美少女アンドロイドが色じかけをしてくるので困っています~思春期のセイなる苦悩は終わらない~

根上真気

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ep34 奇跡

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 そうして......。


 時々ネーコから茶々を入れられながらも、俺は学級委員長さんと勉強を続けた。

 夕陽が窓から差しこむ頃。

「今日はありがとね。井藤くん」

 帰り支度をしながら学級委員長さんが言った。

「いえ!こちらこそありがとう!」

「本当はね?わたしが井藤くんにお勉強教えられたらなって思って来たんだけど、結局わたしのほうが教えられちゃったね」

「そ、そんな!学級委員長さんも勉強できるじゃん!」

「あの~、井藤くん」

 急に学級委員長さんは、ぶぅーっとスネたような顔を見せる。

「え?な、なに?」

「わたし、まだ一回も名前で呼ばれたことないんですけど」

 学級委員長さんは、ムーっとして俺に接近してくる。

「あっ、そ、そうだっけ?」

 やや気圧されて後ずさる俺。

「そうです!わたしの名前は??」

「ええっと、伊野上小茉いのうえこまちさん...」

「フルネームって!先生か!」

「じゃあ、伊野上さん...」

「うん!じゃあ井藤くん、わたし帰るね!」

 途端に学級委員長さん...もとい、伊野上さんは満面の笑みを浮かべると、上機嫌でクルッときびすを返して部屋から出ていった。
 
「お帰りですね、伊野上さん。下までお送りしましょう」

 ちょうどネーコが部屋の外で待ち構えていて、伊野上さんを門まで送っていった。
 俺も後に続いていった。

「それでは、本日はお邪魔しました」

 伊野上さんは礼儀正しくお辞儀をした。

「伊野上さん、本当に送らなくても大丈夫なんですか?いささか頼りなく足手まといかもしれませんがフミヒロ様が喜んで同行しますよ?」

「帰り道を送るのに足手まといなんかあるのか!?」

 俺がネーコのおフザケにツッコミんでいると、伊野上さんはあっと何かを思い出したように口をひらく。

「井藤くん」

「ん?なに?」

「ライン交換しない?」

「あっ、え~と、俺...スマホないんだ」

 そう。俺はスマホを持っていなかった。
 なぜなら俺が不登校だから。
 俺が不登校でいるかぎり、母さんがスマホを持つことを許してくれないから。

「そ、そっか!わかった!」

 伊野上さんはややさびしそうに笑った。
 ここで俺は、はたと重大なことに気づく。

(俺、今...クラスメイトの女子から連絡先交換しようって言われた??)

 確かに言われた。
 え?マジで?
 俺が?不登校なのに?
 こんなの奇跡としか言いようがなくね?
 しかもスマホがないって理由で俺から断った?

(いやいやいやいや!ないないないない!)

 腹を空かせた野良猫が与えられたキャットフードをわざわざ自分から拒否するか?
 にゃんだそれ!ありえにゃい!

(な、なんか、代替案はないのか!!)

 俺が必死に何かをしぼり出そうと思考していると、ネーコが俺の肩に手を置いてニコッと笑みを見せる。

「ネーコ?」

「フミヒロ様、大丈夫です。あの、伊野上さん」

「は、はい?」

「フミヒロ様はスマホは持っていませんがPCはあります。なのでとりあえずメールでもよろしいですか?」

「メールですか?アカウント登録以外にはほとんど使ってないですけど、でも確かにメールならスマホがなくても連絡とれますね。じゃあ井藤くん、それならいい??」

「あっ、うん!なんかゴメン!俺に合わせてもらっちゃって!」

「ううん。じゃあメアド交換しよ!」

 連絡先を交換すると、伊野上さんは、
「バイバ~イ!またね~!」
 茜色の空の下を朗らかに帰っていった。

 見送った後。
 俺が家の中へ戻ろうとすると、ネーコが優しく微笑みかけてくる。

「良かったですね。フミヒロ様」

「な、なんのことだよ!」

 俺は恥ずかしくてわざと突っ張った。

「何でもありません。フフフ。さて、今日もお母様は遅いそうで、また私が晩御飯をお作りしますね。何か食べたいものはございますか?フミヒロ様」
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