上 下
16 / 167
魔剣士誕生編

ep16 パーティー①

しおりを挟む
 そしてパーティー当日......。


 ラキアード家の屋敷一階の広間で、パーティーが開かれた。
 人数は......ざっと百人ぐらいは集まっているだろうか。
 男女比は、女性の方が多い。

 点在する料理の置かれたテーブルのまわりを、酒のグラスを持ちながら談笑する人々。
 椅子はあるが、ほとんどの人間が立っているように見える。

「こんなの、はじめてだな......」

 今までの自分では想像もできなかったようなリア充空間。
 その主催者のひとりが俺。
 否が応でも次々と声をかけられる。

「クローさん!はじめまして!お会いできて光栄です」
「あ、うん!こちらこそ」

「お若いのに、こんな立派な屋敷の主なんですね!」
「は、はい!」

「クローさん。ミックに聞いていたより、実物はもっとステキですね!」
「そ、そうですか?」

 悪くない気分だ。
 見た目と金と家柄が変わればこうも変わるものなのか?
 なんて思うと一瞬フテくされた気持ちにもなったが、すぐに心地よくなった。
 まあ、人間なんてそんなものなんだろう。

「そんなことよりも......」

 今の俺には他の何よりも重大なことがある。
「ナオミ......」
 会場のどこにも、彼女の姿はない。

 ミックの話では、

「クロー、良かったな。ナオミの参加も取りつけることができたぞ!おれとナオミには共通の知り合いがいたんだよ。そいつがナオミを連れてきてくれるってさ」

 とのことで、

「当日は遅れてくるんだと。そんで時間になったらおれがいったん出てって、そいつとナオミを迎えに行くことになっている。まっ、クローは安心して待っていてくれよ」

 ということになっていた。

 なんでミックが迎えに行くんだ?直接来ればいいんじゃね?と思ったが、そんなことはどうでもいい。
 ナオミさえ来てくれればそれでいいんだから。

「はやく、会いたいなぁ......」

 ミックがナオミを迎えに出ていったのはつい先ほどのこと。
 わかってはいても、はやる気持ちは抑えられない。
 俺は俺のナオミ姫が現れるのをまだかまだかと待ちきれないでいる。

「ナオミ......」

 まわりには今、可愛い女の子がたくさんいる。
 でも、目に入らない。
 ナオミのことで頭がいっぱいだから。
 俺はそわそわしながらミックが戻ってくるのを待った。

「まだかな......」

 しかし......来ない。
 もう二十分ぐらい経ったか?
 そろそろ来てもいい頃だろう。

「おそい......」

 俺はイラ立ちはじめている。
 話半分でまわりと会話をしながら気分を紛らわせていたが、もう限界だ。

「ちょっと、席外すね...」

 テーブルにグラスを置くと、なにか用事でも思い出したように俺はそそくさと退室した。

 玄関に向かう途中、廊下ですれ違った使用人に、
「クローさま?どちらに?」
 と声をかけられたが、顔も向けずに、
「ちょっと」
 とだけ言って、さっさと表に出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。

白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?  *6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」 *外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...