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ep71 まっさーじ

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「トラエ?」
「あっ、トラエさん」

 トラエがウサを押しのけて入ってきた。

「ちょっとトラエおねーちゃん!ウサのじゃましないで!」

 ウサも負けじと部屋に入ってきた。
 トラエは伊野上さんをキッと見る。

「伊野上女史じょし。このウサという少女はワタシの妹だ」

「トラエさんの妹??で、でも井藤くんのこともおにーちゃんて...」

「ウサはフミヒロのことを本当の兄のように慕っているんだ」

「そ、そういうことなんですね!」

 伊野上さんは納得したようだ。
 トラエは俺に微笑して見せた。
 またトラエに助けられてしまった。

田網羽沙穂たあみうさほです。ウサってよんでください」

 意外にもウサはきちんと自己紹介をしてペコリとした。
 それを受けてマジメな伊野上さんもしっかりと返す。

「わたしは井藤くんのクラスメイトの伊野上小茉です。よろしくね、ウサちゃん」

「こまちちゃんよろしく~、えへへ」

 ウサは少女らしい可愛らしい笑顔をこぼした。

「か、カワイイ!」

 目がハートマークになる伊野上さん。

「こまちゃんもかわいいよぉ」

「ねえ井藤くん!なんなのこの天使は!?」

 急にひゃーっと伊野上さんが興奮状態となって俺の腕をガシッとつかんできた。

「まあ、大人しくしてれば可愛いんだけどね......」

「いやいやもう激カワだよこれ!......あっ!トラエさんの妹ということは、ネーコさんの妹ということでもあるんだね!?」

「うん、そうだね」

「むむぅ~、田網姉妹......恐るべし!」

 なぜか顎に手を当て鋭い顔つきになる伊野上さん。
 そんな彼女の胸へ、
「こまちちゃ~ん!」
 ウサはすかさず愛犬のように飛び込んでいった。

「きゃっ!ちょっとウサちゃんそんないきなり」

「えへへ」

「あ~も~カワイイ~」

 伊野上さんは甘えてくるウサの頭をナデナデして可愛がった。
 どうやら彼女はウサのことを気に入ったようだ。

「おいウサ。そろそろ行くぞ。フミヒロたちの勉強の邪魔だ」

 トラエが水を差すようにピシャリと言った。

「ええ~?やだぁ。もうちょっと甘えるぅ」

 ウサはそれを拒否した。
 それからおもむろに小さい手を伊野上さんの胸にえろっと忍ばせる。

「ひゃっ!う、ウサちゃん!?」

 びくんとして一驚いっきょうする伊野上さん。

「こまちちゃんのおっぱいマッサージする~」

 なんとウサはそのまま伊野上さんの胸をモミモミとまさぐった。

「ちょっ!う、ウサちゃん!や、やめて...」

「もみもみもみもみ」

「ちょ、ちょっと、や、やめて...」

「こーするとおーきくなるんだよぉ」

「やっ、ちょっと、ダメぇ......」

「ねえこまちおねーちゃん。こんどはくりくりしていい?」

「く、くりくり??くりくりってなに??」

「わかんないの?うーん、ならすっていい?」

「へっ??す、すうって??」

「すうの。ウサがこまちちゃんのを。ちゅ~って」

「えええ??」

 俺は思わずツバを呑み込んでその光景をじっと見守ってしまっていた。
 本当はウサの暴走を止めなければならないのに。
 伊野上さんの貞操を守らなければならないのに。
 しかし......中学二年生男子の荒ぶる本能がそれを許さなかった!
 マズイ。このままでは......!

「おいウサ!そこまでだ!」

 何もできない中学二年生男子をありがたく差し置いて、トラエがウサの首根っこをガシッと掴んでその乱行を制止した。

「トラエおねーちゃん!はなして!」

 そのまま持ち上げられたウサは手足をジタバタと動かす。

「ダメだ、離さない。伊野上女史にまで迷惑をかけるな」

 トラエは微動だにせず厳しく注意した。

「なんでぇ?ウサはまちがったことしてないよぉ!」

「は??」

「だってラノベとかエロゲーとか二次創作とか...」

「だからそれ間違ってるから!!」

 さすがの俺もここではツッコんだ。

「ええ??ウサはまちがっているのぉ??」

「いーからもう行くぞ!」

 トラエはウサを抱えてさっさと部屋から出ていった。
 閉まったドアを呆然と眺める伊野上さん。

「い、今までもそうだけど...なんか、すごい姉妹だよね......」

「う、うん、なんかごめんね......」

 俺は途端に申し訳なくなって謝った。

「......えっ、い、いや、大丈夫だよ!びっくりしただけだから!」

 伊野上さんはすぐに我に返ってぶんぶんと否定のジェスチャーをした。

「そ、そう」

「そ、それに、今までもネーコさんに何度も驚かされているし」

「あっ、うん。それも含めて、スイマセン......」

「そ、そんな!大丈夫だよ!」

「う、うん。と、とりあえず勉強始めようか」

「そ、そうだね!始めよ!」

 まだ先ほどの余韻が残るふたりはぎこちなくあくせくと勉強を開始した。
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