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動乱編
ep118 生徒会長の魔術
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「やあどうも。お疲れ様」
木の枝から、スッと人影が降りてきた。
気品のある佇まいの男子が、鷹揚と歩いてくる。
「生徒会長の、シャレク・タウゼンか」
「一年生主席が抜けているよ。特待生のヤソガミくん」
シャレク生徒会長は一定の距離を空けて立ち止まり、余裕ある表情で俺を見据えた。
手には綺麗な弓が携えられている。
だが、特に敵意や害意は見受けられない。
「生徒会長さんが、俺たちに何の用だ?」
「俺たち?僕が用があるのは君だけだよ」
「......」
「あの赤黒い魔犬。中々強かったよね。あれを一撃で倒せるのは、特別クラスでもそういない。僕も何体か一撃で倒してきたけどね」
「それは、お褒めにあずかり光栄だな」
「僕に褒められたんだ。光栄に思って当然だよ」
「それは」
俺は弓を指差した。
「あんたのアルマか」
「君には披露する価値があると判断した。これも光栄に思っていい」
「ということは...」
「言うまでもないだろう?」
俄かにシャレク生徒会長から、びりびりとプレッシャーが伝わってきた。
「小僧。あの男、相当の実力者じゃ」
イナバが囁いてくる。
「今までの相手とは、ハッキリ言うて格が違うぞ」
「わかってる」
俺でも理解できる。
目の前の男が、只者じゃないことを。
「ところで、特待生のヤソガミくん」
「なんだ?」
「炎と氷と雷と風。どれが好きかな?」
「は?」
「いや、君が好きなのは雷かな?雷撃を放っていたからね」
シャレク生徒会長は弓を構え、ぐんと弦を引いた。
といっても本来右手にあるはずの矢がない。と思ったのも束の間。
「〔雷弓〕」
バチバチバチィッ!と光を放つ魔法の矢が、右手に出現した。
弓につがえられた雷の矢は、真っ直ぐに俺へ向いている。
俺もやらなければ、と即座に御神札を構えて魔術の態勢に入る。
その刹那。
バチィィィッ!!
それは凄まじい速度で、俺の肩をかすめて通り過ぎた。
一瞬、何かわからなかった。
あれ?矢って、こんなに速かったか?
「うっ!」
肩がビリビリと痺れた。
雷の矢だからか。
これが直撃したらどうなる?
「君の魔法は、見ていたからわかっている」
肩を抑える俺に、シャレクが余裕の笑みを浮かべた。
「威力は申し分ない反面、発動が遅いということをね」
「俺に、魔法を撃たせないつもりか」
「正直、君の魔法はよくわからない。召喚魔法にも見えるが、おそらく違うだろう。それこそガブリエル先生は召喚魔術師だが、君のそれはあまりにも性質が異なりすぎる」
「だから、撃たせないのが最善策ってことか」
「通常、アルマを使用した魔術は、詠唱をしない。しかし、なぜか君はアルマを使って詠唱と思われるような行為を行なっている。そんな例は、今まで見たことがない。実に興味深い」
「興味深いなら、撃たせてくれてもいいんじゃないかな」
「本当は今の一撃で終わらせることもできたんだよ?わざと外したことぐらいわかるだろう?撃てるものなら撃ってみるといい」
シャレク生徒会長はにやりと笑い、再び弓を構えた。
この男。ただの偉そうな奴とは違う。
彼の自信は、確かな実力に裏打ちされたものだ。
わざと外したのも、傲慢さからではない。
純粋に俺の力を試しにきているんだ。
そのくせ、簡単には魔法を撃たせてくれない。
まるで師匠が弟子を指導するみたいだ。
マズイな。
完全に心理的優位に立たれてしまっている。
なんとかしないと。
木の枝から、スッと人影が降りてきた。
気品のある佇まいの男子が、鷹揚と歩いてくる。
「生徒会長の、シャレク・タウゼンか」
「一年生主席が抜けているよ。特待生のヤソガミくん」
シャレク生徒会長は一定の距離を空けて立ち止まり、余裕ある表情で俺を見据えた。
手には綺麗な弓が携えられている。
だが、特に敵意や害意は見受けられない。
「生徒会長さんが、俺たちに何の用だ?」
「俺たち?僕が用があるのは君だけだよ」
「......」
「あの赤黒い魔犬。中々強かったよね。あれを一撃で倒せるのは、特別クラスでもそういない。僕も何体か一撃で倒してきたけどね」
「それは、お褒めにあずかり光栄だな」
「僕に褒められたんだ。光栄に思って当然だよ」
「それは」
俺は弓を指差した。
「あんたのアルマか」
「君には披露する価値があると判断した。これも光栄に思っていい」
「ということは...」
「言うまでもないだろう?」
俄かにシャレク生徒会長から、びりびりとプレッシャーが伝わってきた。
「小僧。あの男、相当の実力者じゃ」
イナバが囁いてくる。
「今までの相手とは、ハッキリ言うて格が違うぞ」
「わかってる」
俺でも理解できる。
目の前の男が、只者じゃないことを。
「ところで、特待生のヤソガミくん」
「なんだ?」
「炎と氷と雷と風。どれが好きかな?」
「は?」
「いや、君が好きなのは雷かな?雷撃を放っていたからね」
シャレク生徒会長は弓を構え、ぐんと弦を引いた。
といっても本来右手にあるはずの矢がない。と思ったのも束の間。
「〔雷弓〕」
バチバチバチィッ!と光を放つ魔法の矢が、右手に出現した。
弓につがえられた雷の矢は、真っ直ぐに俺へ向いている。
俺もやらなければ、と即座に御神札を構えて魔術の態勢に入る。
その刹那。
バチィィィッ!!
それは凄まじい速度で、俺の肩をかすめて通り過ぎた。
一瞬、何かわからなかった。
あれ?矢って、こんなに速かったか?
「うっ!」
肩がビリビリと痺れた。
雷の矢だからか。
これが直撃したらどうなる?
「君の魔法は、見ていたからわかっている」
肩を抑える俺に、シャレクが余裕の笑みを浮かべた。
「威力は申し分ない反面、発動が遅いということをね」
「俺に、魔法を撃たせないつもりか」
「正直、君の魔法はよくわからない。召喚魔法にも見えるが、おそらく違うだろう。それこそガブリエル先生は召喚魔術師だが、君のそれはあまりにも性質が異なりすぎる」
「だから、撃たせないのが最善策ってことか」
「通常、アルマを使用した魔術は、詠唱をしない。しかし、なぜか君はアルマを使って詠唱と思われるような行為を行なっている。そんな例は、今まで見たことがない。実に興味深い」
「興味深いなら、撃たせてくれてもいいんじゃないかな」
「本当は今の一撃で終わらせることもできたんだよ?わざと外したことぐらいわかるだろう?撃てるものなら撃ってみるといい」
シャレク生徒会長はにやりと笑い、再び弓を構えた。
この男。ただの偉そうな奴とは違う。
彼の自信は、確かな実力に裏打ちされたものだ。
わざと外したのも、傲慢さからではない。
純粋に俺の力を試しにきているんだ。
そのくせ、簡単には魔法を撃たせてくれない。
まるで師匠が弟子を指導するみたいだ。
マズイな。
完全に心理的優位に立たれてしまっている。
なんとかしないと。
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