八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気

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動乱編

ep122 シャレクの思い

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「ヤソガミ!今だ!」

 エマが叫んだ。
 そうか。これはエマの鏡魔法で映し出したタケミカヅチの映像だ。
 いつの間に映像を撮っていたのか。
 とにかくこれはチャンスだ。
 
「エマ!助かった!」

 エマのおかげでシャレクの次撃が遅れた。
 今度こそ魔法を発動する時。

「それでも僕のほうが早い!」

 さすがはシャレク。
 いち早くエマの鏡魔法によるフェイクだと気づいていたようだ。
 すでに矢を放つ寸前だ。
 くそ。あとほんの僅かの間さえあれば...と願った矢先。

「なんだこの蝶々は?」
 
 突如、数匹の蝶々がシャレクの顔のまわりへ集合し、その視線を阻むようにパタパタと羽ばたいた。

「や、ヤソガミ氏!」

 それはライマスの絵魔法だった。

「ナイスだ!ライマス!」

 俺は即座に御神札へ神名をなぞって読み上げる。

「〔建御雷神タケミカヅチノカミ〕」

 ついに魔法を発動した。
 武将のような姿をした剛健な雷神が出現し、抜刀する。

 ズガァァァァンッ!!

 凄まじい雷撃がシャレクに直撃した。
 火力はマッキンリーの時と同レベルに調整した。
 生徒一人を無力化するには充分すぎるはず。

「やった!」

 エマとライマスが歓喜のガッツポーズを取った。
 俺も「よし!」と呟き、勝利を確信する。

 シュウゥゥゥゥ......。

 やがて雷撃が止み、雷神が消える。
 まだシャレクは立っていたが、間もなく崩れるだろう。
 そのはずだった。

「......なるほど。威力だけなら学内一かもしれないな」

「えっ??」

 なんとシャレクは、倒れるどころか、膝をつくことさえなく俺の雷撃に耐え切った。

「ひとつ、質問する」

 おもむろにシャレクが言った。
 その顔からは余裕の色が消えている。

「な、なんだ」

「今のは、君の全力かい」

「それは...」

 一瞬、どう答えるべきかと思ったが、マッキンリーの時と同様に正直に言うしかないと思った。

「フルパワーではない」

「......ということは、もっと火力を上げることはできたということか」

「ああ」

「初めてだよ」

「え?」

「カレン先生以外に、手加減されたのは」

 シャレクの雰囲気は、明らかに変化している。
 キレている、とも違う。
 さっきよりも落ち着いているようにさえ見える。

「今、腑に落ちたよ。君がジェットレディにスカウトされた特待生だってことが」

「はあ」

 どういう意味で言っているのか今ひとつよくわからなかったので、間の抜けた返事をしてしまった。
 次の瞬間、シャレクの眼の色が変わる。

「所詮は人気だけの、ジェットレディがスカウトしただけある。君は魔法も魔術師もナメきっているようだ」

 こいつ、今なんて言った。
 人気だけの、フザけたジェットレディって言ったよな?
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