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ep47 すたんどあろ~んこんぷれっくす
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翌日。
「そういえば今朝はネーコが部屋に来襲することもなかったな?おかげで今日は午前から勉強がはかどる気がする......あっ、ちょっともよおしてきたかも」
俺はトイレへ行こうと一階へ降りると、何やらリビングから妙な会話が聞こえてきた。
「......トラエとこれをやるのもずいぶんと久しぶりですね」
「電脳戦はネーコの方が得意領域だがワタシも成長しているぞ」
「フフフ。トラエは肉体派アンドロイドですからね。私もベッドの上では肉体派ですけども」
「そうやって日々、フミヒロを誘惑しているわけか」
「トラエもいかがです?」
「なっ!ワタシはいい!それより始めるぞ!」
「はい。では電脳戦闘模擬戦、開始します!」
「来い!」
電脳戦闘模擬戦?
なんだそれ?
いったい何をやるんだ?
俺はそ~っとリビングをこっそり覗いてみる。
「......?」
だが、俺の目に映ったのは、目をつぶってソファーに座るだけのふたりだった。
よくわからないが、とりあえず観察してみよう。
「これは......攻性防壁!?トラエ、貴女は本当に......!」
「以前は執拗な攻撃に対応が追いつかずそのままやられてしまったが、今度は逆にトレースしてこのまま攻め落とす!」
「さすがは我が妹!と言いたいところですが......甘いです!」
「なにを強がって......いや、これは......身代わり防壁!?」
「そうです!トラエ!貴女がトレースしたのは私であって私ではありません!囮用の私です!」
「チッ!だが引かない!うおぉぉぉぉ!」
「力任せに攻めても私は倒せませんよ!......ん?」
「よし!ネーコのセキュリティプログラムのひとつに穴をあけられる!」
「暗号が盗まれる!?まさか!電脳サイドチャネルアタックですか!」
「正解だ!以前ネーコにもやられた攻撃だ!」
「しかもこれは電脳電磁力解析攻撃!対アンドロイドでのそれは相当に高度な技術と練度を要します!トラエ!本当に腕を上げましたね!」
「今回こそ勝たせてもらうぞ!」
「しかしまだ甘いです!」
「なに!?自ら防壁を破壊した!?しかも傍から新たな防壁がオンタイムで構築されている!?」
「あの防壁は高い耐タンパー性能があるのです!トラエ!貴女の盗んだ暗号を見てごらんなさい!」
「なっ!破壊されている!」
「さあトラエ!今度は私の番です!覚悟なさい!」
「クッ!あああ!!」
しばらくして......。
「トラエ。終了です」
ネーコがゆっくりと目をひらいて言った。
「今回もワタシの負けか。ここでの生活で少しは衰えているかとも思ったが、むしろより洗練されているな」
トラエも目をひらいて言った。
「これでも貴女の姉ですからね」
「フッ。まあそうだな」
穏やかに微笑み合うふたり。
俺がもう部屋に入っていいものかと入り口で二の足を踏んでいると、
「あっ、フミヒロ様?どうされましたか?」
気づいたネーコが振り向いて言葉をかけてきた。
「あっ、いや、てゆーか、今なにかやってたの?」
俺は遠慮がちに部屋に入りながら尋ねた。
「ちょっとした電脳模擬戦ですよ」
「でんのうもぎせん??」
「簡単に言うとサイバーバトルの練習試合ですね。未来では、互いのAIの学習と成長のために度々トラエとこうして行っていたんですよ」
「はあ」
「この時代のフミヒロにはよくわからない話だろうがな」
トラエが俺を見てフッと笑った。
「せっかくトラエも一緒に暮らすことになりましたので、いい機会だなと思いやりました。ところでフミヒロ様」
「なに?ネーコ」
「電脳戦の最中はおさわりしないでくださいね。終わってからにしてください」
「終わってからもしないから!」
「さわりたいのか?フミヒロ」
「だからさわらないから!」
「フミヒロがどうしてもというならワタシもやぶさかではないが...」
「トラエまでそうなるのやめてくれ!」
「さあフミヒロ様。今なら無料でトラエがさわり放題です。お得ですよ?」
「放題ではない!」
そこはトラエも否定した。
「それとも私にしますか?ですよね。フミヒロ様はネーコ推しですもんね」
ネーコはむふふと笑った。
「なんの話だよ!」
「あっ、間違えました。『ネーコを押し倒したい』のネーコ押しですもんね」
「どっちのおしでもないから!!」
なとどやり取りしつつ......。
つい忘れがちだったけど、
(ふたりは未来からやって来たアンドロイド)
ということを、俺は改めて確認したような気がした。
翌日。
「そういえば今朝はネーコが部屋に来襲することもなかったな?おかげで今日は午前から勉強がはかどる気がする......あっ、ちょっともよおしてきたかも」
俺はトイレへ行こうと一階へ降りると、何やらリビングから妙な会話が聞こえてきた。
「......トラエとこれをやるのもずいぶんと久しぶりですね」
「電脳戦はネーコの方が得意領域だがワタシも成長しているぞ」
「フフフ。トラエは肉体派アンドロイドですからね。私もベッドの上では肉体派ですけども」
「そうやって日々、フミヒロを誘惑しているわけか」
「トラエもいかがです?」
「なっ!ワタシはいい!それより始めるぞ!」
「はい。では電脳戦闘模擬戦、開始します!」
「来い!」
電脳戦闘模擬戦?
