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旅の少女編
ep49 冒険の旅立ち
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「あ、あの!魔剣使いさま!」
ぼくは何かの衝動に駆られてはげしく呼びかけました。
「?」
「貴方は、旅をされているのですか?」
「まあ、そうだが」
「あの、その...」
「なんだ?」
「ぼ、ぼくを、一緒に連れていってもらえませんか!?」
「は?」
「ぼくは作家になるために、物語を書くために、旅をしています。魔剣使いさまと旅をともにすれば、ぼくの書く物語を完成させられる気がするんです!」
「......」
「ぼ、ぼく、今の以外にも魔法が使えるんです!だから、その、旅のお役にも立てるかと...」
魔剣使いさまは不思議そうな顔でじっとぼくを見つめます。
ぼくは、
(自分でもいきなり何を言ってるんだ?いきなりそんな事言われて相手も困るに決まってるだろ?)
心の中で激しく思いながらも懇願するように魔剣使いさまを見つめ返します。
そこへ急におじさんの笑い声が入ってきました。
「ガッハッハ!いきなりなに言いだすかと思ったら嬢ちゃん、おもしれーこと言いやがる!」
「お、おじさん?」
「なあ銀髪のダンナ。どーすんだ?」
おじさんはニヤけながら魔剣使いさまに回答を迫りました。
「......」
魔剣使いさまは沈黙のままです。
「あ、あの、ご迷惑なら構いませんから!」
ぼくは自分から要望しときながら途端に両手を振って遠慮しました。
ぼくは何がしたいんでしょう。
「俺は〔フリーダム〕と戦いながら、国際平和維持軍にも目をつけられている。俺と来ても安全を保証できない」
魔剣使いさまはやや冷たい口調で言い捨てました。
「そ、それは構いません。ぼくは、貴方と行きたいんです!」
やはりぼくの衝動は抑えられません。
ぼくは、この人と一緒に行きたい......!
「わかった」
「ですよね。無理ですよね。......えっ?」
「俺はクロー・ラキアードだ。シヒロがどうしようがシヒロの自由。好きにすればいい」
「はっ!は、はい!ありがとうございます!」
「ガッハッハ!良かったじゃねーか嬢ちゃん!式を挙げる時は知らせてくれ!」
「そ、そそそそんなんじゃありませんから!変なこと言わないでください!」
顔を赤くするぼくをからかう髭面のおじさん。
愉快にやり取りするぼくらをよそに、魔剣使いさまはすぐに切り替え切り出します。
「おっさん。街の連中にフリーダムが退散していったことを伝えてくれ。じきに平和維持軍の連中も来るだろうし、とりあえずはこの街も大丈夫だろう」
「ああ、わかった。お前さんはすぐに行くんだな?」
魔剣使いさまはコクッと頷くと、
「じゃあ」
きびすを返して歩き出しました。
ぼくは一度おじさんと視線を交わして頷き合うと、魔剣使いさまの背中に付いてそそくさと歩いていきます。
「嬢ちゃん!頑張れよ!夢も恋もなぁ!」
髭面のおじさんは後ろから大声で叫びました。
「や、ややややめてください!」
ぼくは肩越しに叫び返しました。
この時、ぼくは不思議なことに気づきました。
魔剣使いさまの手にあったはずの剣が消えてしまっているのです。
魔剣使いさまの腰にも背中にも鞘はありません。
「あ、あの」
「なんだ?」
「剣は、どうしたんですか?」
「ああ、あれはそういう剣なんだ」
「はあ」
「小説に役立ちそうか?」
「あっ!いえ!そんな、はい......」
なぜ、魔剣使いさまは旅の同行を許してくれたのでしょう。
ぼくが魔法を使えたからでしょうか?
