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ep67 おふろ

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 午後十時過ぎ。
 自部屋に戻ってぐったりしながらやっとお腹が落ち着いてきた頃。

「コンコン。おにーちゃーん」

 ノックをしながらドアの外よりウサの声が届いた。

 俺は重い身体をのっそりと起こし入口まで歩いていってドアを開けた。

「どうしたの?ウサ」

 ウサは胸にタオルを抱いていてニコニコと口をひらく。

「いっしょにおふろはいろー」

「......えっ」

 俺はかたまった。
 出し抜けになにを言っているんだウサは。
 それはもはや完全に〔セクシープログラム〕の領域であって〔シスタープログラム〕を逸脱しているぞ。

「ん?おにーちゃん?どーしたの?」

 ウサはあどけない顔で首をかしげた。

「あの、一応確認だけど......それも〔シスタープログラム〕なの?」

 おそるおそる質問した。

「そーだよ?」

 そうなのかい。
 どういうことですかそれ。

「あの...ウサ。世の妹は、兄と一緒にお風呂は入らないと思うんだけどな......」

「でもウサの持ってるデータによるとジョーシキだよ?」

「一応聞くけど...それはなんのデータかな~?」

「ラノベとかエロゲとか二次創作とか?」

「だからそれ偏りすぎ!!」

「かたよってるの?」

「もはや偏ってるを超えて間違ってるから!!せめてエロゲーはギャルゲーにして二次創作は全年齢対象にして!てそういう問題か!?」

「おにーちゃん??言ってることがよくわかんないけど」

「と、とにかく!風呂はひとりで入るから!」

「ええ~」

「ええ~じゃありません!とにかくそういうこと!」

「はぁーい」

 ウサはしゅんとして引き返していった。
 それと入れ違うように今度はトラエがやってくる。

「フミヒロ。大丈夫だったか?」

「あ、うん。なんとか大丈夫だったよ」

「そうか。安心した」

 どうやら俺を心配して来てくれたみたいだ。

「ありがとう。トラエが残っていてくれなかったら正直ヤバかったかも」

 俺は素直に感謝した。

「なら良かった。本当はワタシもネーコと共に一度未来へ帰る予定だったからな」

「えっ??そうだったの?」

「ああ。しかしネーコの判断でこのようになった。ネーコはこの任務でかなりの権限を与えられているからな」

「なるほど」

「ウサが来ることはネーコもワタシも知らなかったが、ネーコはあらかじめ想定していたのだろうな。ワタシとの一件もあったし他の姉妹がトラブルを起こさないかどうかを懸念していたのだろう」

「ネーコのやつ......」

 いきなりいなくなったネーコに俺は腹が立っていた。
 だけど、認めたくないけど、にわかにネーコのことが恋しくなってもきていた。

(ああクソ!振り回されてたまるか!)

 そんな気持ちを振り払うように首をブンブンと横に振った。

「どうしたフミヒロ?大丈夫か?」

 すかさずトラエが声をかけてきた。
 
「あっ、いや、なんでもないよ!」

 俺はアハハハと誤魔化した。
 誤魔化しながら、トラエの凛々しくも美しい蒼い瞳を見て、あたたかい信頼感を覚えた。
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