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ep62 シスタープログラム②

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 *
 
 昼前。

 俺がお手洗いに一階へ降りると、なんだか台所のほうが騒がしかった。
 気になった俺はこっそりのぞいてみる。

「ウサ。お前は余計なことをしなくていいと言っただろう」
「ウサもおにーちゃんのご飯つくるんだもん!」
「これはワタシがネーコから正式に引き継いだ業務なんだ。ウサはウサで別の仕事があるだろう」
「やだ!ウサもおにーちゃんのご飯つくるの!」

 どうやらトラエとウサがめているようだ。
 このふたりはあまり馬が合わないのだろうか?
 とにかく、ここはやんわり仲裁に入っておくか。

「トラエ、ウサ。どうかしたの?」

「フミヒロ。別に何でもないぞ」
「なんでもなくないもん!おにーちゃんもトラエおねーちゃんに言ってやって!」

 ふたりはまったく異なったリアクションをした。
 それだけで何となくわかった気がする。
 おそらく、普通に作業をこなすトラエに対しウサがわがままをぶつけているんじゃないかと。

「おにーちゃん!きいて!ウサもおにーちゃんのお昼ごはんを作ってあげたいのにトラエおねーちゃんがジャマするの!」

 ウサは必死に訴えた。
 トラエはひとつため息をつき、これ以上取り合いたくないといった素振りを見せる。
 すでに状況を理解した俺はウサに語りかける。

「ご飯はトラエが作ってくれているからウサはゆっくりしていていいよ」

 自分なりに慎重に言葉を選んだつもりだった。
 
「おにーちゃんはトラエおねーちゃんの肩をもつの??」

 そういう話じゃない。

「そ、そうじゃなくてさ。トラエはトラエの仕事を責任を持ってやってくれているわけで。もちろん、ウサの気持ちをないがしろにするわけじゃなく、その気持ち自体おにーちゃんは嬉しいよ?ただ、ここはトラエの言うことを聞いたほうがいいんじゃないかな~」

 自分では充分な説明だと思った。

「......おにーちゃんは、トラエおねーちゃんのことが好きなの?」

 なんでそうなる。

「あ、あの、ウサ?いきなり何を言い出しているのかな?」

「だっておにーちゃんはずっとトラエおねーちゃんの味方ばっかしてて、ぜんぜんウサの味方はしてくれないんだもん!」

 ヤバい。めんどくさい。

「トラエ!これ、どうすればいいんだ!?」

 仲裁に入ったはずの俺がトラエに助けを求めた。

「ハァー。まったく困ったもんだな。もういい、こうしよう」

 そう言うとトラエはウサの首根っこをひょいとつかんで力ずくの排除に出る。

「ふたりしてウサのことをイジめてひどい!ひどいよぉぉぉ!!」

 ウサが泣き叫ぶように批判した。
 ん?泣き叫ぶように?

「うっ...うっ......うわぁぁぁん!!」

 気づいた時には遅かった。
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