上 下
123 / 134
動乱編

ep123 人気と実力

しおりを挟む
「オイ、生徒会長さん。今、ジェットレディ様をバカにするようなこと言ったか!?」

 敏感にエマが反応した。
 シャレクは見せたことのない冷たい眼つきでエマを睨みつける。

「言ったけど、何か?」

 シャレクのただならぬ迫力に、エマはうっと押し黙った。

「生徒会長。さっきの言葉は、どういう意味なんだ?」

 改めて俺から訊く。
 エマの想いとはまた違うだろうが、今では俺もジェットレディのことを尊敬している。
 そもそもあの人の存在なくして今の俺はない。
 だからさっきのシャレクの言葉は聞き捨てならなかった。

「どういう意味も何も、そのままの意味だが」

「根拠は...あるのか」

「根拠も何も、それが事実だからだ。そもそも彼女はSランクのダイヤモンドクラスでもない。もちろんコランダムクラスのAランク国家魔術師であることは間違いないし、それ自体は評価に値する。しかし、それにしても人気があり過ぎるんだよ。どう考えても間違っている」

「人気があるのは、それだけ魅力的ってことだろ?」

「人気のジェットレディ。実力のカレン。聞いたことがないか?」

「それ、知ってるよ」

 エマが答える。

「魔法剣士カレン。ジェットレディの同期にしてダイヤモンドクラスの国家魔術師。だけど人気はジェットレディの方が圧倒的なんだよな」

「それがオカシイと言っているんだ。本来であればカレン先生こそが実力と共に人気もナンバーワンでなければならないんだ」

「それは仕方のないことだろ?人気は国民が決めることなんだから」と俺が言うと、シャレクは吐き棄てるように笑った。

「ハッハッハ!その通りだよ。国民の大半は馬鹿だからね」

 返す言葉がなかった。
 そんな俺に向かって、スッと真顔に戻ってシャレクが言う。

「君は別に、ジェットレディの直弟子というわけではない。だから、君と彼女は違うと考えていた。しかし、どうやら君も似たようなモノのようだ」

「何が言いたいんだ?」

「フザけた野郎だってことだ」

「!」

「元々、今日は君の実力を測るだけのつもりだった。だが、気が変わった。今から本気で君を潰すよ」

「本気でって......。てゆーか、手加減されたことを怒るなら、お前だって俺に手加減していたんじゃないのか?」

「君のそれと僕のそれでは、質がまったく違う」

 どうやら、シャレクの導火線に火をつけてしまったようだ。
 プライドの高いエリートの感情は、俺なんかの理解は及ばないらしい。

 しかし生徒会長が、まさかジェットレディのことを嫌っているとは思わなかった。
 それこそこの学校の生徒はみんな彼女に憧れを抱いているとさえ思っていた。
 でも、よくよく考えてみると、まあそうだよな、とも思う。
 誰をどう思うかは人それぞれだし、なにも国家魔術師はジェットレディだけじゃないんだ。
 その魔法剣士カレンという人も、このシャレクが憧れるぐらいなんだ。
 相当スゴイ人なのは間違いないんだろう。

「おい小僧」

 不意にイナバが呼びかけてきた。

「なんだ?口は出さないんじゃないのか?」

「来るぞ」

「いきなりなんの話...」と言いさした時。

 俺たちの前に、恐ろしい生物がぬっと姿を現した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

異世界配信で、役立たずなうっかり役を演じさせられていたボクは、自称姉ポジのもふもふ白猫と共に自分探しの旅に出る。

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
ファンタジー
 いつだってボクはボクが嫌いだった。  弱虫で、意気地なしで、誰かの顔色ばかりうかがって、愛想笑いするしかなかったボクが。  もうモブとして生きるのはやめる。  そう決めた時、ボクはなりたい自分を探す旅に出ることにした。  昔、異世界人によって動画配信が持ち込まれた。  その日からこの国の人々は、どうにかしてあんな動画を共有することが出来ないかと躍起になった。  そして魔法のネットワークを使って、通信網が世界中に広がる。  とはいっても、まだまだその技術は未熟であり、受信機械となるオーブは王族や貴族たちなど金持ちしか持つことは難しかった。  配信を行える者も、一部の金持ちやスポンサーを得た冒険者たちだけ。  中でもストーリー性がある冒険ものが特に人気番組になっていた。  転生者であるボクもコレに参加させられている一人だ。  昭和の時代劇のようなその配信は、一番強いリーダが核となり悪(魔物)を討伐していくというもの。  リーダー、サブリーダーにお色気担当、そしてボクはただうっかりするだけの役立たず役。  本当に、どこかで見たことあるようなパーティーだった。  ストーリー性があるというのは、つまりは台本があるということ。  彼らの命令に従い、うっかりミスを起こし、彼らがボクを颯爽と助ける。  ボクが獣人であり人間よりも身分が低いから、どんなに嫌な台本でも従うしかなかった。  そんな中、事故が起きる。  想定よりもかなり強いモンスターが現れ、焦るパーティー。  圧倒的な敵の前に、パーティーはどうすることも出来ないまま壊滅させられ――

不滅のティアラ 〜狂おしいほど愛された少女の物語〜

白銀一騎
ファンタジー
[リケジョ][三十路][独身][コミュ障]の咲子はブラック企業で働く研究員だった。ある日、会社が火事になり逃げ遅れた咲子は亡くなってしまった。異世界に転生してティアラという少女に生まれ変わった咲子は今度こそ幸せな人生を歩みたいと思い、これまで学んできた知識で様々な問題を解決していくことにより周りの人々は救われていつの間にか聖女様と崇められるようになった。一方でそんな咲子の活躍に危機感を募らせるアスペルド教団により命を狙われることになる。そんな咲子の窮地を素敵な男性たちが救ってくれて皆から愛され求婚される。そんな素敵な異世界恋愛物語ですので、気軽に読んで頂ければと思います。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...