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過去と今
ep71 エマ・フィッツジェラルド(エマ視点)⑥
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廊下を歩いていると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえてきた。
「エマ!」
その声に立ち止まって振り向く。
心配面のフェエルとヤソガミが、あーしに駆け寄ってきた。
「エマさん!なんてことを!」
「べつに。あーしはあーしのやれることをやっただけだ」
あーしはヤソガミの目をしかと見て、言ってやった。
「これで後悔はないよ」
「エマ......」
ヤソガミ。
なんでお前があーしの心配してんだ。
あーしはお前を貶めようとした張本人なのに。
お前があーしにそんな顔してんじゃねーよ。
だいいち、ミャーミャーだってお前にとっては敵の協力者だろ。
なんであーしらを気にかけてんだ。
まったくヘンな奴だ。ヤソガミは。
「んじゃ、あーしは行くとこあっから」
「フィッツジェラルドさん」
タイミングよくハウ先生がやって来た。
といっても偶然じゃない。
あーしは先生に話をする約束をしていたから。
そのために先生の研究室へ向かっていたところなんだ。
「もうお昼は済んだので?」
「もういーよ」
「じゃあ中へ...」
「ここでいいよ」
「そうですか。ではヤソガミ君とポラン君は...」
「そいつらも聞いてていーよ」
「はあ。では、さっそく本題に...」
「あーし、学校辞めます」
その瞬間、時が止まった。
先生は相変わらず無表情だったけど、ヤソガミとフェエルは完全に面喰らっている。
「ヤソガミ」
あーしはヤソガミに視線を転じた。
「本当にごめんなさい」
ヤソガミは、生意気なギャルだったあーしの謝罪に驚きを隠せていない。
「フェエルも、今までごめん」
フェエルも、ヤソガミと同様だ。
今までのあーしを考えれば、ふたりの反応は当然なんだろうな。
「エマちゃん!!」
そこへ気が気じゃない顔をしたミャーミャーもやって来た。
「あんなことしたら学校に居場所なくなっちゃうよ!?」
「いいよ。あーし、学校辞めるから」
「はっ??えええ??」
「今、先生にも伝えたところだよ」
「!!」
ミャーミャーがかたまった。
あーしがいくらやる気なく過ごそうが、さすがに辞めるとまでは思ったことなかったんだな。
「フィッツジェラルドさん。本気ですか?」
先生が念を押してくる。
「そうだとして、本当に熟考した末の決断ですか?」
白々しいと思った。
なぜなら前にコイツは、あーしに自分から辞めていくように促してきただろ。
そこはハッキリさせておくぞ。
「先生に確認しておきたいことがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「前に魔法病院へ行くことを提案してくれただろ?その結果、あーしは『魔力衰弱症』てことがわかった」
「魔力衰弱症!?」
ヤソガミとフェエルとミャーミャーが声を上げて驚いた。
とりわけミャーミャーは著しく動揺している。
あーしは先生を睨みつけて続ける。
「先生さ。あーしが『魔力衰弱症』て、疑っていたんじゃねーの?てか、その確率が高いってふんでいただろ」
「今さらそれを聞いてどうするんですか。何の意味があるんでしょう」
「誤魔化すんじゃねーよ!オマエはあーしを自主退学させるためにああ言ったんだ!学校からの指示か?それともオマエの判断でやったのか?」
「どうやらフィッツジェラルドさんは混乱しているようですね」
「言えよ!このネクラメガネ!」
「それ、私のことですか?」
「ああー!もう!ムカつく!」
コイツは相変わらずの無表情で無感情。
なに考えているかさっぱりわからない。
でも、あーしを辞めさせようとしたことは確かなんだ!
「認めろよ!ネクラクソメガネ!」
「フィッツジェラルドさん。貴女にひとつ教えておきましょうか」
「なんだよ!さっさと言えよ!」
ここで先生はなぜかヤソガミを一瞥した。
「ヤソガミ君のことです」
「は??なんでヤソガミ??」
「私が視るかぎり、おそらくヤソガミ君は魔力を持っていません」
「えっ??」
全員がキョトンとする。
「今、なんて...」
「魔法病院での正式な診断による確認は必要ですが、私の読みでは、ヤソガミ君は潜在魔力どころか顕在魔力すら持ち合わせておりません」
そして先生はあーしに薄く微笑みかける。
「ということなので、魔力の弱さが悩みのフィッツジェラルドさんの自主退学の件は、私が預かります」
......いやいやいやいや。
待って待って待って待って。
わけがわからない。
じゃあヤソガミの魔法ってなんなんだよ?
