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動乱編
ep130 終了
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「最終処理は国家魔術師の私がやる。ちなみに他の生徒たちは無事、全員森から脱出した。残っているのは君達だけだ。もう魔犬もいない。早く君達も森から出たまえ」
ガブリエル先生はシャレクへ視線を送り、全身が見るも無惨に焼けただれ虫の息のケルベロスへ近づいていった。
「......ということだ。僕たちはもう行こう」
シャレクが弓を下げながら全員へ指示した。
俺はほっとして息を吐いた。
ガブリエル先生の話で、フェエルとミアも無事なのがわかった。
本当に良かった。
「ヤソガミ。ありがと」
不意にエマが口をひらいた。
「ちょっとカッコよかったし」
エマは安堵の笑顔を浮かべた。
心なしか頬が火照っているように見える。
そこへランラが歩み寄ってきた。
「おい。フィッツジェラルド」
「な、なに」
いぶかしむエマに、ランラを手を差し出した。
エマはやや戸惑いを見せるが、彼女の手を取って立ち上がった。
「あ、ありがと」
「こっちのセリフだ。テメーのおかげで助かった」
「う、うん」
それからランラはリンリに視線を送ると、今度はレイ姉妹が揃って俺に顔を向けてきた。
「助かった。感謝する」
「ヤソガミ様。ありがとうございます」
あの高慢なレイ姉妹がしおらしく言ってきたので、俺はどう返せばいいかわからなくなってしまった。
でも、すぐに俺だけの力ではなかったことを思い出し、シャレクの方を見た。
「シャレクの攻撃がケルベロスの突進を遅らせてくれたから俺が間に合ったんだ」
「いや、僕の方こそランラとリンリを守ってくれたことは素直に礼を言うよ」
シャレクはそれだけ言うと、何か思わしげな目を遠くに向けて去っていった。
レイ姉妹も後に続いていった。
そんな中、ふと俺は辺りを見回して「あれ?」となる。
いつの間にか火が消えている。
先生が消火したんだろうか。
それより......火を放った張本人の姿が見当たらない。
「あいつ、いついなくなったんだ......」
そういえば、戦闘の途中から見かけなくなった気がする。
相変わらず何を考えているかわからない奴だ。
ただそれでも、セリクが来てくれた時は何だかんだ最終的には助かっている。
なので、終わりよければ、ということにしておこう。
それに今日に関しては、もっとわからない人間がいる。
「さあ、私たちも行きましょう」
ジークレフ学級委員長は澄ました顔でさも当然のように立ち去っていった。
俺はエマと顔を見合わせ、首を捻った。
「何なんだろうな」
「わからんし。てゆーかさ、ぶっちゃけあーし、ジークレフさん苦手」
「ぶっちゃけでもないだろ。とっくに気づいてたぞ」
「なっ」
エマはむぅーっと膨れて見せてから、急に悪戯っぽくニヤリとした。
「へー。ヤソガミってぇ、そんなにあーしのこと見てくれてんのぉ?」
いかにも女子高生という感じでキャハハと笑うエマ。
こういう時、どうリアクションするのが正しいんだろう。
俺は助けを求めるようにライマスに視線を送った。
ところが、ライマスは俯いたまま背中を向けて歩いていってしまった。
「ライマス?」
またしても俺はエマと顔を見合わせて小首を傾げる。
けど、もうここにいてもしょうがない。
ガブリエル先生は横たわるケルベロスを調べているようだが、俺たちがいても何もできない。
「俺たちも行くか」
「うん」
エマが笑顔で頷いた。
やけに機嫌が良い気がする。
「なんか、嬉しそうだな」
「俺が守る、だって。フフ......」
「えっ?」
「なんでもないよ。はやくいこっ」
エマは俺の腕を引っ張って歩き出した。
森を出口に向かって歩いていると、不意にイナバが肩に降りてきて前方のどこかを示した。
「小僧。あれ、奴等ではないか?」
「あっ」と俺が気づくより先に、エマが駆け出していた。
「ミャーミャー!」
「エマちゃん!」
ミアも駆け寄ってきて、ふたりは再会を喜んで手を取り合った。
少し遅れて俺とフェエルも再会の輪に加わる。
「てゆーか、フェエルとミアはまだ森の中にいたんだな。ガブリエル先生はみんな脱出したって言ってたけど」
「ぼくとミアちゃんもそうしたんだけど、ヤソみんたちが心配で引き返してきちゃったんだ」
「でもなんで俺たちがここら辺を歩いてくることがわかったんだ?」
「ハウ先生が教えてくれたんだ」
「ハウ先生?」
ちょっとびっくりした。
「ハウ先生が生徒みんなの森からの脱出を迅速に進めてくれたんだよ」
「そ、そうなのか」
「ちなみにミアちゃんの怪我を治してくれたのもハウ先生だよ」
どうやらハウ先生は生徒の安全のために尽力したらしい。
正直、意外だった。
やる気のない人だと思っていたから。
実は良い先生なんだろうか......なんて考えていると、いきなりエマが腕を掴んできた。
「てか、聞いてよ!ヤソガミ、ケルベロス倒したんだよ!ヤバくね!?」
そのままエマは興奮気味にまくし立てるように語り出した。
それを皮切りに、四人は歩きながら報告会を行った。
