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魔剣士誕生編
ep5 神の呪い
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ほどなくして......。
執事のパトリスが医者をともなって戻ってきた。
俺はおとなしく診断を受けた。
「しかし......まさか記憶喪失とは、私もおどろきですよ。
とはいえ、今はこうやって再びクロー様が目を覚まされたことを何より喜ぶべきでしょう」
医者はそう言って、驚きとも哀しみともとれない、なんとも言いがたい表情を浮かべた。
俺は医者の言葉を聞き、ふと気になって尋ねる。
「あの、俺は、なんでここで寝てたんですか?日常の睡眠ではないですよね?」
医者とパトリスは途端にハッとして、顔を見合わす。
それからパトリスがうつむくと、医者が複雑な表情を浮かべ、俺をじっと見つめて重々しく口をひらいた。
「......クローさま。やはりこれはお伝えしておかなければなりません」
「?」
「あなたがここに寝ていた理由。
それは......
〔神の呪い〕のためです」
「かみののろい?」
「〔神の呪い〕とは、きわめて稀に発症する死の病です。
原因は不明。
背中にアザができる以外これといった症状もないが、治療法もまったくなく手のほどこしようがない。
ハッキリ申し上げます。
これは正真正銘の不治の病です」
俺は憮然とする。
死の病?
不治の病?
えっ、じゃあなに?
俺はもうすぐ死ぬってことなの?
死にかけて転生して、またすぐ死ぬわけ?
俺は気がふれでもしたように、よくわからない奇妙なうすら笑いを浮かべて質問する。
「......死の病で不治の病ってことは、近い将来、死ぬってこと?」
「はい......」
「近い将来って......あとどれくらいなんすか?」
「〔神の呪い〕は、発症してから一年以内に必ず死ぬとされています」
「発症したのは?」
「三か月前です」
「......てことは、長くてあと九か月ってことか......」
「はい......」
「......」
「クローさま」
「ぼっちゃま......」
「......はは、ははは。ハハハハ!ハァッハァッハァ!!」
「クローさま!?」
「ぼっちゃま!?」
俺はトチ狂ったように笑い声を張り上げた。
ウケる!
マジでウケるぞ!
おぼれて死にかけて転生して、転生したら今度は病気で死にかけだって!?
バカだ!
マジでクソでバカだ!
なんだあの謎の声は?
そうか、俺をもてあそんでやがったんだな!
さぞ俺はブザマでイイ気味だろーなぁ!
......フザケやがって。
だったらあのまま死なせてくれよ!!
なんで今さら知らない世界に来て知らない人間になってすぐに死ななきゃなんねーんだよ!
......もういい。
ああわかったよ。
あと九か月か。
いや、長くてそれだから、たぶん実際はもっと早いよな。
こうなったら......
残りの人生、ムチャクチャに過ごしてやる!
これといって症状はないっつってたよな?
ということは、とりあえず生きている間はフツーに暮らせるんだよな?
そんでこのクローとかいうヤツは、おそらく金持ちのおぼっちゃんなんだろ?
......いーじゃねーか。
その金、使いまくって、死ぬまで遊びまくってやる!
元の世界で俺は、そんなこともまったくできないまま終わっちまったんだ。
それこそ彼女すら一度もできずに中年になっちまった。
そもそもマトモな友達すらいなかった。
よし......。
こうなりゃヤケだ。
やってやるぞ!
「......」
やがて半狂乱の笑いがおさまった俺は、むっつりと黙った。
「あの、クローさま?」
「ぼっちゃま?大丈夫ですか?」
しばらくじっとうつむいてから、俺はムクっと顔を起こして執事に目をむけた。
「......パトリス。記憶喪失の俺に、家のこととか社会のこととか、色々と教えてくれないか?」
執事のパトリスが医者をともなって戻ってきた。
俺はおとなしく診断を受けた。
「しかし......まさか記憶喪失とは、私もおどろきですよ。
とはいえ、今はこうやって再びクロー様が目を覚まされたことを何より喜ぶべきでしょう」
医者はそう言って、驚きとも哀しみともとれない、なんとも言いがたい表情を浮かべた。
俺は医者の言葉を聞き、ふと気になって尋ねる。
「あの、俺は、なんでここで寝てたんですか?日常の睡眠ではないですよね?」
医者とパトリスは途端にハッとして、顔を見合わす。
それからパトリスがうつむくと、医者が複雑な表情を浮かべ、俺をじっと見つめて重々しく口をひらいた。
「......クローさま。やはりこれはお伝えしておかなければなりません」
「?」
「あなたがここに寝ていた理由。
それは......
〔神の呪い〕のためです」
「かみののろい?」
「〔神の呪い〕とは、きわめて稀に発症する死の病です。
原因は不明。
背中にアザができる以外これといった症状もないが、治療法もまったくなく手のほどこしようがない。
ハッキリ申し上げます。
これは正真正銘の不治の病です」
俺は憮然とする。
死の病?
不治の病?
えっ、じゃあなに?
俺はもうすぐ死ぬってことなの?
死にかけて転生して、またすぐ死ぬわけ?
俺は気がふれでもしたように、よくわからない奇妙なうすら笑いを浮かべて質問する。
「......死の病で不治の病ってことは、近い将来、死ぬってこと?」
「はい......」
「近い将来って......あとどれくらいなんすか?」
「〔神の呪い〕は、発症してから一年以内に必ず死ぬとされています」
「発症したのは?」
「三か月前です」
「......てことは、長くてあと九か月ってことか......」
「はい......」
「......」
「クローさま」
「ぼっちゃま......」
「......はは、ははは。ハハハハ!ハァッハァッハァ!!」
「クローさま!?」
「ぼっちゃま!?」
俺はトチ狂ったように笑い声を張り上げた。
ウケる!
マジでウケるぞ!
おぼれて死にかけて転生して、転生したら今度は病気で死にかけだって!?
バカだ!
マジでクソでバカだ!
なんだあの謎の声は?
そうか、俺をもてあそんでやがったんだな!
さぞ俺はブザマでイイ気味だろーなぁ!
......フザケやがって。
だったらあのまま死なせてくれよ!!
なんで今さら知らない世界に来て知らない人間になってすぐに死ななきゃなんねーんだよ!
......もういい。
ああわかったよ。
あと九か月か。
いや、長くてそれだから、たぶん実際はもっと早いよな。
こうなったら......
残りの人生、ムチャクチャに過ごしてやる!
これといって症状はないっつってたよな?
ということは、とりあえず生きている間はフツーに暮らせるんだよな?
そんでこのクローとかいうヤツは、おそらく金持ちのおぼっちゃんなんだろ?
......いーじゃねーか。
その金、使いまくって、死ぬまで遊びまくってやる!
元の世界で俺は、そんなこともまったくできないまま終わっちまったんだ。
それこそ彼女すら一度もできずに中年になっちまった。
そもそもマトモな友達すらいなかった。
よし......。
こうなりゃヤケだ。
やってやるぞ!
「......」
やがて半狂乱の笑いがおさまった俺は、むっつりと黙った。
「あの、クローさま?」
「ぼっちゃま?大丈夫ですか?」
しばらくじっとうつむいてから、俺はムクっと顔を起こして執事に目をむけた。
「......パトリス。記憶喪失の俺に、家のこととか社会のこととか、色々と教えてくれないか?」
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