上 下
127 / 134
動乱編

ep127 勢ぞろい

しおりを挟む
「やあ、みんな。特異クラスも特別クラスも仲良さそうで何よりだね」

「セリク!」

 なんと、セリク・クレイトンまでもがこの場にやって来た。
 まるであらかじめみんなで申し合わせたような集合っぷり。
 しかもセリクは、一同を驚かす事実を口にする。

「そもそもさ。わざわざ先生を呼びに行く必要はないよ。じきに勝手に来るはずだから」

「それはどういうことだ?」

 シャレクが訊く。

「今、森中で赤黒い魔犬が暴走を始めたからね。いち早く森から逃げた誰かが先生に伝えてくれるだろうし、先生が異変に気づくのは時間の問題だよ」

 森中で赤黒い魔犬が暴走?
 ガブリエル先生の召喚魔術に狂いが生じているってことか?
 それにあの赤黒い魔犬。
 そんなに数がいるのか。
 何よりみんな大丈夫なのか?

「ミャーミャーとフェエル、大丈夫かな......」

 エマも俺と同じことを考えて不安な表情を滲ませた。
 どうしたものかと考える。
 そこへセリクが言ってきた。
 いつもの軽い調子で。

「ヤソガミくん。キミの魔法で全部やっちゃえば?」

「えっ」

「できるんでしょ?ヤソガミくんの百パーセントの力、見てみたいなぁ」

 セリクはいつも通りの笑顔のままで言う。
 
「セリク。君の言うことでもそれは許可できない」

「あれ?シャレクにしてはつまらないことを言うね」

「面白いとかつまらないとかそういう問題ではない。セリクは今日、全力の魔法を放ったか?」

「やるわけないじゃない。ボクは炎使いだ。火事になっちゃうからね」

「それがわかっているのになぜ、わざとあんなことを言う。ヤソガミがやっても一緒だろう」

「ヤソガミくんなら炎以外でもできるよ。実際、前に洪水を起こしていたしね」

「洪水でも、森中の魔物を倒すレベルで放てば大変なことになる。生徒会長として、生徒の命を危険に晒すわけにはいかない」

「ヤソガミくんには危険な攻撃もしていたシャレクに、そんなこと言われてもなぁ」

「僕は見極めてやっている。それはセリクならわかるだろう。なぜそんなこと...」

「わかったわかった、わかったよ。じゃあこうしよう」

 セリクが人差し指を立てて、ケルベロスに向けた。

「ボクがあれを倒してあげるよ」

「ちょっと待て。セリク」

「〔炎弾フランマバレット〕」

 なんとセリクがいきなり魔法を撃ち放った。
 しかも一発や二発じゃない。
 次々と発射された炎の弾丸が悉くケルベロスに命中する。
 
「基本的に獣は炎に弱いからね~」

 セリクは楽しそうにバンバンバンッと炎弾を連発し続ける。
 だが、次第にケルベロスは全身を震わせて炎弾を弾き始めた。

「なんか、ヤバくね!?」

 エマが言ったのはケルベロスのことじゃない。
 森のことだ。

「おいセリク!何をやっている!森が火事になるぞ!」

 俺たちよりも先にシャレクが声を上げた。

「委員長!あんたの水魔法で早く火を消し止めたほうが」

 俺の言葉に、なぜかジークレフ学級委員長の反応は鈍い。

「相手が相手だもの。仕方がないわ」

 なんか変だ。
 俺が教室に洪水を起こした時は苦言を呈してきたのに。
 
「くそっ。こうなったら......」

「やるしかないようじゃな」

 イナバが言った。
 俺はこくんと頷いて、御神札を構えてシャレクに視線を投げた。

「生徒会長。このまま俺たちでケルベロスを倒してしまおう」

「仕方ないな。ランラ、リンリ。僕たちもやるぞ!」

 シャレクの指示にレイ姉妹が頷いて戦闘態勢を取った。

「いくぜ。リンリ!」

「はい。姉さん」

 セリクに続いて生徒会トリオが参戦する。
 ここに対ケルベロスの戦闘が本格的に開始した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!

らもえ
ファンタジー
旧題:異世界に射出された俺、見知らぬ森の真中へ放り出される。周りには木しか生えていないけどお地蔵さんに貰ったレアスキルを使って何とか生き延びます。  俺こと杉浦耕平は、学校帰りのコンビニから家に帰る途中で自称神なるものに拉致される。いきなり攫って異世界へ行けとおっしゃる。しかも語り口が軽くどうにも怪しい。  向こうに行っても特に使命は無く、自由にしていいと言う。しかし、もらえたスキルは【異言語理解】と【簡易鑑定】のみ。いや、これだけでどうせいっちゅーに。そんな俺を見かねた地元の地蔵尊がレアスキルをくれると言うらしい。やっぱり持つべきものは地元の繋がりだよね!  それで早速異世界転移!と思いきや、異世界の高高度の上空に自称神の手違いで射出されちまう。紐なしバンジーもしくはパラシュート無しのスカイダイビングか?これ。  自称神様が何かしてくれたお陰で何とか着地に成功するも、辺りは一面木ばっかりの森のど真ん中。いやこれ遭難ですやん。  そこでお地蔵さんから貰ったスキルを思い出した。これが意外とチートスキルで何とか生活していくことに成功するのだった。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...