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魔剣士誕生編

ep10 ナオミ①

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※設定イメージ(画像のみAI)


「あのコ......すごいカワイイ......」

 思わず心の声がこぼれてしまった。

「あれか?胸元開いて肩出した、白いキャミソールドレス?を着た、黒髪のオッパイでかいコ?」
「あ、ああ......あのコ、イイなぁ」

「そうか、アレね......よし」
「?」

「なあクロー」
「な、なに?」

「おまえって、どのへんに住んでんの?」
「え?なんで急に」
「いーからいーから!」

「ま、まあ、別に隠すことでもないからいいけど......この街のはずれにある屋敷に住んでる」

「その屋敷って、やっぱデカイのか?あの子のオッパイぐらい」
「デカイと思う。ってオッパイは関係ないじゃん!」

「ハハハ!そっかわかった!」
「?」

「じゃあ、おれが今からあのコをここに連れてきてやる」
「は?」

「まあ待ってな!」
「お、おい」

 ミックは自信満々でそのコに向かってツカツカ進んでいくと、ごく自然に話しかけた。
 俺はまるで教養番組でも観るような心持ちでその光景を眺める。

「アイツ、いわゆるナンパ師ってやつなのか?たいしたコミュ力だなぁ...」

 俺にとってはまったく通ってきていないアゲアゲな世界。

 あういうことが平気でできるヤツのメンタルって、一体どうなっているんだ?
 イヤな顔されて断られたら...とか考えないのか?
 ウザイと思われたら...キモがられたら...嫌われたら......とか考えないのか?

「あういうイケイケの陽キャってハッキリ言って嫌いだったけど、正直、今は頼りになるな......」

 ......ほどなくして。
 ミックは俺に向かってニヤリとした笑みを見せつけながら、女の子を連れて戻ってきた。
 
「よおクロー!このコ、おまえのことイイなぁ~と思って見てたらしいぜ?」
「ちょっと~言わないでよぉ」

「別にイイじゃんか!」
「だってハズカシイもん」

「そんなセクシーな服着てんのに?」
「それとこれとはべつ!」

「ハハハ!つーわけで、コイツはクロー。おれのツレだ」
 ミックは女の子に俺を紹介した。

 ツレ?ほぼ他人だぞ?
 とは思ったが、実に見事な流れだ。
 俺はこの軽薄そうなチャラ男に、感心どころかリスペクトの念さえ抱きかけている。

「あっ、ど、どうも!クローです!」
「あたしはナオミ。よろしくね、クロー」

 遠目に見て(カワイイな~)とは思っていたが、挨拶を交わしながら改めて近くで見てみると...なお彼女は可愛い。

 憂いのある表情と、濡れたように潤った瞳と唇。
 ほろ酔いのせいなのかメイクなのか、ライトに照らされてほの紅く染まる頬。
 キメの細かい黒い髪を首のうしろでまとめ上げ、無防備なうなじがあらわになっている。

『や、ヤバい。これはマジで、ヤバい......』

 息を飲んで魅入る。
 そして視線は、否が応でも下降してゆく。

 こ、これこそ、永遠にオトコどもを悩ませ、惑わせ、どこまでもくいついて離さない、魔性の谷間...!

 ナオミはいぶかしそうに俺の目を見ると、
「...!」
 すぐにハッと気づき、サッと胸元に手をあて谷間を隠す。

「あっ、その、ご、ゴメン!」
 俺はあわてふためいて素直にあやまった。

「えっち」
「ハッハッハ!そりゃーそんな服なら見ないほうが逆に失礼だろ?」

「ミック。それはオトコのりくつ」
「だってマジで見られたくねーんならナオミも着ないだろ?そんなステキな服さぁ」

「あれ?褒めてくれてる?」
「もちろんだろ?その服を着てるお姫様はもっとステキだけどな」

「えー、嬉しいけどチャラい」
「なんだそれ」

「ぷっ...!」
「ハッハッハ!」

 ナオミとミックは吹き出してゲラゲラ笑いあった。

 陽気に笑うふたりを前に、俺はなんとなく疎外感を覚える。
 が、
「...でもなんか、クローってカワイイね」
 ナオミがまだクスクス笑いながら、俺にやさしく視線を向けてきた。

「だろ?キレーな顔してんだろ?なんせイイとこのぼっちゃんだからな」
 ミックがすかさず言った。
 フォローしてくれているのかテキトーに言っているだけなのか、よくわからない。

「クロー、それって本当なの?」
「い、いや、まあ、そう...かな」

「じゃあカノジョとか、いっぱいいるんじゃない?」

「そ、そんなことないよ!そんな人いないよ!(あれ?クローに彼女っていないよな?いたらさすがに執事のパトリスが教えてくれてたハズだよな。うん、大丈夫だ!)」

「あーやーしーい」
「ほ、ホントだって!」
「ウフフ。クローって、ホントにカワイイ」

「どうだナオミ?なかなかイイ感じだろ?」
「そうだね、ミック」

「じゃ、あとはうまくやれよ?クロー」
 出し抜けにミックが俺と肩を組んできた。

「えっ?ミック?」
「オレは他のコのところへ行ってくる」

「そ、そう。でも、いいの?」
「まーまー気にすんなよ。だってオレたちはもうダチだろ?」

「そ、そうか。なんか、ありがとう」
「じゃ、またな!」
「う、うん!」

 ミックは陽キャらしくニカッと笑うと、クルッときびすを返して俺たちから離れていった。
 俺は去っていくミックを眺めながら、
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 わけのわからないことを考えた。
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