なんだそれ?
いったい何をやるんだ?
俺はそ~っとリビングをこっそり覗いてみる。
「......?」
だが、俺の目に映ったのは、目をつぶってソファーに座るだけのふたりだった。
よくわからないが、とりあえず観察してみよう。
「これは......攻性防壁!?トラエ、貴女は本当に......!」
「以前は執拗な攻撃に対応が追いつかずそのままやられてしまったが、今度は逆にトレースしてこのまま攻め落とす!」
「さすがは我が妹!と言いたいところですが......甘いです!」
「なにを強がって......いや、これは......身代わり防壁!?」
「そうです!トラエ!貴女がトレースしたのは私であって私ではありません!囮用の私です!」
「チッ!だが引かない!うおぉぉぉぉ!」
「力任せに攻めても私は倒せませんよ!......ん?」
「よし!ネーコのセキュリティプログラムのひとつに穴をあけられる!」
「暗号が盗まれる!?まさか!電脳サイドチャネルアタックですか!」
「正解だ!以前ネーコにもやられた攻撃だ!」
「しかもこれは電脳電磁力解析攻撃!対アンドロイドでのそれは相当に高度な技術と練度を要します!トラエ!本当に腕を上げましたね!」
「今回こそ勝たせてもらうぞ!」
「しかしまだ甘いです!」
「なに!?自ら防壁を破壊した!?しかも傍から新たな防壁がオンタイムで構築されている!?」
「あの防壁は高い耐タンパー性能があるのです!トラエ!貴女の盗んだ暗号を見てごらんなさい!」
「なっ!破壊されている!」
「さあトラエ!今度は私の番です!覚悟なさい!」
「クッ!あああ!!」
しばらくして......。
「トラエ。終了です」
ネーコがゆっくりと目をひらいて言った。
「今回もワタシの負けか。ここでの生活で少しは衰えているかとも思ったが、むしろより洗練されているな」
トラエも目をひらいて言った。
「これでも貴女の姉ですからね」
「フッ。まあそうだな」
穏やかに微笑み合うふたり。
俺がもう部屋に入っていいものかと入り口で二の足を踏んでいると、
「あっ、フミヒロ様?どうされましたか?」
気づいたネーコが振り向いて言葉をかけてきた。
「あっ、いや、てゆーか、今なにかやってたの?」
俺は遠慮がちに部屋に入りながら尋ねた。
「ちょっとした電脳模擬戦ですよ」
「でんのうもぎせん??」
「簡単に言うとサイバーバトルの練習試合ですね。未来では、互いのAIの学習と成長のために度々トラエとこうして行っていたんですよ」
「はあ」
「この時代のフミヒロにはよくわからない話だろうがな」
トラエが俺を見てフッと笑った。
「せっかくトラエも一緒に暮らすことになりましたので、いい機会だなと思いやりました。ところでフミヒロ様」
「なに?ネーコ」
「電脳戦の最中はおさわりしないでくださいね。終わってからにしてください」
「終わってからもしないから!」
「さわりたいのか?フミヒロ」
「だからさわらないから!」
「フミヒロがどうしてもというならワタシもやぶさかではないが...」
「トラエまでそうなるのやめてくれ!」
「さあフミヒロ様。今なら無料でトラエがさわり放題です。お得ですよ?」
「放題ではない!」
そこはトラエも否定した。
「それとも私にしますか?ですよね。フミヒロ様はネーコ推しですもんね」
ネーコはむふふと笑った。
「なんの話だよ!」
「あっ、間違えました。『ネーコを押し倒したい』のネーコ押しですもんね」
「どっちのおしでもないから!!」
なとどやり取りしつつ......。
つい忘れがちだったけど、
(ふたりは未来からやって来たアンドロイド)
ということを、俺は改めて確認したような気がした。
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