上 下
96 / 163
動乱編

ep96 チームヤソガミ

しおりを挟む
「や、ヤソガミ氏。自分は別にいいって言ったじゃないか……」

 嫌がるライマスを無理矢理引っぱって森を進む俺たち。

「じゃあお前ひとりでなんとかなるのか?成績ヤバいんじゃないのか?」

「そ、それは......」

「だったら俺たちと組むのはお前にとっても最善の策だろ?」

「そーだそーだ。お前も素直になってチームヤソガミに入れし」

「チームヤソガミ?」

「あーしが考えたんだ」

 エマはえっへんとなる。

「わかりやすくていーだろ?」

「いいね。チームヤソガミ。ぼくも賛成だよ」

「わたしもいいと思う」

 フェエルとミアも賛同した。
 かくしてここに『チームヤソガミ』が結成される。
 
「チームヤソガミか。良いではないか」

 頭上のイナバも笑いながら賛意を示す。

「仕方ない。特別顧問はオイラが担当してやろう」

「やっぱりリーダーは、俺なんだよな...」

「決まっておるじゃろ。立場が人を作るとも言う。たかが友人同士のグループと言えばそれまでじゃが、これも成長の良い機会かもしれん」

 なんとなく物怖じする俺に、フェエルもエマもミアも、期待の眼差しを向けてくる。
 かつてぼっちだった俺が、みんなのリーダー。
 本当にいいのだろうか。

「シャキッとせい!」

「いてっ!」

 頭上のイナバからおでこをペシッと叩かれた。

「いきなりなんだよ」

「わからんのか?お主がいたからこそ、お主が行動したからこそできたものなんじゃぞ?チームヤソガミとやらは」

「俺はあくまできっかけってだけで...」

「ふん。鈍い奴じゃな。気づかんのか?はからずも目的の達成に進んでいるのを」

「目的の達成?なんの話だ?」

「お主は魔法学園に何のために来たんじゃ?いや、何のためにオリエンスに来たのじゃ?」

 一瞬思考が巡り...はたとした。
 この世界に来たばかりの頃、イナバに言われた言葉が頭の中で蘇る。

''お主はいずれオリエンスを救うべく共に闘う仲間を探さなければならぬ''

 学園生活でいっぱいいっぱいで完全に忘れていた。
 正直、今更感すらある。
 そもそも本当にオリエンスに危機が訪れるのか?
 危機が訪れたとして、先頭きって闘うのが俺なのか?
 万が一俺だとして、一緒に闘う仲間がフェエルたち?

「ま、今は深く考えんでもよい。まずはこの魔術演習とやらに集中せい」

 いやあんたが考えさせたんだろ、と言いたかったが言葉を飲み込んだ。

「とにかく」

 俺は仕切り直す。

「ライマスも俺たちと一緒に来い」

 ライマスも加えて五人となったチームヤソガミは、森を進んでいく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!

根上真気
ファンタジー
これは、元やり手営業部長の青年が、その営業力を駆使し、転移した異世界で起業して成功する物語。しかしその道のりは困難の連続だった!彼の仲間は落ちぶれた魔導博士と魔力量だけが取り柄のD級魔導師の娘。彼らと共に、一体どうやって事業を成功させるのか?彼らの敵とは何なのか?今ここに、異世界に降り立った日本人青年の、世紀の実業ファンタジーが幕を開ける!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。

町島航太
ファンタジー
 かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。  しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。  失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。  だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...