チームヤソガミ、初戦の報告会だ。
ついさっきまで戦っていたのもあり、話は大いに盛り上がった。
それだけに残念だった。
この場に一人欠けていることが。
ガブリエル先生はシャレクへ視線を送り、全身が見るも無惨に焼けただれ虫の息のケルベロスへ近づいていった。
「......ということだ。僕たちはもう行こう」
シャレクが弓を下げながら全員へ指示した。
俺はほっとして息を吐いた。
ガブリエル先生の話で、フェエルとミアも無事なのがわかった。
本当に良かった。
「ヤソガミ。ありがと」
不意にエマが口をひらいた。
「ちょっとカッコよかったし」
エマは安堵の笑顔を浮かべた。
心なしか頬が火照っているように見える。
そこへランラが歩み寄ってきた。
「おい。フィッツジェラルド」
「な、なに」
いぶかしむエマに、ランラを手を差し出した。
エマはやや戸惑いを見せるが、彼女の手を取って立ち上がった。
「あ、ありがと」
「こっちのセリフだ。テメーのおかげで助かった」
「う、うん」
それからランラはリンリに視線を送ると、今度はレイ姉妹が揃って俺に顔を向けてきた。
「助かった。感謝する」
「ヤソガミ様。ありがとうございます」
あの高慢なレイ姉妹がしおらしく言ってきたので、俺はどう返せばいいかわからなくなってしまった。
でも、すぐに俺だけの力ではなかったことを思い出し、シャレクの方を見た。
「シャレクの攻撃がケルベロスの突進を遅らせてくれたから俺が間に合ったんだ」
「いや、僕の方こそランラとリンリを守ってくれたことは素直に礼を言うよ」
シャレクはそれだけ言うと、何か思わしげな目を遠くに向けて去っていった。
レイ姉妹も後に続いていった。
そんな中、ふと俺は辺りを見回して「あれ?」となる。
いつの間にか火が消えている。
先生が消火したんだろうか。
それより......火を放った張本人の姿が見当たらない。
「あいつ、いついなくなったんだ......」
そういえば、戦闘の途中から見かけなくなった気がする。
相変わらず何を考えているかわからない奴だ。
ただそれでも、セリクが来てくれた時は何だかんだ最終的には助かっている。
なので、終わりよければ、ということにしておこう。
それに今日に関しては、もっとわからない人間がいる。
「さあ、私たちも行きましょう」
ジークレフ学級委員長は澄ました顔でさも当然のように立ち去っていった。
俺はエマと顔を見合わせ、首を捻った。
「何なんだろうな」
「わからんし。てゆーかさ、ぶっちゃけあーし、ジークレフさん苦手」
「ぶっちゃけでもないだろ。とっくに気づいてたぞ」
「なっ」
エマはむぅーっと膨れて見せてから、急に悪戯っぽくニヤリとした。
「へー。ヤソガミってぇ、そんなにあーしのこと見てくれてんのぉ?」
いかにも女子高生という感じでキャハハと笑うエマ。
こういう時、どうリアクションするのが正しいんだろう。
俺は助けを求めるようにライマスに視線を送った。
ところが、ライマスは俯いたまま背中を向けて歩いていってしまった。
「ライマス?」
またしても俺はエマと顔を見合わせて小首を傾げる。
けど、もうここにいてもしょうがない。
ガブリエル先生は横たわるケルベロスを調べているようだが、俺たちがいても何もできない。
「俺たちも行くか」
「うん」
エマが笑顔で頷いた。
やけに機嫌が良い気がする。
「なんか、嬉しそうだな」
「俺が守る、だって。フフ......」
「えっ?」
「なんでもないよ。はやくいこっ」
エマは俺の腕を引っ張って歩き出した。
森を出口に向かって歩いていると、不意にイナバが肩に降りてきて前方のどこかを示した。
「小僧。あれ、奴等ではないか?」
「あっ」と俺が気づくより先に、エマが駆け出していた。
「ミャーミャー!」
「エマちゃん!」
ミアも駆け寄ってきて、ふたりは再会を喜んで手を取り合った。
少し遅れて俺とフェエルも再会の輪に加わる。
「てゆーか、フェエルとミアはまだ森の中にいたんだな。ガブリエル先生はみんな脱出したって言ってたけど」
「ぼくとミアちゃんもそうしたんだけど、ヤソみんたちが心配で引き返してきちゃったんだ」
「でもなんで俺たちがここら辺を歩いてくることがわかったんだ?」
「ハウ先生が教えてくれたんだ」
「ハウ先生?」
ちょっとびっくりした。
「ハウ先生が生徒みんなの森からの脱出を迅速に進めてくれたんだよ」
「そ、そうなのか」
「ちなみにミアちゃんの怪我を治してくれたのもハウ先生だよ」
どうやらハウ先生は生徒の安全のために尽力したらしい。
正直、意外だった。
やる気のない人だと思っていたから。
実は良い先生なんだろうか......なんて考えていると、いきなりエマが腕を掴んできた。
「てか、聞いてよ!ヤソガミ、ケルベロス倒したんだよ!ヤバくね!?」
そのままエマは興奮気味にまくし立てるように語り出した。
それを皮切りに、四人は歩きながら報告会を行った。
チームヤソガミ、初戦の報告会だ。
ついさっきまで戦っていたのもあり、話は大いに盛り上がった。
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