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ep41 田網斗羅恵⑤
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トラエが猛然とネーコに突進する。
「オラァ!」
トラエの前蹴りが鋭く伸びた。
ネーコは動かない。
このままでは被弾する!と思いきや寸前でひらりと反転してかわす。
一瞬トラエはネーコに背面を見せる恰好となる。
「トラエ!」
その隙を見逃さずネーコは死角からトラエの側頭部へ右ハイキックを疾らせる。
「!」
だがトラエはその足を腕と頭でガシッと挟んでキャッチし、振り向いてニヤリと笑う。
「甘いな。この脚もう一回折ってやる!」
トラエはそのまま脚を抱えながら自らの体ごとぐりっと捻らせようとする。
ネーコはバランスを崩し倒れかけるが...
「そうはいきません!」
崩れると見せかけてむしろその勢いを利用し、その場でわずかにフワッと跳ぶ。
そのまま宙で身体をグルンと錐揉み回転させ、左足の蹴りをトラエの顔面にガンッ!とぶち込んだ!
「甘いのは貴女です!」
ネーコはスタッと着地して即座にサッと体勢を整える。
「この程度で偉そうなこと言うな、ネーコ」
完全に顔面をとらえたかと思いきや、トラエはすんでの所で一方の腕でネーコの錐揉みキックを防御していた。
「さすがは我が姉妹のトラエですね。本番はこれからと言ったところでしょうか」
ネーコはスッと構え直した。
「よくわかっているな」
トラエは体勢を戻しながらニヤリと笑った。
「な、なんか、間近でスゴイものを見ているような......」
まだ始まったばかりとはいえ、俺は二人の闘いに圧倒される。
圧倒されつつ......あることに気を削がれてもいた。
(二人とも......スカートからパンツ丸見え!!)
中学二年生男子恐るべし......と自分自身のことながら改めて思った。
「トラエ!」
「ネーコ!」
それからさらに二人の試合は白熱する。
「ハァァッ!!」
「オラァァッ!!」
一進一退の攻防。
両アンドロイドの間に性能の差はないのだろうか。
「ど、どうなるんだ......」
俺が息を飲んで観戦していると......。
「!」」
トラエに投げ飛ばされたネーコの身体がフワァッと目の前に落下してくる。
ネーコは猫のようにクルンと宙で体勢を立て直すとシュタッと足から着地する。
が、右へぐらっとバランスを崩し、ガクッと右膝をついた。
そこへトラエは間髪入れず獲物を喰い殺さんと襲いかかる虎獣のようにダッ!と猛進してきた。
「避ければワタシはそのまま井藤フミヒロに突っ込むぞ!!」
「!!」
俺がネーコの足を引っ張るわけにはいかない。
すぐさまその場から離れようとするが、
「あ、あれ?」
体が思うように動かない。
怪我こそしていないとはいえ、どうやら俺の身体と体力はさっきのトラエのシゴキで完全に削られてしまったようだ。
「フミヒロ様、大丈夫ですよ。私の身をもって、必ず守りますから!」
ネーコはぐぐっと立ち上がりながら振り向かずに言った。
その声だけでもネーコのあたたかくて優しい笑顔が見えた気がした。
そして気づいた。
眼前にあるネーコの右脚が立つのも辛そうにプルプルと震えていることを。
(え?ネーコの脚......完全に修復していたわけではないのか??)
そういえばネーコのやつ、脚は大丈夫かって訊いた時、大丈夫とは答えなかったよな。
ということはやっぱり......。
それでもネーコは急いでここまで来て、トラエとの戦いが始まって、戦っている内にダメージが蓄積してまた損傷が進んでしまったんだ!
(そんなネーコを指をくわえて見ているだけで、俺はいいのか??)
俺は......俺は......俺は!
