74 / 134
過去と今
ep73 狂乱の破壊姫
しおりを挟む
*
翌朝。
とある場所で、俺はフェエルと待ち合わせていた。
「ヤソみんおはよう~。て、えええ??」
俺と顔を合わすなりフェエルが驚いたのには理由がある。
「な、なななんでヤソミちゃんなの!?」
「ヤソミの正体を知っているのは先生以外、フェエルとエマとミアだけだろ?」
「そうだけど」
「ま、細かいことは気にするな」
「ぜんぜん細かくないけど!?」
さて、朝から俺たちは一体なにをしているのか?
「マジでなんなんだよ」
「しかもなんでヤソミ......」
今、俺たちは四人で登校している。
メンバーは俺(ヤソミ)、フェエル、ミア、エマの四人。
今朝、俺はフェエルを連れてエマとミアを家まで迎えにいった。
エマとミアのふたりはわけがわからないといった様子。
「つーか、昨日あーしは学校辞めるっつったばっかだぞ?」
「それは先生が保留するって言ってただろ」
「そうだけど!」
「こうでもしないとエマは学校に来なそうだったからな」
「ならミャーミャーもいるのはなんでだよ?」
「こうでもしないと二人とも顔合わせづらそうだったからな」
途端にエマは押し黙った。
するとミアがおもむろにエマの前に躍り出る。
「エマちゃん!」
「な、なんだよ」
「わたしのこと、守ろうとしてくれて、ありがとう!」
「昨日のことか。べつにいいよ」
「でも!ちゃんと言いたくて!」
「だからもういいよ。これでチャラになったとも思ってねーし」
ふたりはしばらく見つめ合い、どちらともなく顔を綻ばせた。
これも行動が生んだ結果だろうか。
「ちょっと急ごうか。このままじゃ遅刻になるかも」
足を早めた。
学校に着くと、まわりの生徒たちから、まるで奇異なものでも見るような視線が俺たちへ集まる。
「おい、なんかスッゲー見られてんぞ」
「そ、そうだね」
「ねえヤソミん...じゃなくヤソミちゃん。大丈夫なの?」
不安をあらわにするエマとミアとフェエルをよそに、ヤソミとなった俺はズイッと一歩前に出た。
「あたしは特異クラスの破壊姫、ヤソミだ!」
最高に鋭い声で吠えた。
破壊姫の...オンステージ開幕だ!
「そして後ろにいるのは、あたしの子分どもだ!」
今、後ろの三人はどんな顔をしているだろう。
呆れて物も言えないか?
しかし俺は止まらない。
「最近、あたしの子分のふたりの生娘が、ろくにオトコも知らないくせに妙な騒ぎを起こしていたみたいだが、真のビッチ女王はあたしだからな!」
決まった。
と思いこんで続ける。
「あたしは女王だからな!あたしを差し置いて子分が噂されているのは気に入らない!だから今後、そんな噂を口にしているヤツがいたら......」
俺はヤソミの脚力を最大限活かし、天高く飛び上がった。
そこらの生徒全員が、ぽかーんと俺を見上げている。
「よし!」
そのまま俺は彗星のように、敷地内に建てられた立派なモニュメントめがけてぎゅーんと急降下する。
ドガァァァン!!
破壊姫ヤソミの彗星落下キック。
まるでミサイルでも撃ち込んだかの如く、物の見事にモニュメントを破壊した。
「こうなるからな!覚悟するんだな!」
決まった。
我ながら最高の傍若無人ぶりを演出。
シンプルに危なさを見せつけられたと思う。
こういうのは、単純な肉体による暴力が説得力を生むんだ。
「おい!今の音はなんだ!」
数人の先生たちがあわてて校舎から飛び出してきた。
「なっ!モニュメントが!?」
驚く先生たちを尻目に、俺は三人に向かってドヤ顔を決める。
「どう?」
ところが、フェエルもエマもミアも、期待とは異なるリアクションを見せた。
「な、な、ななななにをやってんだぁぁぁ!!」
この後。
俺は職員室に呼び出され、先生たちにこっぴどく叱られた。
特に、ガブリエル先生には完全に目をつけられたようだ。
「お前の素行は目に余る!」
何らかの厳罰処分が下される!
と思った。が、俺に下されたのは......
「一週間、モニュメントを綺麗に掃除すること」
魔法科の先生による魔術で元通りになったモニュメントを、一週間の間、毎日ピカピカにしろってことだ。
「結構、ダルい......」
放課後。
ひとりでモニュメントを掃除していたら、フェエルがやってきた。
「ヤソミちゃん」
フェエルは掃除道具を持っていた。
「ぼくも手伝うよ」
「あ、ありがとう。......あれ?」
俺はフェエルの後ろにふたりの女子生徒が立っているのに気づく。
「エマとミア?」
「あーしも手伝うよ」
「わたしも手伝う」
ふたりはニコッと笑った。
四人で始めると......あっという間に終わった。
「終わった~」
フーッと息を吐いて、磨き上げたモニュメントを見上げる。
斜めに当たる太陽の光が反射して、俺たちの顔を照らした。
その時、みんなが自然に浮かべた笑顔に、俺は一瞬なにもかもを忘れた。
翌朝。
とある場所で、俺はフェエルと待ち合わせていた。
「ヤソみんおはよう~。て、えええ??」
俺と顔を合わすなりフェエルが驚いたのには理由がある。
「な、なななんでヤソミちゃんなの!?」
「ヤソミの正体を知っているのは先生以外、フェエルとエマとミアだけだろ?」
「そうだけど」
「ま、細かいことは気にするな」
「ぜんぜん細かくないけど!?」
さて、朝から俺たちは一体なにをしているのか?
「マジでなんなんだよ」
「しかもなんでヤソミ......」
今、俺たちは四人で登校している。
メンバーは俺(ヤソミ)、フェエル、ミア、エマの四人。
今朝、俺はフェエルを連れてエマとミアを家まで迎えにいった。
エマとミアのふたりはわけがわからないといった様子。
「つーか、昨日あーしは学校辞めるっつったばっかだぞ?」
「それは先生が保留するって言ってただろ」
「そうだけど!」
「こうでもしないとエマは学校に来なそうだったからな」
「ならミャーミャーもいるのはなんでだよ?」
「こうでもしないと二人とも顔合わせづらそうだったからな」
途端にエマは押し黙った。
するとミアがおもむろにエマの前に躍り出る。
「エマちゃん!」
「な、なんだよ」
「わたしのこと、守ろうとしてくれて、ありがとう!」
「昨日のことか。べつにいいよ」
「でも!ちゃんと言いたくて!」
「だからもういいよ。これでチャラになったとも思ってねーし」
ふたりはしばらく見つめ合い、どちらともなく顔を綻ばせた。
これも行動が生んだ結果だろうか。
「ちょっと急ごうか。このままじゃ遅刻になるかも」
足を早めた。
学校に着くと、まわりの生徒たちから、まるで奇異なものでも見るような視線が俺たちへ集まる。
「おい、なんかスッゲー見られてんぞ」
「そ、そうだね」
「ねえヤソミん...じゃなくヤソミちゃん。大丈夫なの?」
不安をあらわにするエマとミアとフェエルをよそに、ヤソミとなった俺はズイッと一歩前に出た。
「あたしは特異クラスの破壊姫、ヤソミだ!」
最高に鋭い声で吠えた。
破壊姫の...オンステージ開幕だ!
「そして後ろにいるのは、あたしの子分どもだ!」
今、後ろの三人はどんな顔をしているだろう。
呆れて物も言えないか?
しかし俺は止まらない。
「最近、あたしの子分のふたりの生娘が、ろくにオトコも知らないくせに妙な騒ぎを起こしていたみたいだが、真のビッチ女王はあたしだからな!」
決まった。
と思いこんで続ける。
「あたしは女王だからな!あたしを差し置いて子分が噂されているのは気に入らない!だから今後、そんな噂を口にしているヤツがいたら......」
俺はヤソミの脚力を最大限活かし、天高く飛び上がった。
そこらの生徒全員が、ぽかーんと俺を見上げている。
「よし!」
そのまま俺は彗星のように、敷地内に建てられた立派なモニュメントめがけてぎゅーんと急降下する。
ドガァァァン!!
破壊姫ヤソミの彗星落下キック。
まるでミサイルでも撃ち込んだかの如く、物の見事にモニュメントを破壊した。
「こうなるからな!覚悟するんだな!」
決まった。
我ながら最高の傍若無人ぶりを演出。
シンプルに危なさを見せつけられたと思う。
こういうのは、単純な肉体による暴力が説得力を生むんだ。
「おい!今の音はなんだ!」
数人の先生たちがあわてて校舎から飛び出してきた。
「なっ!モニュメントが!?」
驚く先生たちを尻目に、俺は三人に向かってドヤ顔を決める。
「どう?」
ところが、フェエルもエマもミアも、期待とは異なるリアクションを見せた。
「な、な、ななななにをやってんだぁぁぁ!!」
この後。
俺は職員室に呼び出され、先生たちにこっぴどく叱られた。
特に、ガブリエル先生には完全に目をつけられたようだ。
「お前の素行は目に余る!」
何らかの厳罰処分が下される!
と思った。が、俺に下されたのは......
「一週間、モニュメントを綺麗に掃除すること」
魔法科の先生による魔術で元通りになったモニュメントを、一週間の間、毎日ピカピカにしろってことだ。
「結構、ダルい......」
放課後。
ひとりでモニュメントを掃除していたら、フェエルがやってきた。
「ヤソミちゃん」
フェエルは掃除道具を持っていた。
「ぼくも手伝うよ」
「あ、ありがとう。......あれ?」
俺はフェエルの後ろにふたりの女子生徒が立っているのに気づく。
「エマとミア?」
「あーしも手伝うよ」
「わたしも手伝う」
ふたりはニコッと笑った。
四人で始めると......あっという間に終わった。
「終わった~」
フーッと息を吐いて、磨き上げたモニュメントを見上げる。
斜めに当たる太陽の光が反射して、俺たちの顔を照らした。
その時、みんなが自然に浮かべた笑顔に、俺は一瞬なにもかもを忘れた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
異世界に射出された俺、『大地の力』で快適森暮らし始めます!
らもえ
ファンタジー
旧題:異世界に射出された俺、見知らぬ森の真中へ放り出される。周りには木しか生えていないけどお地蔵さんに貰ったレアスキルを使って何とか生き延びます。
俺こと杉浦耕平は、学校帰りのコンビニから家に帰る途中で自称神なるものに拉致される。いきなり攫って異世界へ行けとおっしゃる。しかも語り口が軽くどうにも怪しい。
向こうに行っても特に使命は無く、自由にしていいと言う。しかし、もらえたスキルは【異言語理解】と【簡易鑑定】のみ。いや、これだけでどうせいっちゅーに。そんな俺を見かねた地元の地蔵尊がレアスキルをくれると言うらしい。やっぱり持つべきものは地元の繋がりだよね!
それで早速異世界転移!と思いきや、異世界の高高度の上空に自称神の手違いで射出されちまう。紐なしバンジーもしくはパラシュート無しのスカイダイビングか?これ。
自称神様が何かしてくれたお陰で何とか着地に成功するも、辺りは一面木ばっかりの森のど真ん中。いやこれ遭難ですやん。
そこでお地蔵さんから貰ったスキルを思い出した。これが意外とチートスキルで何とか生活していくことに成功するのだった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる