八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気

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動乱編

ep111 奥の手(フェエル視点)

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「ミアちゃん。作戦がある」

「なにか思いついたんだね?」

「うん。その前に確認したいんだけど」

「なに?」

「ノエルくんの動きを止められれば、今の状態のミアちゃんでも風魔法を当てることはできる?」

「それはできると思うよ」

「わかった。じゃあぼくがノエルくんの動きを止めるから、ミアちゃんは思いっきり風魔法で攻撃して」

 ミアちゃんは一瞬目を丸くしてから、詳しい説明はいらないよ、という面持ちで頷いた。
 よし。あとはやるだけだ。
 この方法なら、必ずノエルくんの裏をかける!

「ノエルくん。決着をつけよう!」

 ぼくの言葉にノエルくんは不機嫌な顔になる。

「はあ?なにいきなりイキっちゃってんの?決着もなにも、君がいつぶっ倒れるかってだけだろ」

 完全にナメきっている。
 今からぼくが新たに何かしようなんて微塵も考えちゃいないと思う。
 つまり、今が最大のチャンス!

「は?」

 いきなり横方向へ走り出したぼくに、ノエルくんは首を傾げる。
 それはそうだろう。
 ノエルくんから見れば、ぼくがミアちゃんを置いて逃げ出したように見えるだろうから。

「まさか、女子を置いて逃げる気?」

 案の定、ノエルくんからそんな声が聞こえてきた時、ぼくは目前に迫った木に向かって剪定バサミを突き刺した。

「〔魔導成長促進マジックオーキシン〕」

 手元はそのままに振り向いて、ミアちゃんに視線を送った。
 何が起こるのか、ノエルくんだけじゃなくミアちゃんもわかっていない。
 でも、ミアちゃんは瞬時に理解し、パン切り包丁を構えた。

「なっ!?」

 ノエルくんが驚声を漏らした時、すでに事は起こっていた。
 突如として足元から飛び出てきた木の根っこに、ノエルくんの両足はがっちりと絡みつかれた。

「地面から根っこが伸びてきた!?オマエの魔法か!」

「ミアちゃん!」

「うん!〔一陣ヴェントゥスの風プロケッロースス〕」
 
「ま、待て!足が!くそおぉぉっ!!」

 ばんっ!と何か大きなものが勢いよくぶつかったような衝撃。
 ミアちゃんから放たれた突風の直撃を受けたノエルくんは、その場で仰向けに倒れた。
 ぼくの緑魔法で足を固められて吹っ飛べなかった分、ダメージはより大きかったみたいだ。

「やったね、ミアちゃん。タイミングバッチリだったよ」

「フェエルくんの魔法こそスゴイよ。まさかあんなことができるなんて。木の根っこを地中から伸ばしたんだね?」

「うん。側根を操ったんだ。自然の破壊に繋がりかねないから、外でやったら法律違反だけどね」

 ぼくとミアちゃんは自然と歩み合い、ハイタッチを交わした。
 お互いの目が言っている。
 特異クラスのぼくたちが、特別クラスのノエルくんに勝ったんだ......!
 そう勝利を噛み締めた時。
 ガサッと森の影から物音がした。
 何かな?と思ったけど、ぼくたちはすぐにわかった。
 ヤソみんもマッキンリーくんに勝って、エマちゃんたちを連れて戻ってきたんだ。
 ぼくとミアちゃんは微笑み合い、物音が鳴った方向へ振り向いた。 
 
「えっ??」

 ところがぼくたちの目に映ったものはヤソみんたちじゃなかった。
 というより、人間じゃなかった。
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