本当のところはわかりません。
いずれにせよ......。
ぼくにとっての本格的な旅が始まったのは、まさしくここからだったのです。
それは、小説よりも小説のような、物語よりも壮大な物語となるものだったのです。
お母さん。
ぼくの旅はもう少し長くなります。
近況はまた、手紙で報告します。
今は、果てしなく広がる夜空に煌めく星たちに、様々な姿形を描いてワクワクしています。
おそらく、まだ知らない星座たちがこの世界にはたくさん輝いているのでしょう。
ぼくは、ぼくの英雄とともに、冒険をしてきます。
~旅の少女編~
[完]
ぼくは何かの衝動に駆られてはげしく呼びかけました。
「?」
「貴方は、旅をされているのですか?」
「まあ、そうだが」
「あの、その...」
「なんだ?」
「ぼ、ぼくを、一緒に連れていってもらえませんか!?」
「は?」
「ぼくは作家になるために、物語を書くために、旅をしています。魔剣使いさまと旅をともにすれば、ぼくの書く物語を完成させられる気がするんです!」
「......」
「ぼ、ぼく、今の以外にも魔法が使えるんです!だから、その、旅のお役にも立てるかと...」
魔剣使いさまは不思議そうな顔でじっとぼくを見つめます。
ぼくは、
(自分でもいきなり何を言ってるんだ?いきなりそんな事言われて相手も困るに決まってるだろ?)
心の中で激しく思いながらも懇願するように魔剣使いさまを見つめ返します。
そこへ急におじさんの笑い声が入ってきました。
「ガッハッハ!いきなりなに言いだすかと思ったら嬢ちゃん、おもしれーこと言いやがる!」
「お、おじさん?」
「なあ銀髪のダンナ。どーすんだ?」
おじさんはニヤけながら魔剣使いさまに回答を迫りました。
「......」
魔剣使いさまは沈黙のままです。
「あ、あの、ご迷惑なら構いませんから!」
ぼくは自分から要望しときながら途端に両手を振って遠慮しました。
ぼくは何がしたいんでしょう。
「俺は〔フリーダム〕と戦いながら、国際平和維持軍にも目をつけられている。俺と来ても安全を保証できない」
魔剣使いさまはやや冷たい口調で言い捨てました。
「そ、それは構いません。ぼくは、貴方と行きたいんです!」
やはりぼくの衝動は抑えられません。
ぼくは、この人と一緒に行きたい......!
「わかった」
「ですよね。無理ですよね。......えっ?」
「俺はクロー・ラキアードだ。シヒロがどうしようがシヒロの自由。好きにすればいい」
「はっ!は、はい!ありがとうございます!」
「ガッハッハ!良かったじゃねーか嬢ちゃん!式を挙げる時は知らせてくれ!」
「そ、そそそそんなんじゃありませんから!変なこと言わないでください!」
顔を赤くするぼくをからかう髭面のおじさん。
愉快にやり取りするぼくらをよそに、魔剣使いさまはすぐに切り替え切り出します。
「おっさん。街の連中にフリーダムが退散していったことを伝えてくれ。じきに平和維持軍の連中も来るだろうし、とりあえずはこの街も大丈夫だろう」
「ああ、わかった。お前さんはすぐに行くんだな?」
魔剣使いさまはコクッと頷くと、
「じゃあ」
きびすを返して歩き出しました。
ぼくは一度おじさんと視線を交わして頷き合うと、魔剣使いさまの背中に付いてそそくさと歩いていきます。
「嬢ちゃん!頑張れよ!夢も恋もなぁ!」
髭面のおじさんは後ろから大声で叫びました。
「や、ややややめてください!」
ぼくは肩越しに叫び返しました。
この時、ぼくは不思議なことに気づきました。
魔剣使いさまの手にあったはずの剣が消えてしまっているのです。
魔剣使いさまの腰にも背中にも鞘はありません。
「あ、あの」
「なんだ?」
「剣は、どうしたんですか?」
「ああ、あれはそういう剣なんだ」
「はあ」
「小説に役立ちそうか?」
「あっ!いえ!そんな、はい......」
なぜ、魔剣使いさまは旅の同行を許してくれたのでしょう。
ぼくが魔法を使えたからでしょうか?
本当のところはわかりません。
いずれにせよ......。
ぼくにとっての本格的な旅が始まったのは、まさしくここからだったのです。
それは、小説よりも小説のような、物語よりも壮大な物語となるものだったのです。
お母さん。
ぼくの旅はもう少し長くなります。
近況はまた、手紙で報告します。
今は、果てしなく広がる夜空に煌めく星たちに、様々な姿形を描いてワクワクしています。
おそらく、まだ知らない星座たちがこの世界にはたくさん輝いているのでしょう。
ぼくは、ぼくの英雄とともに、冒険をしてきます。
~旅の少女編~
[完]
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