90 / 134
動乱編
ep90 特別クラス②
しおりを挟む
「とりあえず今日の魔術演習がんばろ...」
言い切る前に言葉が止まる。
ふと俺の視界に、知らない二人の背の低い女子が、スッと入ってきたからだ。
「コイツが特待生のヤソガミってヤツか」
「セリク・クレイトンならまだしも、なんでシャレク様がこのような者のことを気にしているんだか......」
いかにも高慢で高圧的な口調の女子と、物静かな雰囲気の女子。
瓜二つの顔。
双子なのか?
ひとりはツインテールの女子。
釣り上がった好戦的な目には、燃えるような闘志を感じる。
もうひとりは編み込みの入ったボブの女子。
落ち着いたクールな目には、鋭利な冷たさを感じる。
「このコたちは...」
エマが彼女たちのことを知っていた。
「ランラ・レイとリンリ・レイ。シャレク・タウゼンに次ぐ実力を備えていると言われているレイ姉妹だよ。しかも、このコたちも生徒会だよ」
「双子なのか?」
エマに訊いたつもりだったが、本人たちが一歩前に出てくる。
「双子だ。悪いか」
「こちらツインテールの方は姉のランラ。わたくしは妹のリンリです」
物静かな雰囲気の妹リンリのほうが自己紹介をしてきた。
「俺は八十神天従です」
挨拶を返すが、ランラもリンリも表情ひとつ変えない。
刺すような眼差しを向けてくるランラに至っては敵意すら感じる。
「パッとしねーな。ホントにコイツがジェットレディにスカウトされた特待生なのか?」
案の定、ランラが見下すように吐き捨ててきた。
「マヌケそーなツラしてっけど」
「ちょっと姉さん。そういうことは本人に聞こえないように言わないと」
リンリが悪態をつく姉を諌めた。
姉はアレだが妹はちゃんとしているのか......て違うだろ。
「本人に聞こえないように」を、本人に聞こえるように言ってどうするんだ。
「あ、あの、今日はよろしくお願いします」
不信感を募らせる俺を助けるようにフェエルが割って入ってきた。
「特別クラスと一緒に授業を受けられて光栄です」
「わ、わたしも、特別クラスのみんなと一緒に魔術演習なんて、嬉しいです」
フェエルに続いてミアも入ってきた。
ふたりとも大人だ。
授業内容はまだ知らないけど、ここで敵対したってしょうがない。
ここは俺も、無理矢理にでも感じ良く済ませておいたほうが無難だ、と思ったのも束の間。
「はあ?お前ら誰だよ?名もなき劣等生にそんなこと言われたってなんとも思わないわ」
ランラは蔑むような目つきでフェエルとミアを冷たく見下した。
それでも優しいふたりは大人な対応をしようとする。
俺はカチンときた。
自分に言われた以上に。
「おい」と、俺が声を上げる間際。
「もういいでしょ?こっちはこっちで勝手にやるから」
普段とは違う口調のエマが、俺たちを退がらせるように前に出てきた。
「さあ、そろそろ授業も始まるし」
「ん?お前......フィッツジェラルドバンクの娘だろ?」
ランラがエマを見て言った。
「今日ここにいるってことは、特異落ちしたってのは本当だったのか」
エマはなにも言い返さず、ただ俺たちを退がらせようとする。
「いさぎよく学校辞めりゃいいのに。しがみつきやがって」
ランラはエマを痛ぶるように続ける。
「お前なんかさっさと辞めちまったほうが学園側も助かるだろ。フィッツジェラルドバンクが学園に寄付してる手前、学園側から退学させることはしづらいだろうからな。自分でもわかってんだろ?お前才能無いんだからさ。あんなので受かったのが奇跡だろ」
言い切る前に言葉が止まる。
ふと俺の視界に、知らない二人の背の低い女子が、スッと入ってきたからだ。
「コイツが特待生のヤソガミってヤツか」
「セリク・クレイトンならまだしも、なんでシャレク様がこのような者のことを気にしているんだか......」
いかにも高慢で高圧的な口調の女子と、物静かな雰囲気の女子。
瓜二つの顔。
双子なのか?
