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ep39 田網斗羅恵③
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トラエとの公園での一件以来、俺は彼女から逃げるようにひたすら部屋に篭りきっていた。
食事はネーコが部屋まで運んできてくれたが、部屋の中には誰も入れなかった。
幸い、あの日から母さんは緊急の出張でまったく帰っていない。
だから、不登校児のさらなる悪化した状態を母さんには見せずに済んだ。
「オイ!井藤フミヒロ!もうあれから三日だぞ?いつまでそうしているんだ!」
トラエが部屋のドアをドンドンと叩いてきた。
「いい加減逃げるのはやめろ!所詮逃げた先にあるのはまた新たな逃げ道だけだ!」
俺はトラエの物理的な暴力以上に言葉が怖い。
もうあんなふうに言われたくない。
「ワタシとしても貴様自身の意思を尊重する意味で三日は待ってやった。だがもう限界だ」
なんだ?何をする気だ?
「トラエ!無理矢理はいけません!」
「うるさい!お前は黙っていろ!」
「きゃあっ!」
部屋の外でバタンと人が崩れる音がした。
ネーコの声も......まさか、トラエがネーコに何かしたのか?
などと思った矢先。
ドガーン!と部屋のドアが突き破られる。
「井藤フミヒロ!!」
どうやらトラエがドアを強引に蹴り破ったようだ。
そのまま彼女がずんずんと迫ってくるなり、
「来い!!」
「あっ!ちょっ!」
俺は彼女に首根っこを引っ掴まれ無理矢理部屋から引きずり出される。
「ふ、フミヒロ様!」
俺が廊下に引っ張り出された時、床にうずくまるネーコが顔を上げて俺の名を叫んだ。
が、何かのダメージがあるのかネーコは動けない。
「と、トラエ!ネーコは、どうしたの!?」
俺は引っ張られながらも気になって尋ねた。
「脚をへし折ってやった」
「えっ??」
「といってもワタシたちアンドロイドには自己修復機能が備わっている。よほどの損傷を被らない限りは自然と回復できる。とりあえず邪魔立てされぬよう適度に痛めつけた」
「お、お前!」
「怒っているのか?いいぞ。その調子でワタシに向かってこい」
「くっ......」
やがて公園にたどり着く......。
俺はトラエに乱暴に地面へ投げ出された。
「く、くそっ!」
トラエは俺に見下すような目を向け、挑発的な笑みを浮かべる。
「少しはやる気が出たか?」
「......」
俺はトラエを睨んだ。
なぜだか今日はすごく怒りが込み上げてくる。
「いい眼だ。さあ、かかって来い。井藤フミヒロ」
「...れ」
「ん?」
「あやまれ!」
「謝る?ワタシが貴様にか?」
「ネーコにあやまれ!」
「はっ?」
「ネーコを傷つけたことを謝れ!」
「......なら、力ずくでワタシに謝らせてみろ」
「......うあああ!!」
俺は無我夢中で突っ込んだ。
「あああ!!」
......俺は何をしているんだろう。
殴り合いのケンカなんか一度もしたことないのに。
というか殴り合いにすらなっていない。
俺のへなちょこな攻撃はかすりもせず、相手に一方的にやられているだけ。
「あああ!!」
何をこんなに興奮しているんだろう。
こんなことやるだけ無駄なのに。
でも......。
許せないんだ。
どうしても。
ネーコが傷つけられたことが!
「あああ!!」
だけど、こんなの長く続くわけもない。
「あああ......」
俺は前のめりに崩れ落ちた。
トラエとの公園での一件以来、俺は彼女から逃げるようにひたすら部屋に篭りきっていた。
食事はネーコが部屋まで運んできてくれたが、部屋の中には誰も入れなかった。
幸い、あの日から母さんは緊急の出張でまったく帰っていない。
だから、不登校児のさらなる悪化した状態を母さんには見せずに済んだ。
「オイ!井藤フミヒロ!もうあれから三日だぞ?いつまでそうしているんだ!」
トラエが部屋のドアをドンドンと叩いてきた。
「いい加減逃げるのはやめろ!所詮逃げた先にあるのはまた新たな逃げ道だけだ!」
俺はトラエの物理的な暴力以上に言葉が怖い。
もうあんなふうに言われたくない。
「ワタシとしても貴様自身の意思を尊重する意味で三日は待ってやった。だがもう限界だ」
なんだ?何をする気だ?
「トラエ!無理矢理はいけません!」
「うるさい!お前は黙っていろ!」
「きゃあっ!」
部屋の外でバタンと人が崩れる音がした。
ネーコの声も......まさか、トラエがネーコに何かしたのか?
などと思った矢先。
ドガーン!と部屋のドアが突き破られる。
「井藤フミヒロ!!」
どうやらトラエがドアを強引に蹴り破ったようだ。
そのまま彼女がずんずんと迫ってくるなり、
「来い!!」
「あっ!ちょっ!」
俺は彼女に首根っこを引っ掴まれ無理矢理部屋から引きずり出される。
「ふ、フミヒロ様!」
俺が廊下に引っ張り出された時、床にうずくまるネーコが顔を上げて俺の名を叫んだ。
が、何かのダメージがあるのかネーコは動けない。
「と、トラエ!ネーコは、どうしたの!?」
俺は引っ張られながらも気になって尋ねた。
「脚をへし折ってやった」
「えっ??」
「といってもワタシたちアンドロイドには自己修復機能が備わっている。よほどの損傷を被らない限りは自然と回復できる。とりあえず邪魔立てされぬよう適度に痛めつけた」
「お、お前!」
「怒っているのか?いいぞ。その調子でワタシに向かってこい」
「くっ......」
やがて公園にたどり着く......。
俺はトラエに乱暴に地面へ投げ出された。
「く、くそっ!」
トラエは俺に見下すような目を向け、挑発的な笑みを浮かべる。
「少しはやる気が出たか?」
「......」
俺はトラエを睨んだ。
なぜだか今日はすごく怒りが込み上げてくる。
「いい眼だ。さあ、かかって来い。井藤フミヒロ」
「...れ」
「ん?」
「あやまれ!」
「謝る?ワタシが貴様にか?」
「ネーコにあやまれ!」
「はっ?」
「ネーコを傷つけたことを謝れ!」
「......なら、力ずくでワタシに謝らせてみろ」
「......うあああ!!」
俺は無我夢中で突っ込んだ。
「あああ!!」
......俺は何をしているんだろう。
殴り合いのケンカなんか一度もしたことないのに。
というか殴り合いにすらなっていない。
俺のへなちょこな攻撃はかすりもせず、相手に一方的にやられているだけ。
「あああ!!」
何をこんなに興奮しているんだろう。
こんなことやるだけ無駄なのに。
でも......。
許せないんだ。
どうしても。
ネーコが傷つけられたことが!
「あああ!!」
だけど、こんなの長く続くわけもない。
「あああ......」
俺は前のめりに崩れ落ちた。
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