しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣士誕生編

ep34 エールハウス②

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「えっ?その声...クロー?」

 相手の反応が返ってきた時、俺はすでに店の奥へと歩み始めていた。

「ナオミ!」
「クロー!」

 フロアの奥側まで進むと、ピタリと立ち止まった。

「!」

 視線の先に映ったのは、ツイスト頭の仮面の男に無理矢理抱き寄せられるナオミと、その足元で血を流して倒れるミックの姿。

「クロー!」
「ん?なに?知り合い?」

 ツイスト頭の仮面の男は、ナオミの体にいやらしく手をまわしながら俺を見てくる。

「おいおいにーちゃん。この街のモンか?なんだかぶっそうなモンまで持っちゃってさぁ」

「......ナオミをはなせ」

「は?」

「ナオミだけじゃない。他の人たちも解放しろ」

「えっ、キミ、マジで言ってんの?」

「......」

「ひとりだよねぇ?キミ」

「そうだ」

「......ぷっ!ギャッハッハ!なにオマエ?正義のヒーロー気取ってんの?その剣でひとりでおれたち全員やっつけよーって?ギャッハッハ!おいみんな!おバカちゃんがここにいるぞ!」

 仮面のヤツらは、声を揃えて一斉に俺を嘲り笑った。

「クロー!本気なの?殺されちゃうよ?」

 笑声の騒音をかい潜るように、ナオミが俺に向かって問いかけた。
 俺は彼女の言葉には答えず、アイツに呼びかける。

『おい!聞こえてんだろ?』

『どうしましたか?クロー様』

『どうしましたかじゃない!なんでさっきから黙ってんだ!』

『お邪魔しないよう努めていただけです』

『まあいいそんなことは!ひとつ教えてくれ!』

『なんでしょう?』

『今この場で、女の子たちを傷つけずに、仮面のヤツらだけを倒す技はあるか?』

『先ほどの〔ニュンパ・ギャッシュ〕でも、やろうと思えばできますが?』

『いや、いくら能力を得たからといって、使い慣れたわけじゃないだろ?だから...』

『クロー様。ご自身でもお気づきかと思いますが、すでに貴方には魔導剣士としての力が備わっています』

『なあ、それってどういうことなんだ?』

『貴方は〔魔導剣〕と〔同期〕し、剣に蓄積された経験と能力を獲得しています。貴方が事もなげに技を行使できるのはそのためです。さらにそれだけではありません。魔導書もです』

『魔導書?』

『〔魔導剣〕の一部は、魔導書と〔並列化〕され、魔導書に保存されたデータが具備された状態となっています。貴方の懐に魔導書をしまわせたのはそのためです。
 ただし、あくまで〔同期〕は貴方と剣の関係においてのみで、〔並列化〕は剣と魔導書の関係においてのみです。これは、保有者に負荷をかけずにかつ最大限に〔魔導剣〕の力を発揮するための設計です。したがって、貴方には...』

『いやいや待て待て!いきなりそんなん言われてもよくわからんぞ!?』

『そこまで難しくもないでしょう?わかりました。では一言で簡単に言いましょう。心配するな!です』

『おまえメンドクサくなってるだろ』

『でもまあ、いかに優れた力を持ち合わせて行使できても、それを使いこなせるかどうかは、結局その者次第ですからね。そういう意味では、心配するのも仕方がないかもしれません。
 しかし、それでも言いましょう。今の貴方ならできます。自分を信じて行動してください』

『結局は精神論かよ』

『すでに制限は解除されています。制限とは、不具合を生じさせないためのセーフティ。つまり、もう準備は整っています。あとは貴方自身および貴方の中に同期されたそれらを信じて、判断し、決断し、実行すれば良いのです』
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