八十神天従は魔法学園の異端児～神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

動乱編

ep95 開始

「それでは始める！」

　ガブリエル先生が開始のコールをした。
　特異クラスと特別クラス、それぞれの生徒たちが次々とまばらに森へ入っていく。
　軽快な足取りで進んでいく特別クラスの生徒たちに対し、特異クラスの生徒たちの足取りは心なしか重く見える。
　やがて入口付近には俺たちと他数名の生徒たちだけが残った。

「なんだよテメーら？ビビって中に入れねーのか？」

　ランラが俺たちへ向かって歩いてきた。

「べつに大した内容じゃねーのにな」

「だったら貴女たちもさっさと行けば？」

　俺の後ろから誰かが冷たく言い放った。
　ジークレフ学級委員長だ。
　案の定、ランラの眉がぴくっとなる間際、妹のリンリが姉の腕を掴む。

「姉さん。そんな女はもう放っておきましょう」

　ランラはチッと舌打ちしてから、森へ向かって歩いていった。
　リンリも彼女に続いて進んでいく。
　その後を追うように、シャレクがゆっくりと歩き出しながら俺たちへ一瞥をくれる。

「まっ、お互い頑張ろう」

　彼らの姿が森の中へと消えていく。
　これで特別クラスの生徒は一人を残して誰もいなくなった。

「じゃ、ぼくらも行こうか」

　面白そうに俺たちの様子を眺めていたセリクが、ジークレフ学級委員長に声をかけた。
　この二人がコンビを組むのか？と思ったが違う。
　彼女はふんっとつれない態度でさっさと歩いていってしまった。

「あーあ、フラれちゃったね。今日の彼女はちょっと面白そうだったのに」

　セリクは、あはははと相変わらず何を考えているかわからない笑顔を浮かべる。

「ボクとしては、またヤソガミくんが派手にやらかしてくれることを願うよ」

「俺だってやらかさないで済むならやらかしたくない」

「そこがヤソガミくんの面白いところだよ」

「は？」

「じゃ、ガンバってねー」

　バイバーイと手を振りながら去っていくセリク。
　頑張ってねって、自分は頑張らないのか？
　余裕すぎて頑張るまでもないとか？
　シャレクやレイ姉妹の実力の実態はまだわからないけど、ある意味で一番底が知れないのはセリクのような気がする。
　悪いヤツではないことはわかっているが。

「ねえヤソガミくん！ライマスくんが行っちゃうよ？」

　ミアに言われてハッとする。
　ライマスがひとりトボトボと森に向かって歩き出している。

「あいつ。マジで俺たちのことシカトする気か」

　俺たちは駆け出した。