魔法使うのに魔力って必要ねーのか?
ガチで目から鱗だな......て、んなわけあるかぁー!
「エマ!」
その声に立ち止まって振り向く。
心配面のフェエルとヤソガミが、あーしに駆け寄ってきた。
「エマさん!なんてことを!」
「べつに。あーしはあーしのやれることをやっただけだ」
あーしはヤソガミの目をしかと見て、言ってやった。
「これで後悔はないよ」
「エマ......」
ヤソガミ。
なんでお前があーしの心配してんだ。
あーしはお前を貶めようとした張本人なのに。
お前があーしにそんな顔してんじゃねーよ。
だいいち、ミャーミャーだってお前にとっては敵の協力者だろ。
なんであーしらを気にかけてんだ。
まったくヘンな奴だ。ヤソガミは。
「んじゃ、あーしは行くとこあっから」
「フィッツジェラルドさん」
タイミングよくハウ先生がやって来た。
といっても偶然じゃない。
あーしは先生に話をする約束をしていたから。
そのために先生の研究室へ向かっていたところなんだ。
「もうお昼は済んだので?」
「もういーよ」
「じゃあ中へ...」
「ここでいいよ」
「そうですか。ではヤソガミ君とポラン君は...」
「そいつらも聞いてていーよ」
「はあ。では、さっそく本題に...」
「あーし、学校辞めます」
その瞬間、時が止まった。
先生は相変わらず無表情だったけど、ヤソガミとフェエルは完全に面喰らっている。
「ヤソガミ」
あーしはヤソガミに視線を転じた。
「本当にごめんなさい」
ヤソガミは、生意気なギャルだったあーしの謝罪に驚きを隠せていない。
「フェエルも、今までごめん」
フェエルも、ヤソガミと同様だ。
今までのあーしを考えれば、ふたりの反応は当然なんだろうな。
「エマちゃん!!」
そこへ気が気じゃない顔をしたミャーミャーもやって来た。
「あんなことしたら学校に居場所なくなっちゃうよ!?」
「いいよ。あーし、学校辞めるから」
「はっ??えええ??」
「今、先生にも伝えたところだよ」
「!!」
ミャーミャーがかたまった。
あーしがいくらやる気なく過ごそうが、さすがに辞めるとまでは思ったことなかったんだな。
「フィッツジェラルドさん。本気ですか?」
先生が念を押してくる。
「そうだとして、本当に熟考した末の決断ですか?」
白々しいと思った。
なぜなら前にコイツは、あーしに自分から辞めていくように促してきただろ。
そこはハッキリさせておくぞ。
「先生に確認しておきたいことがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「前に魔法病院へ行くことを提案してくれただろ?その結果、あーしは『魔力衰弱症』てことがわかった」
「魔力衰弱症!?」
ヤソガミとフェエルとミャーミャーが声を上げて驚いた。
とりわけミャーミャーは著しく動揺している。
あーしは先生を睨みつけて続ける。
「先生さ。あーしが『魔力衰弱症』て、疑っていたんじゃねーの?てか、その確率が高いってふんでいただろ」
「今さらそれを聞いてどうするんですか。何の意味があるんでしょう」
「誤魔化すんじゃねーよ!オマエはあーしを自主退学させるためにああ言ったんだ!学校からの指示か?それともオマエの判断でやったのか?」
「どうやらフィッツジェラルドさんは混乱しているようですね」
「言えよ!このネクラメガネ!」
「それ、私のことですか?」
「ああー!もう!ムカつく!」
コイツは相変わらずの無表情で無感情。
なに考えているかさっぱりわからない。
でも、あーしを辞めさせようとしたことは確かなんだ!
「認めろよ!ネクラクソメガネ!」
「フィッツジェラルドさん。貴女にひとつ教えておきましょうか」
「なんだよ!さっさと言えよ!」
ここで先生はなぜかヤソガミを一瞥した。
「ヤソガミ君のことです」
「は??なんでヤソガミ??」
「私が視るかぎり、おそらくヤソガミ君は魔力を持っていません」
「えっ??」
全員がキョトンとする。
「今、なんて...」
「魔法病院での正式な診断による確認は必要ですが、私の読みでは、ヤソガミ君は潜在魔力どころか顕在魔力すら持ち合わせておりません」
そして先生はあーしに薄く微笑みかける。
「ということなので、魔力の弱さが悩みのフィッツジェラルドさんの自主退学の件は、私が預かります」
......いやいやいやいや。
待って待って待って待って。
わけがわからない。
じゃあヤソガミの魔法ってなんなんだよ?
魔法使うのに魔力って必要ねーのか?
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