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動乱編

ep94 協力

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「小僧!」

 戻って来た。
 ひと足先に、イナバに森の中をロケハンしてきてもらったんだ。

「神使の白兎のオイラにこんなことをさせおって!」

 森を駆け抜けてきた白兎が俺のもとにぴょーんと戻ってきた。

「まったく疲れたわい!」

 イナバは俺の頭に飛び乗ってぐてんとなった。
 
「おい!そのウサギはテメーの使い魔だろ!授業前にズルしてんじゃねえ!」

 すかさず特別クラスの方からランラの抗議が入る。

「先生!あれはイイんすか!?」

「いいよランラ。あれぐらい許してやろう」

 シャレクが怒るランラをまあまあと落ち着かせる。

「どのみち結果は変わらないだろうからね」
 
 当のガブリエル先生はというと、これといった反応は示さなかった。
 ハウ先生は絶対なにも言ってこないだろうから、これで黙認されたことになる。

「なにも言われなくて良かったね。ヤソミん」

 フェエルがほっとして微笑んだ。

「ヤソガミって、結構そういうところあるよな。抜け目ないっていうか」
「それもヤソガミくんの良さというか強みだよね」

 エマとミアもにっと笑みを浮かべた。
 そこへいきなり冷たい声が割り込んくる。

「ずいぶんと気楽なものね。貴方たち、ちゃんと先生の話を聞いていたの?」

 ジークレフ学級委員長だ。
 こういうふうに彼女が俺たちへ口出ししてくるのは意外と珍しい。

「特にヤソガミくん。貴方、完全に目をつけられているのよ?生徒会長はもちろん、ランラとリンリのレイ姉妹も相当な実力よ?特別クラスのそれ以外の生徒だって侮れない。貴方わかってる?」

「なんか珍しいな。学級委員長が俺のこと心配してくれてるんすか」

 ジークレフ学級委員長の目がサーッと冷ややかなものになる。

「フザケないで。学級委員長として、一応忠告はしたから」

 彼女はプイッときびすを返して離れていった。

「なんなんだ?」

「ユイちゃん......ジークレフさんなりの気遣いじゃないかな」

 フェエルはどこか物思わしげな表情を滲ませている。
 そういえばジークレフさんとフェエルは昔、仲良かったんだよな。
 でもこれはあまり触れちゃいけないんだった。
 
「ヤソミん?」
 
「いや、なんでもないよ」

「ねえねえヤソガミ」

 やにわにエマが俺の腕を掴んできた。

「協力しよーよ?あーしの魔法だけじゃ、あんなの捕まえらんないよ」

「たしかに今回の内容だとエマは不利だよな」

「だろ?ミャーミャーもフェエルも協力してさ?ほら、この前も話してたじゃん?授業でもみんなで協力できたらいいなって」

「わたしも賛成するよ。それに国家魔術師の現場でもチームプレイが必須になる場面はよくあるって聞くし」

「ぼくは最初からそのつもりだよ。みんなで一緒に頑張りたい」

 三人揃ってこちらを見てくる。
 俺に断る理由はない。
 ただ、それなら足りないピースがひとつある。
 
「俺もチームプレイに賛成だ。けど、ひとり足りないよな」

「足りない?だれが?」

 三人とも首を傾げるが、すぐにあっと気づく。
 
「始まったら、まずはあいつのとこに行くぞ」

 俺の言葉にみんなが頷いた。
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