「う、う、うおぉぉぉぉ!!」
......ここから先はハッキリとは覚えていない。
ただ、無我夢中だった。
なんであの状態から動けたんだろう。
俺は後ろからネーコを横へ押しのけて、トラエへ向かっていったんだ......。
「オラァ!」
トラエの前蹴りが鋭く伸びた。
ネーコは動かない。
このままでは被弾する!と思いきや寸前でひらりと反転してかわす。
一瞬トラエはネーコに背面を見せる恰好となる。
「トラエ!」
その隙を見逃さずネーコは死角からトラエの側頭部へ右ハイキックを疾らせる。
「!」
だがトラエはその足を腕と頭でガシッと挟んでキャッチし、振り向いてニヤリと笑う。
「甘いな。この脚もう一回折ってやる!」
トラエはそのまま脚を抱えながら自らの体ごとぐりっと捻らせようとする。
ネーコはバランスを崩し倒れかけるが...
「そうはいきません!」
崩れると見せかけてむしろその勢いを利用し、その場でわずかにフワッと跳ぶ。
そのまま宙で身体をグルンと錐揉み回転させ、左足の蹴りをトラエの顔面にガンッ!とぶち込んだ!
「甘いのは貴女です!」
ネーコはスタッと着地して即座にサッと体勢を整える。
「この程度で偉そうなこと言うな、ネーコ」
完全に顔面をとらえたかと思いきや、トラエはすんでの所で一方の腕でネーコの錐揉みキックを防御していた。
「さすがは我が姉妹のトラエですね。本番はこれからと言ったところでしょうか」
ネーコはスッと構え直した。
「よくわかっているな」
トラエは体勢を戻しながらニヤリと笑った。
「な、なんか、間近でスゴイものを見ているような......」
まだ始まったばかりとはいえ、俺は二人の闘いに圧倒される。
圧倒されつつ......あることに気を削がれてもいた。
(二人とも......スカートからパンツ丸見え!!)
中学二年生男子恐るべし......と自分自身のことながら改めて思った。
「トラエ!」
「ネーコ!」
それからさらに二人の試合は白熱する。
「ハァァッ!!」
「オラァァッ!!」
一進一退の攻防。
両アンドロイドの間に性能の差はないのだろうか。
「ど、どうなるんだ......」
俺が息を飲んで観戦していると......。
「!」」
トラエに投げ飛ばされたネーコの身体がフワァッと目の前に落下してくる。
ネーコは猫のようにクルンと宙で体勢を立て直すとシュタッと足から着地する。
が、右へぐらっとバランスを崩し、ガクッと右膝をついた。
そこへトラエは間髪入れず獲物を喰い殺さんと襲いかかる虎獣のようにダッ!と猛進してきた。
「避ければワタシはそのまま井藤フミヒロに突っ込むぞ!!」
「!!」
俺がネーコの足を引っ張るわけにはいかない。
すぐさまその場から離れようとするが、
「あ、あれ?」
体が思うように動かない。
怪我こそしていないとはいえ、どうやら俺の身体と体力はさっきのトラエのシゴキで完全に削られてしまったようだ。
「フミヒロ様、大丈夫ですよ。私の身をもって、必ず守りますから!」
ネーコはぐぐっと立ち上がりながら振り向かずに言った。
その声だけでもネーコのあたたかくて優しい笑顔が見えた気がした。
そして気づいた。
眼前にあるネーコの右脚が立つのも辛そうにプルプルと震えていることを。
(え?ネーコの脚......完全に修復していたわけではないのか??)
そういえばネーコのやつ、脚は大丈夫かって訊いた時、大丈夫とは答えなかったよな。
ということはやっぱり......。
それでもネーコは急いでここまで来て、トラエとの戦いが始まって、戦っている内にダメージが蓄積してまた損傷が進んでしまったんだ!
(そんなネーコを指をくわえて見ているだけで、俺はいいのか??)
俺は......俺は......俺は!
「う、う、うおぉぉぉぉ!!」
......ここから先はハッキリとは覚えていない。
ただ、無我夢中だった。
なんであの状態から動けたんだろう。
俺は後ろからネーコを横へ押しのけて、トラエへ向かっていったんだ......。
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