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ep83 ドッキドキ♡初デート③

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 *

「イヌヨ!貴女はいい加減にしなさい!」

「ご、ごめんなさい」

 映画館近くのカフェでネーコがイヌヨを叱っている。
 向かいに座るイヌヨは肩をすぼめて縮こまっていた。

「ま、まあ、もういいんじゃないか?イヌヨも反省しているんだし」

 俺は隣でプンプンするネーコをなだめようとした。

「フミヒロ様はやさしすぎます!公衆の面前であのようなことをしでかしたのですよ!?ここはキツい叱責しっせきが必要です!」

「ま、まあ、そうだな」

「私だって公衆の面前では〔セクシープログラム〕を控えているというのに!本当はネーコだってフミヒロ様とアオカンでも何でもしたいのにぃぃ!」

「なに言ってんだお前は!!」

 ダメだ。
 やはりこの美少女アンドロイドたちにはついていけない。

「しかしイヌヨ。貴女の性格はよくわかっていますが、なぜあんなことをしたのです?」

 ネーコがあらためて問いただした。
 イヌヨはううむきながらボソボソと答える。

「だって......さびしたかったから......」

「夜になればまた家で一緒になるでしょう?」

「だって......イヌヨもフミヒロさんとデートしたかったから......」

 イヌヨは恥ずかしそうに小声で言った。
 ネーコはうんうんとうなずいてから立ち上がるとイヌヨに接近する。

「ネーコお姉さん?」

 イヌヨが疑問の顔を向けると、ネーコは彼女の首根っこをひょいと引っつかんで店外へおっぽり出した。

「いやぁぁぁぁ~!」

「貴女は家に帰ってなさいっ!」


 *


「風が気持ちいいですね!フミヒロ様!」

「そうだな」

 つづいて俺たちは海岸沿いに来ていた。
 映画館からしばらく歩いたところにあるスポットで、カップルたちにとっては定番のデートコースらしい。(ネーコAI調べ)

「きゃっ」

「!」

 潮風がネーコのスカートを悪戯いたずらにあおいだ。
 しかし、ぎりぎりのラインで聖なる衣は身を隠した。

「危なかったです」

「う、うん」

「残念でしたか?」

「違う!」

「でも本当に危なかったです」

「?」

「穿いてませんでしたので」

「ちょっ!!」

「急な階段...上がります?」

「はぁ!?」

「逆上がり...します?」

「いやいや!」

「それともネーコを...肩車します?」

「いやいやしないから!!」

「フフフ。ジョーダンですよジョーダン。ちゃんと穿いていますよ」

「本当だよな!?」

「確かめますか?」

「そうじゃなくて!」

「安心してください。本当に穿いてますから」

「な、ならいいけど」

「当たり前じゃないですか。フミヒロ様以外には見られたくありませんから」

「!」

 ドキッとした。
 そんな俺に向かいネーコは微笑みながら、風にそよいだ美しい髪を手でさらりととかした。
 俺は吸い込まれるようにネーコを見つめた。

(か、かわいい......)

 そんな矢先。

 付近がにわかに騒ぎはじめた。
 誰かが叫んでいるのが聞こえる。

「おい!誰かが海に身投げしたぞ!」
「救助を呼べ!」
「どんな人だった!?」
「着物を来た女性だった!」

 俺とネーコはハッとした。
 次の瞬間、ネーコは海に向かってザパーンと跳びこんでいった。

「あっ...」

 海岸にひとりポツンと取り残される。
 俺は海を眺めながら次第にワナワナとした。

「......なんなんだこのデートはぁぁぁ!?」
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