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過去と今
ep77 集客アップ魔法大作戦
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*
「ミア」「ミアちゃん」「ミャーミャー」
翌朝。教室に着くなり、三人がわたしを待ち構えていた。
即座に嫌な気分になる。
昨日話したこと、フェエルくんはふたりにも話しちゃったの?
「ねえフェエルくん」
「ぼくがヤソみんとエマちゃんに話したのは、ミアちゃんちのお店のお客さんが減っているってことだけだよ」
「そ、そっか(それはエマちゃんなら知っていると思うけど...)」
「それでね?ヤソみんから話があるんだ」
おもむろにヤソガミくんが鞄からスケッチブックを取り出して、じゃーんと開いて見せる。
「ミア。見てくれ」
言われるがまま見てみる。
こう書いてある。
「キャットレーパン工房ねこパンち!......集客アップ魔法大作戦!?」
「ねえヤソガミ。やっぱタイトルださいし」
エマちゃんがツッコんできた。
「大作戦てなんだよ。マジでさむいわ」
「た、タイトルなんてどうでもいいだろ?大事なのは内容だ」
ヤソガミくんはやや恥ずかしそうにコホンと咳払いをする。
「と、とにかく!ミア!」
「は、はい」
「キャットレーパン工房ねこパンち!を......立て直すぞ!」
*
休日。
朝早くから、フェエルくんとエマちゃんがうちのお店にやってきた。
「おはようミアちゃん」
「ミャーミャーおはよー」
「おはよう。あれ?ヤソガミくんは?」
わたしが訊ねたら、途端にエマちゃんがそわそわしだした。
ヤソガミくんが助っ人を連れてくることは聞いている。
さらに秘策があるとかで、詳しくは当日のお楽しみ、ということだったけど......。
「あっ、来たみたいだよ」
いち早くフェエルくんが気づいた先に、ふたりの姿が見えた。
男子がひとり、女子がひとり。
「ヤソミちゃん?」
なせがヤソガミくんは、女の子バージョンのヤソミちゃんとなっている。
「お、おはよう......」
店に入ってきたヤソミちゃんは、やや憂鬱そうだった。
「確かにこのほうが、より効果的な動きができるだろうけどさ。またこの姿かぁ......」
「何が不満だ!?カワイイは正義だろう!?」
ヤソミちゃんの後ろから知らない男子が声を上げた。
長髪に眼鏡をかけた、小太りの、もっさりとした男子。
「いっそのことヤソガミ氏は永久にそのままでいいと思うぞ!」
「いいわけあるか!」
ヤソミちゃんが男子に蹴りを入れた。
「な、何をする!余は助っ人であるぞ!」
「こ、この人だれ?」
わたしが若干引いていると、エマちゃんも似たようなリアクションをしていた。
「あーしも知らね。こんなキモヲタ」
「だ、誰がキモヲタだ!ファッションとグルメと恋愛ぐらいにしか興味ないような薄っぺらいギャルには余のことを理解できん!」
「はあ?誰もテメーなんか理解したかねーし!キモッ」
「ヤソガミ氏!このモンスターをなんとかしてくれ!」
「誰がモンスターだ!イイ加減にしねーとシメっぞ!」
「ひ、ひぃぃ!」
「まあまあエマちゃん落ち着いて」
フェエルくんがふたりの間に入る。
ヤソミちゃんは申し訳なさそうに苦笑した。
「騒がしくしちゃって悪いな。こいつはあたしのルームメイトのライマス・ループレイクだ」
「ヤソガミくんの言っていた助っ人って、この人だったんだね」
「ライマスは絵が得意なんだ。その腕を見込んで良いものを作ってもらったんだよ」
ヤソミちゃんは持っていた袋を置き、中から大量の紙の束を出した。
なにかな?と思って見たら、可愛いイラストの描かれたチラシだった。
「なるほど。それがお店のチラシになるんだね」
「ああ。今日はこいつをガッツリ配ってやるぞ」
確かにこれだけのチラシをみんなで配れれば、お客さんは増えると思う。
でも、チラシ配りはライバル店もやっている。
助けてもらって言うのはおかしいけど、いざこうして見てみると、一時しのぎにしかならないように思えてきた。
「ミア。もちろんこれだけじゃないぞ」
わたしの心を察したようにヤソミちゃんが言った。
「店のポップもライマスが描いてくれるぞ」
「そ、そうなんだ」
「ミア。期待外れって顔をしてるな」
「そ、そそそんなことないよ!」
「大丈夫。本当のとっておきはここからだ」
ヤソミちゃんがにやりとして、入口に目をやった。
つられてわたしもそちらへ視線を運んだ時、ちょうど扉が開く。
「えっ??」
固まってしまった。
それからわたしは思わずエマちゃんを見た。
エマちゃんは、わたしとは違う意味でガッチガチに固まっていた。
「よっ!後輩たち!」
なんと、うちのお店へ、あの人が颯爽と入ってきたんだ。
会うのは二度目だけど、やっぱり感動する。
「ジェットレディ!!」
「ミア」「ミアちゃん」「ミャーミャー」
翌朝。教室に着くなり、三人がわたしを待ち構えていた。
即座に嫌な気分になる。
昨日話したこと、フェエルくんはふたりにも話しちゃったの?
「ねえフェエルくん」
「ぼくがヤソみんとエマちゃんに話したのは、ミアちゃんちのお店のお客さんが減っているってことだけだよ」
「そ、そっか(それはエマちゃんなら知っていると思うけど...)」
「それでね?ヤソみんから話があるんだ」
おもむろにヤソガミくんが鞄からスケッチブックを取り出して、じゃーんと開いて見せる。
「ミア。見てくれ」
言われるがまま見てみる。
こう書いてある。
「キャットレーパン工房ねこパンち!......集客アップ魔法大作戦!?」
「ねえヤソガミ。やっぱタイトルださいし」
エマちゃんがツッコんできた。
「大作戦てなんだよ。マジでさむいわ」
「た、タイトルなんてどうでもいいだろ?大事なのは内容だ」
ヤソガミくんはやや恥ずかしそうにコホンと咳払いをする。
「と、とにかく!ミア!」
「は、はい」
「キャットレーパン工房ねこパンち!を......立て直すぞ!」
*
休日。
朝早くから、フェエルくんとエマちゃんがうちのお店にやってきた。
「おはようミアちゃん」
「ミャーミャーおはよー」
「おはよう。あれ?ヤソガミくんは?」
わたしが訊ねたら、途端にエマちゃんがそわそわしだした。
ヤソガミくんが助っ人を連れてくることは聞いている。
さらに秘策があるとかで、詳しくは当日のお楽しみ、ということだったけど......。
「あっ、来たみたいだよ」
いち早くフェエルくんが気づいた先に、ふたりの姿が見えた。
男子がひとり、女子がひとり。
「ヤソミちゃん?」
なせがヤソガミくんは、女の子バージョンのヤソミちゃんとなっている。
「お、おはよう......」
店に入ってきたヤソミちゃんは、やや憂鬱そうだった。
「確かにこのほうが、より効果的な動きができるだろうけどさ。またこの姿かぁ......」
「何が不満だ!?カワイイは正義だろう!?」
ヤソミちゃんの後ろから知らない男子が声を上げた。
長髪に眼鏡をかけた、小太りの、もっさりとした男子。
「いっそのことヤソガミ氏は永久にそのままでいいと思うぞ!」
「いいわけあるか!」
ヤソミちゃんが男子に蹴りを入れた。
「な、何をする!余は助っ人であるぞ!」
「こ、この人だれ?」
わたしが若干引いていると、エマちゃんも似たようなリアクションをしていた。
「あーしも知らね。こんなキモヲタ」
「だ、誰がキモヲタだ!ファッションとグルメと恋愛ぐらいにしか興味ないような薄っぺらいギャルには余のことを理解できん!」
「はあ?誰もテメーなんか理解したかねーし!キモッ」
「ヤソガミ氏!このモンスターをなんとかしてくれ!」
「誰がモンスターだ!イイ加減にしねーとシメっぞ!」
「ひ、ひぃぃ!」
「まあまあエマちゃん落ち着いて」
フェエルくんがふたりの間に入る。
ヤソミちゃんは申し訳なさそうに苦笑した。
「騒がしくしちゃって悪いな。こいつはあたしのルームメイトのライマス・ループレイクだ」
「ヤソガミくんの言っていた助っ人って、この人だったんだね」
「ライマスは絵が得意なんだ。その腕を見込んで良いものを作ってもらったんだよ」
ヤソミちゃんは持っていた袋を置き、中から大量の紙の束を出した。
なにかな?と思って見たら、可愛いイラストの描かれたチラシだった。
「なるほど。それがお店のチラシになるんだね」
「ああ。今日はこいつをガッツリ配ってやるぞ」
確かにこれだけのチラシをみんなで配れれば、お客さんは増えると思う。
でも、チラシ配りはライバル店もやっている。
助けてもらって言うのはおかしいけど、いざこうして見てみると、一時しのぎにしかならないように思えてきた。
「ミア。もちろんこれだけじゃないぞ」
わたしの心を察したようにヤソミちゃんが言った。
「店のポップもライマスが描いてくれるぞ」
「そ、そうなんだ」
「ミア。期待外れって顔をしてるな」
「そ、そそそんなことないよ!」
「大丈夫。本当のとっておきはここからだ」
ヤソミちゃんがにやりとして、入口に目をやった。
つられてわたしもそちらへ視線を運んだ時、ちょうど扉が開く。
「えっ??」
固まってしまった。
それからわたしは思わずエマちゃんを見た。
エマちゃんは、わたしとは違う意味でガッチガチに固まっていた。
「よっ!後輩たち!」
なんと、うちのお店へ、あの人が颯爽と入ってきたんだ。
会うのは二度目だけど、やっぱり感動する。
「ジェットレディ!!」
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