。
 
 ドガァァァァン!!

 突如として凄まじい轟音が鬼のように降り注ぐ。
 吹き飛ぶ椅子、跳ねかえる机。
 酒場へ地殻変動の如き激震が走る。

「うわぁっ!!」
「シヒロ!」

 天井および壁が息を合わせて滝のようにドドドドッ!と崩れ落ちてくる。

 ほどなくして......。

「......く、クローさん!」
「大丈夫だ」

 俺はシヒロを抱き寄せて酒場の外に立っている。
 背後には無惨にも瓦礫の山となった酒場。

「テロか!?」
「あぶねーぞ!」
「に、逃げろ!」

 夜の街は恐怖に混乱していた。
 
『今のは魔法ですね』
 
 謎の声が言った。

『ああ。しかも明らかに俺たちを狙ってだな』

『薄々勘づいていたのでしょう?』

『お前の〔空間転移〕で何とかなると思っていたからな』

『お分かりでしょうが乱発はできませんので無駄な使用はお控えに』

『無駄ではないさ。おかげで敵さんのお出ましだ』

 前方の建物の屋根を見上げた。

「すいぶんな挨拶だな。〔フリーダム〕」

「魔剣使い!貴様、時空魔法も操れるのか!?」

「さあな。で、なんの用だ?」

「何の用だ?だと?フザケけるな!」

 無機質な人間の顔をかたどった仮面を顔面にへばり付け、つなぎのような服を着た輩どもが武器を持ってゾロゾロとたたずんでいた。
 俺に応答したヤツは手に杖を持っている。

「く、クローさん!ひょっとしてあの人、ぼくとクローさんがはじめて出会った日に出くわした...」

「あの時の魔術師か」

「チッ!今度こそ貴様を殺せるはずだったんだ!クソ!」
 仮面の魔術師が悔しさをあらわにした。
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