ひとりはツインテールの女子。
釣り上がった好戦的な目には、燃えるような闘志を感じる。
もうひとりは編み込みの入ったボブの女子。
落ち着いたクールな目には、鋭利な冷たさを感じる。
「このコたちは...」
エマが彼女たちのことを知っていた。
「ランラ・レイとリンリ・レイ。シャレク・タウゼンに次ぐ実力を備えていると言われているレイ姉妹だよ。しかも、このコたちも生徒会だよ」
「双子なのか?」
エマに訊いたつもりだったが、本人たちが一歩前に出てくる。
「双子だ。悪いか」
「こちらツインテールの方は姉のランラ。わたくしは妹のリンリです」
物静かな雰囲気の妹リンリのほうが自己紹介をしてきた。
「俺は八十神天従です」
挨拶を返すが、ランラもリンリも表情ひとつ変えない。
刺すような眼差しを向けてくるランラに至っては敵意すら感じる。
「パッとしねーな。ホントにコイツがジェットレディにスカウトされた特待生なのか?」
案の定、ランラが見下すように吐き捨ててきた。
「マヌケそーなツラしてっけど」
「ちょっと姉さん。そういうことは本人に聞こえないように言わないと」
リンリが悪態をつく姉を諌めた。
姉はアレだが妹はちゃんとしているのか......て違うだろ。
「本人に聞こえないように」を、本人に聞こえるように言ってどうするんだ。
「あ、あの、今日はよろしくお願いします」
不信感を募らせる俺を助けるようにフェエルが割って入ってきた。
「特別クラスと一緒に授業を受けられて光栄です」
「わ、わたしも、特別クラスのみんなと一緒に魔術演習なんて、嬉しいです」
フェエルに続いてミアも入ってきた。
ふたりとも大人だ。
授業内容はまだ知らないけど、ここで敵対したってしょうがない。
ここは俺も、無理矢理にでも感じ良く済ませておいたほうが無難だ、と思ったのも束の間。
「はあ?お前ら誰だよ?名もなき劣等生にそんなこと言われたってなんとも思わないわ」
ランラは蔑むような目つきでフェエルとミアを冷たく見下した。
それでも優しいふたりは大人な対応をしようとする。
俺はカチンときた。
自分に言われた以上に。
「おい」と、俺が声を上げる間際。
「もういいでしょ?こっちはこっちで勝手にやるから」
普段とは違う口調のエマが、俺たちを退がらせるように前に出てきた。
「さあ、そろそろ授業も始まるし」
「ん?お前......フィッツジェラルドバンクの娘だろ?」
ランラがエマを見て言った。
「今日ここにいるってことは、特異落ちしたってのは本当だったのか」
エマはなにも言い返さず、ただ俺たちを退がらせようとする。
「いさぎよく学校辞めりゃいいのに。しがみつきやがって」
ランラはエマを痛ぶるように続ける。
「お前なんかさっさと辞めちまったほうが学園側も助かるだろ。フィッツジェラルドバンクが学園に寄付してる手前、学園側から退学させることはしづらいだろうからな。自分でもわかってんだろ?お前才能無いんだからさ。あんなので受かったのが奇跡だろ」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢・お助けキャラ・隠しヒロインって、役割過多だと思います。
章槻雅希
ファンタジー
皇国の重鎮セーヴェル公爵令嬢アレクサンドラは学院の卒業記念舞踏会で突然第9皇子から婚約破棄を告げられる。皇子の傍らには見知らぬ少女が寄り添ってこちらを嘲笑うかのような表情で見ていた。
しかし、皇子とは初対面。アレクサンドラには婚約者などいない。いったいこの皇子は何をどう勘違いしているのか。
テンプレな乙女ゲームに転生したアレクサンドラ。どうやらヒロインも転生者らしい。でも、どうやらヒロインは隠しルートには到達できなかったようだ。
だって、出来ていれば断罪イベントなんて起こすはずがないのだから。
今更ながらに悪役令嬢ものにハマり、衝動の余り書き上げたものです。テンプレ設定にテンプレな流れ。n番煎じもいいところな、恐らくどこかで見たような流れになっていると思います。
以前なろうに投稿していたものの修正版。
全8話。『小説家になろう』『Pixiv(別名義)』にも投稿。
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
オフィスにラブは落ちてねぇ!! 2
櫻井音衣
恋愛
会社は賃金を得るために
労働する場所であって、
異性との出会いや恋愛を求めて
来る場所ではない。
そこにあるのは
仕事としがらみと
お節介な優しい人たちとの
ちょっと面倒な人間関係だけだ。
『オフィスにはラブなんて落ちていない』
それが持論。
ある保険会社の支部内勤事務員で
社内では評判の
“明るく優しく仕事の速い内勤さん”
菅谷 愛美 、もうすぐ27歳、独身。
過去のつらい恋愛経験で心が荒み、
顔で笑っていつも心で毒を吐く。
好みのタイプは
真面目で優しくて性格の穏やかな
草食系眼鏡男子。
とにかく俺様男は大嫌い!!
……だったはず。
社内でも評判の長身イケメンエリートで
仏頂面で無茶な仕事を押し付ける
無愛想な俺様支部長
緒川 政弘、33歳、独身。
実は偽装俺様の彼は仕事を離れると
従順な人懐こい大型犬のように可愛く、
とびきり甘くて優しい愛美の恋人。
愛美と“政弘さん”が付き合い始めて4か月。
仕事で忙しい“政弘さん”に
無理をさせたくない愛美と
愛美にもっとわがままを言って
甘えて欲しい“政弘さん”は
お互いを気遣い遠慮して
言いたい事がなかなか言えない。
そんなある日、
二人の関係を揺るがす人物が現れて……。
見習い陰陽師の高校生活
風間義介
ファンタジー
二十一世紀、『科学万能』が謳われる時代。
現役高校生である土御門護は、非科学的として存在を否定される妖怪や怨霊に立ち向かう術を持つ、見習い陰陽師である。
二年生への進級を控えた春休みに、幼馴染の風森月美に夢で誘われた護は、出雲へとむかう。
「神の国」と呼ばれたかの地で、護は自分の信条を曲げて立ち向かわなければならない事件に遭遇する。
果たして、その事件の全貌と黒幕の目的は?護は無事に事件を解決できるのか?!
※表紙絵作者 もけもけこけこ様
※「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアップ+」にも掲載しております
※「カクヨム」にて『第2回ファミ通文庫大賞』最終選考対象作品となりました!
ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります
ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。
今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。
追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。
ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。
恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる