しにかけの転生者~しにかけた中年はしにかけた青年に転生し異世界で魔剣使いになる~

根上真気

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魔剣士誕生編

ep12 ナオミ③

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「......」

 しばらくすると、なぜかナオミは眉をひそめ、困ったような表情で俺に上目を向けてきた。
 彼女自身はそんなに酔っていないと言ったが、トロンとした瞳は酔いのせいではないのか?

「......」

 何秒、いや、何分経ったかわからない。

 抱き合いながら座るふたり。
 今ではナオミの顔は俺の胸にうずまっていた。
 俺は彼女の髪をゆったりと撫でている。

「......」

 はたから見たらどんな体勢なんだろうか?
 決してラクな体勢ではないはず。
 でも、ずうっとこうしていられる気がした。

「......」

 俺の胸にうずまりながら、ナオミがチラッと、長いまつ毛越しに視線を投げてきた。
 魔女のような蠱惑的なまなざし...。

 なぜだろうか。
〔許可〕を得たような気がした俺は、ナオミの頬にそっと手を当てる。
 するとナオミの顔が少しだけ離れ、なにかを求めるように顎がわずかに上向いた。
 俺はゆっくりと顔を近づけていく。
 ナオミのまぶたは夕陽が沈むように美しく閉じていく。

「ん......」
 
 上手にできたのだろうか?
 経験の浅い俺にはわからない。

 こんな美女と、こんなことをするなんて。
 元の世界での俺にはまったく考えられなかったから。
 
「んん......」

 いったん顔を離したナオミは、トロけるようなアマい顔で俺を見ると、今度は自分から唇を重ねてきた。

「ん......んん......」

 さっきよりもずっと激しい。
 粘膜に刺激がほとばしる。

 もはや俺の頭と心には、目の前のナオミのことしかない。
 ナオミが俺の全世界であり、俺の全宇宙がナオミ。
 俺は人目もはばからず彼女の豊かで柔らかな胸に手をしのばせた。

「あっ......」

 つづいてもう一方の手が、むっちりと広がる太ももの大地を這いずるように前後左右する。

「あぁ...あん...ダメ......」

 俺の両手はナオミ王国の領土を我が物顔で蹂躙する。
 両の手から伝わる七色の感触は、俺の理性のダムを次々に決壊させ、欲望の水をとめどなく溢れさせる。
 しかし......

「ダメ!ここじゃイヤ!」

 ナオミは鋭い声を上げて俺の手を引きはがすと、のをピシャリと制止した。

「もうっ!バカ!」

 ナオミは本気で怒っているようだ。
 
「ご、ゴメン!」

 謝りながらも、俺はまったく腑に落ちていない。
 ......え??
 どこまでオッケーでどこからダメなの!?
 非モテ街道をひたすらつっ走ってきた俺には、そのへんのさじ加減がさっぱりわからない。

「クローって、カワイイ顔して、すっごいえっち」
「ご、ごめん、ナオミ」

 そりゃそうだ。
 見た目はイケメンおぼっちゃんかもしれないが、中身は冴えないおっさんなんだから。
 
「ね、いどうしよ?」
「えっ」 
「さっ、いこ」

 ナオミは俺の手をひいて立ち上がる。 
 俺はナオミに促されるまま、出口に向かって進んでいく。

「あたし、クローのおうち、いきたいな」
「...!じゃあ行こうか!」

 ここ何十年かで俺は一番テンションが上がったかもしれない。
 胸ってこんなにドキドキするのか?というぐらい、ドクンドクンと胸が高鳴ってしょうがない。

「クローのおうち、たのしみ」
「ああ」

「フフフ」
「......あっ」

「どうしたの?」
「そういえば......」

 ここに来たとき、店の前でラキアード家の馬車を待たせていたことを思い出した。
 こうなってみると、まるで自分専用のラブホ直行タクシーを待たせていたみたいだ。

 俺がナオミを連れ立って店を出ると、ちょうど使用人が心配顔で馬車から出てこっちを見ていた。

「クローさま!」

 俺のナオミがこっちを見る。
「しりあい?」

「ああ、うちの使用人だよ。あの馬車で家までいこう」
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