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動乱編
ep121 生徒会長vsチームヤソガミ
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「いい加減、そろそろいいかな」
場違いに和んでいた俺たちの水を差すようにシャレクが近づいてきた。
案の定、呆れた顔をしている。
「君たち、状況をわかっているのかい?」
「うるさい!こっからはあーしらも参戦するからな!」
ここぞとばかりにエマが見栄を切った。
相変わらず調子のイイ奴だと思ったが、エマのこういう所はある意味心強い。
「まあ、好きにすればいいよ。どうせ結果は変わらないんだから」
シャレクが俺に向かって弓を構えた。
俺も御神札を構える。
ここから仕切り直しだ。
と思いながらも、具体的にどうしたもんかと思考を巡らす。
さっきはああ言ったけど、エマもライマスもまったく戦闘向きではない。
そのふたりの力を借りてできること。
何か良いアイディアはないものか。
「おい小僧」
「なんだよ。今、作戦を考え中なんだが」
「あえて口出ししなかったが」と前置きしてから、イナバは意外な言葉を口にする。
「あの弓使い相手に、まさか自分が不利だと思っておらんじゃろうな?」
「えっ?」
「はぁー。少しは成長したかと思っておったが、その反応は本気で気づいておらんな」
「な、なんのことだよ?」
「先の戦いを思い出さんか」
「赤黒い魔犬相手にやったことか?火力を上げたぐらいしか...」
「タワケが!」
「ぐべぇ!」
いきなり白兎に横っ面を殴られた。
「な、なんだよ!」
「鈍すぎるわ!斧使いとの戦いを思い出せと言っとるんじゃ!」
マッキンリーとの戦いに何かあったか?
何か......あっ。
「そうか!」
「やっと気づきおったか。もうオイラは口を出さんぞ。あとは自分だけでやるがよい」
俺はイナバに頷いて返してから、エマとライマスに視線を送った。
「二人ともありがとな。でも、俺ひとりでもイケるかもしれない」
「え?」
ふたりの反応を待たないうちに、俺は相手から離れるように駆け出した。
ある程度の距離が必要だからだ。
「馬鹿のひとつ覚えだね。残念だ」
シャレクのがっかりするような声が聞こえたが、気にしない。
むしろそう思ってくれたほうがやりやすい。
「もう少し、距離を......」
本来、弓使い相手に中途半端に距離を空けるのは自殺行為だろう。
しかし、俺の魔法は発動までに時間がかかる。
それだけじゃない。
走りながらの発動ができないんだ。
揺れて御神札に神名をなぞれないからだ。
今さらだけど俺の魔法の最大の弱点かもしれない。
ただ、今はそんなことを言っている暇はない。
とにかく今できることをやるんだ。
「よし!」
ある程度まで進んだ所で立ち止まり、バッと振り向いた。
直ちに魔術の態勢に入る。
転瞬。
「〔風弓〕」
魔法の矢が、鋭く風を切って俺に向かってきた。
うまくいくか。
いや、大丈夫だ。
できる。
自分を信じろ。
御神札を構えろ。
バヂィィィンッ!!
電気音と金属音が混ざったような独特な衝撃音が鳴る。
「なに!?」
さすがのシャレクも驚いたようだ。
俺の両手に握られた御神札が、シャレクの魔法の矢を見事に受け止めたからだ。
「ハァァァッ!」
そのまま俺はテニスのバックハンドのような要領で、魔法の矢を横に弾き飛ばした。
うまくいった。しかし本当に大事なのはここからだ。
ここで間を置いてしまったら意味がないと、即座に御神札へ指を走らせた時。
「なっ!」
視界の端に、もう一本の魔法の矢が側面方向から迫ってきているのが映った。
連射していたのか?
いや、同時に二本放って、一本だけ遠回りさせていたのか!
シャレクの〔風弓〕なら、それぐらいのことはできるはずだ!
「クッ!」
今度は身体をのけ反らせて躱した。
その方がすぐに魔術へ移行できるからだ。
ところが目論見は崩れる。
「〔雷弓〕」
二本目の矢を躱して態勢を戻そうとした時にはすでに、シャレクの弓には雷の矢がつがえられていた。
はたとした。
ここまでの流れはすべてシャレクの思惑通りなんだ。
つまり、これが決めるための一撃。
「クソッ!」
マズい。
まだ態勢も整っていない。
今、雷の矢を射たれたら、防げないかもしれない。
と思った刹那。
「えっ??」
俺だけでなく、シャレクも驚いて固まる。
どういうわけか、タケミカヅチが俺たちの前に現れたからだ。
俺は魔法を発動できていない。
なのになぜ?
場違いに和んでいた俺たちの水を差すようにシャレクが近づいてきた。
案の定、呆れた顔をしている。
「君たち、状況をわかっているのかい?」
「うるさい!こっからはあーしらも参戦するからな!」
ここぞとばかりにエマが見栄を切った。
相変わらず調子のイイ奴だと思ったが、エマのこういう所はある意味心強い。
「まあ、好きにすればいいよ。どうせ結果は変わらないんだから」
シャレクが俺に向かって弓を構えた。
俺も御神札を構える。
ここから仕切り直しだ。
と思いながらも、具体的にどうしたもんかと思考を巡らす。
さっきはああ言ったけど、エマもライマスもまったく戦闘向きではない。
そのふたりの力を借りてできること。
何か良いアイディアはないものか。
「おい小僧」
「なんだよ。今、作戦を考え中なんだが」
「あえて口出ししなかったが」と前置きしてから、イナバは意外な言葉を口にする。
「あの弓使い相手に、まさか自分が不利だと思っておらんじゃろうな?」
「えっ?」
「はぁー。少しは成長したかと思っておったが、その反応は本気で気づいておらんな」
「な、なんのことだよ?」
「先の戦いを思い出さんか」
「赤黒い魔犬相手にやったことか?火力を上げたぐらいしか...」
「タワケが!」
「ぐべぇ!」
いきなり白兎に横っ面を殴られた。
「な、なんだよ!」
「鈍すぎるわ!斧使いとの戦いを思い出せと言っとるんじゃ!」
マッキンリーとの戦いに何かあったか?
何か......あっ。
「そうか!」
「やっと気づきおったか。もうオイラは口を出さんぞ。あとは自分だけでやるがよい」
俺はイナバに頷いて返してから、エマとライマスに視線を送った。
「二人ともありがとな。でも、俺ひとりでもイケるかもしれない」
「え?」
ふたりの反応を待たないうちに、俺は相手から離れるように駆け出した。
ある程度の距離が必要だからだ。
「馬鹿のひとつ覚えだね。残念だ」
シャレクのがっかりするような声が聞こえたが、気にしない。
むしろそう思ってくれたほうがやりやすい。
「もう少し、距離を......」
本来、弓使い相手に中途半端に距離を空けるのは自殺行為だろう。
しかし、俺の魔法は発動までに時間がかかる。
それだけじゃない。
走りながらの発動ができないんだ。
揺れて御神札に神名をなぞれないからだ。
今さらだけど俺の魔法の最大の弱点かもしれない。
ただ、今はそんなことを言っている暇はない。
とにかく今できることをやるんだ。
「よし!」
ある程度まで進んだ所で立ち止まり、バッと振り向いた。
直ちに魔術の態勢に入る。
転瞬。
「〔風弓〕」
魔法の矢が、鋭く風を切って俺に向かってきた。
うまくいくか。
いや、大丈夫だ。
できる。
自分を信じろ。
御神札を構えろ。
バヂィィィンッ!!
電気音と金属音が混ざったような独特な衝撃音が鳴る。
「なに!?」
さすがのシャレクも驚いたようだ。
俺の両手に握られた御神札が、シャレクの魔法の矢を見事に受け止めたからだ。
「ハァァァッ!」
そのまま俺はテニスのバックハンドのような要領で、魔法の矢を横に弾き飛ばした。
うまくいった。しかし本当に大事なのはここからだ。
ここで間を置いてしまったら意味がないと、即座に御神札へ指を走らせた時。
「なっ!」
視界の端に、もう一本の魔法の矢が側面方向から迫ってきているのが映った。
連射していたのか?
いや、同時に二本放って、一本だけ遠回りさせていたのか!
シャレクの〔風弓〕なら、それぐらいのことはできるはずだ!
「クッ!」
今度は身体をのけ反らせて躱した。
その方がすぐに魔術へ移行できるからだ。
ところが目論見は崩れる。
「〔雷弓〕」
二本目の矢を躱して態勢を戻そうとした時にはすでに、シャレクの弓には雷の矢がつがえられていた。
はたとした。
ここまでの流れはすべてシャレクの思惑通りなんだ。
つまり、これが決めるための一撃。
「クソッ!」
マズい。
まだ態勢も整っていない。
今、雷の矢を射たれたら、防げないかもしれない。
と思った刹那。
「えっ??」
俺だけでなく、シャレクも驚いて固まる。
どういうわけか、タケミカヅチが俺たちの前に現れたからだ。
俺は魔法を発動できていない。
なのになぜ?
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