14 / 167
魔剣士誕生編
ep14 恋
しおりを挟む
【登場人物】
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の執事。
ミック・・・エールハウスで知り合ったチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会い一晩を過ごした美女。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午後。
遅めの昼食をすませ、少し休んでから俺は出かけた。
どうも家にいるのが嫌だったから。
執事のパトリスやメイド達が、なにか言いたげな顔で俺を見てきたことが原因じゃない。
ただ、室内で悶々とするのが嫌だったから。
「なんで、告白したりしたんだろう......」
街に向かってトボトボと歩きながら早くも後悔している。
まだ転生二日目なのに。
あらためて自分で自分がイヤになる。
「言わなきゃよかった......」
しかし、
「でも、ナオミが、しぬほどカワイイから......」
俺はすっかりナオミに心を奪われてしまっている自分に気づいた。
あんな可愛い女の子、元の世界でも見たことがない。
「そんなコと、俺は......」
街外れの屋敷から街の中へと向かっていく道すがら、ナオミのことを考えて俺の胸はきゅっと締めつけられる。
「また、会いたいなぁ......」
どうやら俺のハートは、完全にナオミにわし摑まれてしまったようだ。
昨日まで「豪遊する!」なんて息巻いていた自分がウソみたいに。
「人生の最後で、ナオミみたいな女の子と付き合えたらもうそれだけでも充分なのに......」
しまいにはそんなことまで思ってしまう始末。
そんなこと、ナオミにとってはいい迷惑でしかないだろう。
俺みたいな死にかけのヤローと付き合って幸せになれるわけがない。
でも、それでも、
「せめてもう一回だけでも、会いたい」
という気持ちは変えがたいものだった。
空は晴れ渡っている。
昨日出かけた時はすでに夜だったので、こちらの世界に来てからはじめて、マトモに太陽の光を浴びたかもしれない。
「街に行けば、またナオミに会えるかも......!」
午後の陽射しを体いっぱいに受けながら、俺は根拠のない期待に胸を膨らませて小走りになる。
「はっ、はっ、はっ」
自分で自分が滑稽だ。
わかっている。
でも、いいんだ。
どうせ残り少ない人生。
恋するままに生きてみるっていうのも、悪くないんじゃないかって。
「ハッ、ハッ、ハッ」
でも、これって恋なのか?
経験のとぼしい俺には今ひとつよくわからない。
そもそも、一晩を共にしただけだぞ?
いや、違う。
一晩を共にしてしまったんだ!
俺には大事件なんだ!
「ハッ!ハッ!ハッ!」
彼女のぬくもりが忘れられない。
声も、息づかいも、潤んだ瞳も、濡れた唇も、肌と肌の感触も。
腕も、脚も、指も、首すじも、髪の毛も、なやましい肢体、そのすべてが......!
「ハァ、ハァ、ハァ......」
けっこう走ってしまった。
もうだいぶ街の中心部近くまで来たと思う。
まわりの風景も、すっかり店やら馬車やら人やらで賑わってきている。
「ハァ、ハァ、ハァ......とりあえず、どこかに入って少し休もうかな...」
額の汗をぬぐいながら辺りを見まわし、適当なカフェをみつけて入店した。
席につき、注文した飲み物が運ばれてくる。
グラスに口をつけ、昨夜ナオミと一緒にカンパイしたときのことを思い浮かべた。
「やっぱり......行くか」
俺はグラスをコトっと置くと、決心した。
今夜もまたあのエールハウスに行くことを。
......もはや俺の想いは、だれにも止められない。
俺の恋の列車は、各駅でも急行でも特急でもない。
終着駅まで止まらない...恋のリニアモーターカーだ!
......リニアモーターカーって、途中停車しないものなのか!?
クロー・ラキアード・・・主人公の青年。転生前は中年のおっさん。
パトリス・・・ラキアード家の執事。
ミック・・・エールハウスで知り合ったチャラ男。
ナオミ・・・エールハウスで出会い一晩を過ごした美女。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午後。
遅めの昼食をすませ、少し休んでから俺は出かけた。
どうも家にいるのが嫌だったから。
執事のパトリスやメイド達が、なにか言いたげな顔で俺を見てきたことが原因じゃない。
ただ、室内で悶々とするのが嫌だったから。
「なんで、告白したりしたんだろう......」
街に向かってトボトボと歩きながら早くも後悔している。
まだ転生二日目なのに。
あらためて自分で自分がイヤになる。
「言わなきゃよかった......」
しかし、
「でも、ナオミが、しぬほどカワイイから......」
俺はすっかりナオミに心を奪われてしまっている自分に気づいた。
あんな可愛い女の子、元の世界でも見たことがない。
「そんなコと、俺は......」
街外れの屋敷から街の中へと向かっていく道すがら、ナオミのことを考えて俺の胸はきゅっと締めつけられる。
「また、会いたいなぁ......」
どうやら俺のハートは、完全にナオミにわし摑まれてしまったようだ。
昨日まで「豪遊する!」なんて息巻いていた自分がウソみたいに。
「人生の最後で、ナオミみたいな女の子と付き合えたらもうそれだけでも充分なのに......」
しまいにはそんなことまで思ってしまう始末。
そんなこと、ナオミにとってはいい迷惑でしかないだろう。
俺みたいな死にかけのヤローと付き合って幸せになれるわけがない。
でも、それでも、
「せめてもう一回だけでも、会いたい」
という気持ちは変えがたいものだった。
空は晴れ渡っている。
昨日出かけた時はすでに夜だったので、こちらの世界に来てからはじめて、マトモに太陽の光を浴びたかもしれない。
「街に行けば、またナオミに会えるかも......!」
午後の陽射しを体いっぱいに受けながら、俺は根拠のない期待に胸を膨らませて小走りになる。
「はっ、はっ、はっ」
自分で自分が滑稽だ。
わかっている。
でも、いいんだ。
どうせ残り少ない人生。
恋するままに生きてみるっていうのも、悪くないんじゃないかって。
「ハッ、ハッ、ハッ」
でも、これって恋なのか?
経験のとぼしい俺には今ひとつよくわからない。
そもそも、一晩を共にしただけだぞ?
いや、違う。
一晩を共にしてしまったんだ!
俺には大事件なんだ!
「ハッ!ハッ!ハッ!」
彼女のぬくもりが忘れられない。
声も、息づかいも、潤んだ瞳も、濡れた唇も、肌と肌の感触も。
腕も、脚も、指も、首すじも、髪の毛も、なやましい肢体、そのすべてが......!
「ハァ、ハァ、ハァ......」
けっこう走ってしまった。
もうだいぶ街の中心部近くまで来たと思う。
まわりの風景も、すっかり店やら馬車やら人やらで賑わってきている。
「ハァ、ハァ、ハァ......とりあえず、どこかに入って少し休もうかな...」
額の汗をぬぐいながら辺りを見まわし、適当なカフェをみつけて入店した。
席につき、注文した飲み物が運ばれてくる。
グラスに口をつけ、昨夜ナオミと一緒にカンパイしたときのことを思い浮かべた。
「やっぱり......行くか」
俺はグラスをコトっと置くと、決心した。
今夜もまたあのエールハウスに行くことを。
......もはや俺の想いは、だれにも止められない。
俺の恋の列車は、各駅でも急行でも特急でもない。
終着駅まで止まらない...恋のリニアモーターカーだ!
......リニアモーターカーって、途中停車しないものなのか!?
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる