108 / 163
動乱編
ep108 地の利(フェエル視点)
しおりを挟む
ど、どうしよう。
ぼくの緑魔法がまったく通じない。
「フェエルくん!わたしが彼を止める!」
動揺するぼくを鼓舞するように、ミアちゃんがアルマを構えた。
「〔一陣の風〕」
パン切り包丁がびゅんと振り抜かれ、まさしく一陣の風が発生した。
突風がブワァァッとノエルくんを襲う。
「所詮は特異クラスか。レベルが低いな~」
すでに動き出していたノエルくんは横方向にダッと走ってかわした。
だけどそれはミアちゃんも想定済み。
即座に続けて同じ魔術を放った。
続け様に突風がノエルくんを襲う。
「直撃する!」と思った次の瞬間。
「!」
突風は木の幹に阻まれた。
実に簡単なこと。
ノエルくんは横方向に走りながら木の後ろ側に回り込んでいたんだ。
この時、ぼくはふと気づく。
「ミアちゃんの風魔法は......」
「森では不利かもしれない」
ミアちゃんも気づいていた。
そういえば、風による災害を防ぐため『防風林』というものが存在することを思い出した。
それは生い茂った木々がミアちゃんの風魔法の効果を半減させるであろうことを裏づける。
知能が高くない魔犬相手ならともかく、知恵のある人間相手に不利になるのは間違いない。
「しかも、それだけじゃない」
「フェエルくん?」
「ぼくたち、最初に不意打ちを喰らったよね?」
「ノエルくんからナイフ投げを......あっ」
ミアちゃんがぼくの言ったことの意味に気づいた時だった。
ボガァァァン!
木々の影からぼくたちの足元へ爆裂ナイフが放たれた。
ぼくとミアちゃんは反射的に後ろへ跳び退いていた。
「ミアちゃん!」
「わかってる!地の利が相手にあるって!」
などと言っているそばから、さっそく次の爆裂ナイフが飛んでくる。
ボガァァァン!
また足元を狙ってきたが、ぼくたちは跳び退いてかわした。
背後に木が迫ったが、次は横に移動すればいい。
彼は何がしたいのか。
まずはぼくたちの足を止めたいのだろうか。
足を止めた後、狙い撃ちにするのかもしれない。
「フェエルくん。どうする?このままじゃ...」
「マズイよね。二対一だから有利かな、と最初は思っていたけど、甘かったね......」
ぼくの緑魔法はノエルくんのナイフで防がれてしまうし、ミアちゃんの風魔法は森では力を充分発揮できない。
一方で、ノエルくんは木に隠れながら飛び道具を放てる。
この状況。
明らかに相手にとって有利だ。
「いや、でも......」
本当にそうだろうか。
当たり前すぎて気にしなかったけど、ノエルくんの投げナイフ攻撃は、ミアちゃんとは違う。
ノエルくんの場合、あくまでナイフそのものを投げて攻撃しているんだ。
何本持っているのかはわからないけど、数には限りがある。
つまり、この状態でぼくたちが攻撃を避け続ければ出て来ざるをえなくなる。
そうすれば必ず隙が生まれる。
その時は、数で勝るぼくたちの方が有利になるはず。
「ミアちゃん。なんとか避け続けながら隙をうかがおう。投げナイフには限りがあるから」
「そ、そうか。弾切れを待つってことだね」
「もちろん相手もわかっているはずだから、より確実に当てるように攻撃してくる。だから、これからしばらく、ぼくたちの魔法は防御のためだけに使おう」
「わかった。でも、最後の一本は投げては来ないよね」
「そうなるとノエルくんは近づいて来ざるをえなくなる。その時は一気に魔法を攻撃に転じるんだ。もちろんその前に出てくる可能性もあるけど、その時も同じように対応すればいい」
ミアちゃんと頷き合い、ノエルくんが潜むであろう木に向かって構えた。
ぼくの緑魔法がまったく通じない。
「フェエルくん!わたしが彼を止める!」
動揺するぼくを鼓舞するように、ミアちゃんがアルマを構えた。
「〔一陣の風〕」
パン切り包丁がびゅんと振り抜かれ、まさしく一陣の風が発生した。
突風がブワァァッとノエルくんを襲う。
「所詮は特異クラスか。レベルが低いな~」
すでに動き出していたノエルくんは横方向にダッと走ってかわした。
だけどそれはミアちゃんも想定済み。
即座に続けて同じ魔術を放った。
続け様に突風がノエルくんを襲う。
「直撃する!」と思った次の瞬間。
「!」
突風は木の幹に阻まれた。
実に簡単なこと。
ノエルくんは横方向に走りながら木の後ろ側に回り込んでいたんだ。
この時、ぼくはふと気づく。
「ミアちゃんの風魔法は......」
「森では不利かもしれない」
ミアちゃんも気づいていた。
そういえば、風による災害を防ぐため『防風林』というものが存在することを思い出した。
それは生い茂った木々がミアちゃんの風魔法の効果を半減させるであろうことを裏づける。
知能が高くない魔犬相手ならともかく、知恵のある人間相手に不利になるのは間違いない。
「しかも、それだけじゃない」
「フェエルくん?」
「ぼくたち、最初に不意打ちを喰らったよね?」
「ノエルくんからナイフ投げを......あっ」
ミアちゃんがぼくの言ったことの意味に気づいた時だった。
ボガァァァン!
木々の影からぼくたちの足元へ爆裂ナイフが放たれた。
ぼくとミアちゃんは反射的に後ろへ跳び退いていた。
「ミアちゃん!」
「わかってる!地の利が相手にあるって!」
などと言っているそばから、さっそく次の爆裂ナイフが飛んでくる。
ボガァァァン!
また足元を狙ってきたが、ぼくたちは跳び退いてかわした。
背後に木が迫ったが、次は横に移動すればいい。
彼は何がしたいのか。
まずはぼくたちの足を止めたいのだろうか。
足を止めた後、狙い撃ちにするのかもしれない。
「フェエルくん。どうする?このままじゃ...」
「マズイよね。二対一だから有利かな、と最初は思っていたけど、甘かったね......」
ぼくの緑魔法はノエルくんのナイフで防がれてしまうし、ミアちゃんの風魔法は森では力を充分発揮できない。
一方で、ノエルくんは木に隠れながら飛び道具を放てる。
この状況。
明らかに相手にとって有利だ。
「いや、でも......」
本当にそうだろうか。
当たり前すぎて気にしなかったけど、ノエルくんの投げナイフ攻撃は、ミアちゃんとは違う。
ノエルくんの場合、あくまでナイフそのものを投げて攻撃しているんだ。
何本持っているのかはわからないけど、数には限りがある。
つまり、この状態でぼくたちが攻撃を避け続ければ出て来ざるをえなくなる。
そうすれば必ず隙が生まれる。
その時は、数で勝るぼくたちの方が有利になるはず。
「ミアちゃん。なんとか避け続けながら隙をうかがおう。投げナイフには限りがあるから」
「そ、そうか。弾切れを待つってことだね」
「もちろん相手もわかっているはずだから、より確実に当てるように攻撃してくる。だから、これからしばらく、ぼくたちの魔法は防御のためだけに使おう」
「わかった。でも、最後の一本は投げては来ないよね」
「そうなるとノエルくんは近づいて来ざるをえなくなる。その時は一気に魔法を攻撃に転じるんだ。もちろんその前に出てくる可能性もあるけど、その時も同じように対応すればいい」
ミアちゃんと頷き合い、ノエルくんが潜むであろう木に向かって構えた。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!
根上真気
ファンタジー
これは、元やり手営業部長の青年が、その営業力を駆使し、転移した異世界で起業して成功する物語。しかしその道のりは困難の連続だった!彼の仲間は落ちぶれた魔導博士と魔力量だけが取り柄のD級魔導師の娘。彼らと共に、一体どうやって事業を成功させるのか?彼らの敵とは何なのか?今ここに、異世界に降り立った日本人青年の、世紀の実業ファンタジーが幕を開ける!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚
ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。
しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。
なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!
このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。
なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。
自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!
本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。
しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。
本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。
本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。
思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!
ざまぁフラグなんて知りません!
これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。
・本来の主人公は荷物持ち
・主人公は追放する側の勇者に転生
・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です
・パーティー追放ものの逆側の話
※カクヨム、ハーメルンにて掲載
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる