八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気

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動乱編

ep146 放課後②

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「そんなことがあったの!?」

 ハウ先生の研究室で起こった出来事を報告するなり、フェエルが声を上げた。
 あのあと俺が寮へ帰ってから、みんなが俺の部屋まで訪ねてきた。
 三人とも一度は帰ろうと思ったものの、やっぱり気になって引き返しここへ来たとのこと。

「さすがのハウ先生も困ってたよ」

 俺は苦笑して見せた。
 みんなの顔に笑みはない。

「ユイちゃんは、一体どういうつもりなんだろう......」

 フェエルが憂いに満ちた目を虚空に漂わせる。
 そんな中、突然エマがすっくと立ち上がった。

「あ、あのさ!」

 俺とフェエルとミアは、彼女を見上げる。

「どうしたんだ?」

 俺が訊ねると、エマは下唇を噛んで何かを言いにくそうにする。
 その様子を見るにつけ、フェエルとミアがアイコンタクトを取った。
「?」となる俺を横目に、フェエルがエマに向かいそっと口にする。

「エマちゃんは、今日セリクくんに言われたことを気にしているんだね?」 

 俺はハッとする。
 そうか。
 エマは、俺が過去にエマからされた仕打ちについて、俺が今でも気にしているのかもしれないと不安になっているのか。

「エマ」

 俺も立ち上がった。

「ヤソガミ......」

「俺はもう気にしてない。だから余計な心配はしなくていい」

「ほ、ホントに?」

 エマが不安そうに上目遣いで訊いてくる。
 俺はエマの目をしっかりと見据えた。

「本当だ。嘘でも気遣いでもないよ」

 これは本音だ。
 自分を騙しているわけでもない。
 確かに俺はエマから酷いことをされた。
 一歩間違えれば退学になっていたかもしれない。
 それにエマはミアにも酷いことをしたし、フェエルの虐めにも加担していたと言えなくもない。
 許されないことなのかもしれない。
 でも、だからこそ、俺はフェエルとミアのみならず、エマのことも救いたいと思ったんだ。
 それは俺自身の過去への贖罪でもあるし俺自身の救いでもある。
 エゴと言えばエゴだろう。
 だけど、たとえ俺のエゴでも、フェエルとエマとミアが笑い合えてくれているなら、俺のしたことは意味がある。 

「なあフェエル。ミアも」

 不意に俺はふたりに呼びかける。

「ヤソみん?」

「ヤソガミくん?」

「フェエルとミアは、エマに対して何か思うことはあるか?」

 俺の質問に、ふたりは視線を交わし合ってから、頬を緩めた。

「確かにエマちゃんにもからかわれたことはあったけど、トッパーくんたちのような実害はなかったしね」

 フェエルは優しくも悪戯っぽく微笑む。

「じ、実害って。で、でもあの時は本当にごめん」

 リアクションに難儀してエマは戸惑う。
 それを見てミアがクスッと笑った。

「エマちゃん。わたしは今でも色々思ってるよ」

「ミャーミャー!?」
 
「だってエマちゃん、ワガママだし直情的だし」

「ご、ごめん!」

「でもね。今ではこうやって面と向かって言えるようになった」

「それは、うん」

「それにお店のことも一生懸命手伝ってくれた。今は本当に友達だなって思える。だからズルいなーって思う」

「えっ?」

「本当のエマちゃんは真っ直ぐで素直な良い子なんだなって。そんなエマちゃんがわたしは好きだから」

「ミャーミャー......」

 エマはうぐっと目を潤ませた。
 
「まあそういうわけだから、この話はもう終わりだ」

 俺が締めると、三人は穏やかに微笑んだ。
 部屋の空気は一転して明るくなっていた。
 俺は改めて思う。
 あの時、行動できて良かったと。
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