71 / 163
過去と今
ep71 エマ・フィッツジェラルド(エマ視点)⑥
しおりを挟む
廊下を歩いていると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「エマ!」
その声に立ち止まって振り向く。
心配面のフェエルとヤソガミが、あーしに駆け寄ってきた。
「エマさん!なんてことを!」
「べつに。あーしはあーしのやれることをやっただけだ」
あーしはヤソガミの目をしかと見て、言ってやった。
「これで後悔はないよ」
「エマ......」
ヤソガミ。
なんでお前があーしの心配してんだ。
あーしはお前を貶めようとした張本人なのに。
お前があーしにそんな顔してんじゃねーよ。
だいいち、ミャーミャーだってお前にとっては敵の協力者だろ。
なんであーしらを気にかけてんだ。
まったくヘンな奴だ。ヤソガミは。
「んじゃ、あーしは行くとこあっから」
「フィッツジェラルドさん」
タイミングよくハウ先生がやって来た。
といっても偶然じゃない。
あーしは先生に話をする約束をしていたから。
そのために先生の研究室へ向かっていたところなんだ。
「もうお昼は済んだので?」
「もういーよ」
「じゃあ中へ...」
「ここでいいよ」
「そうですか。ではヤソガミ君とポラン君は...」
「そいつらも聞いてていーよ」
「はあ。では、さっそく本題に...」
「あーし、学校辞めます」
その瞬間、時が止まった。
先生は相変わらず無表情だったけど、ヤソガミとフェエルは完全に面喰らっている。
「ヤソガミ」
あーしはヤソガミに視線を転じた。
「本当にごめんなさい」
ヤソガミは、生意気なギャルだったあーしの謝罪に驚きを隠せていない。
「フェエルも、今までごめん」
フェエルも、ヤソガミと同様だ。
今までのあーしを考えれば、ふたりの反応は当然なんだろうな。
「エマちゃん!!」
そこへ気が気じゃない顔をしたミャーミャーもやって来た。
「あんなことしたら学校に居場所なくなっちゃうよ!?」
「いいよ。あーし、学校辞めるから」
「はっ??えええ??」
「今、先生にも伝えたところだよ」
「!!」
ミャーミャーがかたまった。
あーしがいくらやる気なく過ごそうが、さすがに辞めるとまでは思ったことなかったんだな。
「フィッツジェラルドさん。本気ですか?」
先生が念を押してくる。
「そうだとして、本当に熟考した末の決断ですか?」
白々しいと思った。
なぜなら前にコイツは、あーしに自分から辞めていくように促してきただろ。
そこはハッキリさせておくぞ。
「先生に確認しておきたいことがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「前に魔法病院へ行くことを提案してくれただろ?その結果、あーしは『魔力衰弱症』てことがわかった」
「魔力衰弱症!?」
ヤソガミとフェエルとミャーミャーが声を上げて驚いた。
とりわけミャーミャーは著しく動揺している。
あーしは先生を睨みつけて続ける。
「先生さ。あーしが『魔力衰弱症』て、疑っていたんじゃねーの?てか、その確率が高いってふんでいただろ」
「今さらそれを聞いてどうするんですか。何の意味があるんでしょう」
「誤魔化すんじゃねーよ!オマエはあーしを自主退学させるためにああ言ったんだ!学校からの指示か?それともオマエの判断でやったのか?」
「どうやらフィッツジェラルドさんは混乱しているようですね」
「言えよ!このネクラメガネ!」
「それ、私のことですか?」
「ああー!もう!ムカつく!」
コイツは相変わらずの無表情で無感情。
なに考えているかさっぱりわからない。
でも、あーしを辞めさせようとしたことは確かなんだ!
「認めろよ!ネクラクソメガネ!」
「フィッツジェラルドさん。貴女にひとつ教えておきましょうか」
「なんだよ!さっさと言えよ!」
ここで先生はなぜかヤソガミを一瞥した。
「ヤソガミ君のことです」
「は??なんでヤソガミ??」
「私が視るかぎり、おそらくヤソガミ君は魔力を持っていません」
「えっ??」
全員がキョトンとする。
「今、なんて...」
「魔法病院での正式な診断による確認は必要ですが、私の読みでは、ヤソガミ君は潜在魔力どころか顕在魔力すら持ち合わせておりません」
そして先生はあーしに薄く微笑みかける。
「ということなので、魔力の弱さが悩みのフィッツジェラルドさんの自主退学の件は、私が預かります」
......いやいやいやいや。
待って待って待って待って。
わけがわからない。
じゃあヤソガミの魔法ってなんなんだよ?
魔法使うのに魔力って必要ねーのか?
ガチで目から鱗だな......て、んなわけあるかぁー!
「エマ!」
その声に立ち止まって振り向く。
心配面のフェエルとヤソガミが、あーしに駆け寄ってきた。
「エマさん!なんてことを!」
「べつに。あーしはあーしのやれることをやっただけだ」
あーしはヤソガミの目をしかと見て、言ってやった。
「これで後悔はないよ」
「エマ......」
ヤソガミ。
なんでお前があーしの心配してんだ。
あーしはお前を貶めようとした張本人なのに。
お前があーしにそんな顔してんじゃねーよ。
だいいち、ミャーミャーだってお前にとっては敵の協力者だろ。
なんであーしらを気にかけてんだ。
まったくヘンな奴だ。ヤソガミは。
「んじゃ、あーしは行くとこあっから」
「フィッツジェラルドさん」
タイミングよくハウ先生がやって来た。
といっても偶然じゃない。
あーしは先生に話をする約束をしていたから。
そのために先生の研究室へ向かっていたところなんだ。
「もうお昼は済んだので?」
「もういーよ」
「じゃあ中へ...」
「ここでいいよ」
「そうですか。ではヤソガミ君とポラン君は...」
「そいつらも聞いてていーよ」
「はあ。では、さっそく本題に...」
「あーし、学校辞めます」
その瞬間、時が止まった。
先生は相変わらず無表情だったけど、ヤソガミとフェエルは完全に面喰らっている。
「ヤソガミ」
あーしはヤソガミに視線を転じた。
「本当にごめんなさい」
ヤソガミは、生意気なギャルだったあーしの謝罪に驚きを隠せていない。
「フェエルも、今までごめん」
フェエルも、ヤソガミと同様だ。
今までのあーしを考えれば、ふたりの反応は当然なんだろうな。
「エマちゃん!!」
そこへ気が気じゃない顔をしたミャーミャーもやって来た。
「あんなことしたら学校に居場所なくなっちゃうよ!?」
「いいよ。あーし、学校辞めるから」
「はっ??えええ??」
「今、先生にも伝えたところだよ」
「!!」
ミャーミャーがかたまった。
あーしがいくらやる気なく過ごそうが、さすがに辞めるとまでは思ったことなかったんだな。
「フィッツジェラルドさん。本気ですか?」
先生が念を押してくる。
「そうだとして、本当に熟考した末の決断ですか?」
白々しいと思った。
なぜなら前にコイツは、あーしに自分から辞めていくように促してきただろ。
そこはハッキリさせておくぞ。
「先生に確認しておきたいことがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「前に魔法病院へ行くことを提案してくれただろ?その結果、あーしは『魔力衰弱症』てことがわかった」
「魔力衰弱症!?」
ヤソガミとフェエルとミャーミャーが声を上げて驚いた。
とりわけミャーミャーは著しく動揺している。
あーしは先生を睨みつけて続ける。
「先生さ。あーしが『魔力衰弱症』て、疑っていたんじゃねーの?てか、その確率が高いってふんでいただろ」
「今さらそれを聞いてどうするんですか。何の意味があるんでしょう」
「誤魔化すんじゃねーよ!オマエはあーしを自主退学させるためにああ言ったんだ!学校からの指示か?それともオマエの判断でやったのか?」
「どうやらフィッツジェラルドさんは混乱しているようですね」
「言えよ!このネクラメガネ!」
「それ、私のことですか?」
「ああー!もう!ムカつく!」
コイツは相変わらずの無表情で無感情。
なに考えているかさっぱりわからない。
でも、あーしを辞めさせようとしたことは確かなんだ!
「認めろよ!ネクラクソメガネ!」
「フィッツジェラルドさん。貴女にひとつ教えておきましょうか」
「なんだよ!さっさと言えよ!」
ここで先生はなぜかヤソガミを一瞥した。
「ヤソガミ君のことです」
「は??なんでヤソガミ??」
「私が視るかぎり、おそらくヤソガミ君は魔力を持っていません」
「えっ??」
全員がキョトンとする。
「今、なんて...」
「魔法病院での正式な診断による確認は必要ですが、私の読みでは、ヤソガミ君は潜在魔力どころか顕在魔力すら持ち合わせておりません」
そして先生はあーしに薄く微笑みかける。
「ということなので、魔力の弱さが悩みのフィッツジェラルドさんの自主退学の件は、私が預かります」
......いやいやいやいや。
待って待って待って待って。
わけがわからない。
じゃあヤソガミの魔法ってなんなんだよ?
魔法使うのに魔力って必要ねーのか?
ガチで目から鱗だな......て、んなわけあるかぁー!
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界営業〜大事なのは剣でも魔法でもない。営業力だ!
根上真気
ファンタジー
これは、元やり手営業部長の青年が、その営業力を駆使し、転移した異世界で起業して成功する物語。しかしその道のりは困難の連続だった!彼の仲間は落ちぶれた魔導博士と魔力量だけが取り柄のD級魔導師の娘。彼らと共に、一体どうやって事業を成功させるのか?彼らの敵とは何なのか?今ここに、異世界に降り立った日本人青年の、世紀の実業ファンタジーが幕を開ける!
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる