上 下
127 / 163
動乱編

ep127 勢ぞろい

しおりを挟む
「やあ、みんな。特異クラスも特別クラスも仲良さそうで何よりだね」

「セリク!」

 なんと、セリク・クレイトンまでもがこの場にやって来た。
 まるであらかじめみんなで申し合わせたような集合っぷり。
 しかもセリクは、一同を驚かす事実を口にする。

「そもそもさ。わざわざ先生を呼びに行く必要はないよ。じきに勝手に来るはずだから」

「それはどういうことだ?」

 シャレクが訊く。

「今、森中で赤黒い魔犬が暴走を始めたからね。いち早く森から逃げた誰かが先生に伝えてくれるだろうし、先生が異変に気づくのは時間の問題だよ」

 森中で赤黒い魔犬が暴走?
 ガブリエル先生の召喚魔術に狂いが生じているってことか?
 それにあの赤黒い魔犬。
 そんなに数がいるのか。
 何よりみんな大丈夫なのか?

「ミャーミャーとフェエル、大丈夫かな......」

 エマも俺と同じことを考えて不安な表情を滲ませた。
 どうしたものかと考える。
 そこへセリクが言ってきた。
 いつもの軽い調子で。

「ヤソガミくん。キミの魔法で全部やっちゃえば?」

「えっ」

「できるんでしょ?ヤソガミくんの百パーセントの力、見てみたいなぁ」

 セリクはいつも通りの笑顔のままで言う。
 
「セリク。君の言うことでもそれは許可できない」

「あれ?シャレクにしてはつまらないことを言うね」

「面白いとかつまらないとかそういう問題ではない。セリクは今日、全力の魔法を放ったか?」

「やるわけないじゃない。ボクは炎使いだ。火事になっちゃうからね」

「それがわかっているのになぜ、わざとあんなことを言う。ヤソガミがやっても一緒だろう」

「ヤソガミくんなら炎以外でもできるよ。実際、前に洪水を起こしていたしね」

「洪水でも、森中の魔物を倒すレベルで放てば大変なことになる。生徒会長として、生徒の命を危険に晒すわけにはいかない」

「ヤソガミくんには危険な攻撃もしていたシャレクに、そんなこと言われてもなぁ」

「僕は見極めてやっている。それはセリクならわかるだろう。なぜそんなこと...」

「わかったわかった、わかったよ。じゃあこうしよう」

 セリクが人差し指を立てて、ケルベロスに向けた。

「ボクがあれを倒してあげるよ」

「ちょっと待て。セリク」

「〔炎弾フランマバレット〕」

 なんとセリクがいきなり魔法を撃ち放った。
 しかも一発や二発じゃない。
 次々と発射された炎の弾丸が悉くケルベロスに命中する。
 
「基本的に獣は炎に弱いからね~」

 セリクは楽しそうにバンバンバンッと炎弾を連発し続ける。
 だが、次第にケルベロスは全身を震わせて炎弾を弾き始めた。

「なんか、ヤバくね!?」

 エマが言ったのはケルベロスのことじゃない。
 森のことだ。

「おいセリク!何をやっている!森が火事になるぞ!」

 俺たちよりも先にシャレクが声を上げた。

「委員長!あんたの水魔法で早く火を消し止めたほうが」

 俺の言葉に、なぜかジークレフ学級委員長の反応は鈍い。

「相手が相手だもの。仕方がないわ」

 なんか変だ。
 俺が教室に洪水を起こした時は苦言を呈してきたのに。
 
「くそっ。こうなったら......」

「やるしかないようじゃな」

 イナバが言った。
 俺はこくんと頷いて、御神札を構えてシャレクに視線を投げた。

「生徒会長。このまま俺たちでケルベロスを倒してしまおう」

「仕方ないな。ランラ、リンリ。僕たちもやるぞ!」

 シャレクの指示にレイ姉妹が頷いて戦闘態勢を取った。

「いくぜ。リンリ!」

「はい。姉さん」

 セリクに続いて生徒会トリオが参戦する。
 ここに対ケルベロスの戦闘が本格的に開始した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!

根上真気
ファンタジー
これは、元やり手営業部長の青年が、その営業力を駆使し、転移した異世界で起業して成功する物語。しかしその道のりは困難の連続だった!彼の仲間は落ちぶれた魔導博士と魔力量だけが取り柄のD級魔導師の娘。彼らと共に、一体どうやって事業を成功させるのか?彼らの敵とは何なのか?今ここに、異世界に降り立った日本人青年の、世紀の実業ファンタジーが幕を開ける!

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

処理中です...