しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣士誕生編

ep30 魔法

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 ほどなくして......。

「全員、やったか......」

 屋敷に十数人ほどいた仮面のヤツらは皆、俺の手により沈んだ。
 ひとり残らず、全員。
 俺の全身は、ヤツらの返り血に染まっていた。

 その時......。

 戦いが終わったのを見計らったかのように、
「クロー様!」
 どこからかメイドのロバータが飛び出してきて、俺のもとへ駆け寄ってきた。

「ロバータ!?お前、無事だったのか?」

「は、はい!それが突然、どこかに転移?しまして......今しがた戻ったら敵が全員やられていて......まさか、クロー様が??」

「そうか、あの謎の声。ちゃんとロバータのことを助けてくれたのか......」

「クロー様が、敵を倒したのですか??」

「ロバータ」

「クロー様?」

「パトリスが、死んだよ」

「えっ?」

 それからすぐに、俺はロバータをパトリスのもとへ連れていった。

「そ、そんな......ああ!パトリス! 

 ロバータはパトリスに覆い被さってむせび泣いた。 
 俺は黙ったまま目を伏せた。
 魔導剣の切っ先から、赤い液体がしたたり落ちている。
 部屋内には、悲嘆にくれるロバータの声だけがむなしく響く。

 とその時。

「......パトリス?」

「?」

「パトリス......パトリス!」

「ロバータ?どうしたんだ?」

「クロー様!パトリスの息が、まだあります!」

「!」

「生きてます!まだ生きています!」

「本当か!でも助け...」

「私がやります!」

「え??」

 俺がロバータの言葉に一驚する間もなく、彼女は横たわる瀕死のパトリスに向かい両手をかざした。

「......深淵なる万物万象の源泉よ。我がちからり、の者を癒したまへ。
〔アルカーナ・サナーレ〕」 

 ロバータの詠唱とともに、彼女の両手とパトリスの全身が白い光に覆われる。
 白光は優しい輝きを放ちながら、パトリスの傷を徐々にふさいでゆく。

「こ、これは......」

 俺は思わず息を飲んでその光景に魅入った。
 やがて光がおさまると、ロバータは手を引っ込めて、ガクンと肩を落とし呼吸を荒くする。

「ハァ、ハァ、ハァ......!」

 間もなくだった。
 ついさっきまで死んだと思っていたパトリスが、むくりと上半身を起こしたじゃないか!

「パ、パトリス!」

「ぼっちゃま......」

「助かった、のか??」

「はい。どうやら......」

 俺とパトリスとロバータは、ひとまず安堵して微笑みあった。
 それから俺は聞かずにはいられないことを尋ねる。

「ところで、今のロバータのそれって......」

「魔法です」
 
「まほう...」

「すみません。クロー様の前では初めてですよね。私はもともと、白魔導師でしたので」

「白魔導師?」

「ぼっちゃま。ロバータはなかなか優秀な魔導師だったのですよ」

「昔の話はやめてくださいよパトリス」

「それはさておき、ぼっちゃま」

「なんだ?」

「その剣と力...」

「ああ」

「ぼっちゃまがヤツらを全員倒したのですね」

「そうだよ」

「いったいどうやって...」

「どうやってもなにも...」

 ここではじめて、俺はパトリスとロバータに〔謎の声〕の存在について告白した。
〔謎の声〕に導かれ、秘密の地下室に空間転移し、魔導書を手にし、魔導剣を持って敵と戦ったことを。

「いきなりこんなこと言われてもわけがわからないよな。そもそも俺がそうだし......」

 俺は困惑顔でふたりを見るが、パトリスとロバータは意外な反応を見せる。

「ぼっちゃま。実は、半年より少し前に、我々にも〔声〕が届いてきていたのですよ。といっても、この屋敷でその〔声〕を聞いたのは、私とロバータだけです」

「なぜ、私とパトリスにだけ語りかけてきたのかはわかりませんが」

「ぼっちゃのおっしゃる〔謎の声〕と同一なのかはわかりません。
 ただ、〔声〕はこう言いました。
 近い将来に、この屋敷に必ず危機が訪れる。
 その時、若き魔導剣士があらわれ貴方方を救うと。
 そしてその魔導剣士とは、貴方のよく知る人物だと。
 この言葉の意味はよくわかりませんでしたが、今日、このような危機が起こり、今ぼっちゃまからそのような説明を受け、すべてが繋がったような気がします。
 にわかに信じ難いことですが、その魔導剣士とは、ぼっちゃまのことだったのですね」
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