68 / 163
過去と今
ep68 エマ・フィッツジェラルド(エマ視点)③
しおりを挟む
時は経ち......。
運命の、リュケイオン魔法学園入学試験の日。
まさに国家魔術師への道の、第一歩となるその日。
実技試験で、あーしはガツンと打ちのめされた。
まわりのヤツらのレベルの高さに。
小さい頃に〔魔法媒介装置〕を取得しているからって完全に調子に乗っていた。
基本能力であーしは完全に劣っていた。
あーしの自信は見るも無惨に打ち砕かれた。
「ぜったい落ちた......」
あの日の夜は、それまでで一番落ち込んだ夜だったと思う。
それからしばらく、あーしは抜け殻のような日々を送っていた。
ところが。
奇跡が起きる。
家に届いた一通の封書。
送り主はリュケイオン魔法学園。
「う、う、ううう受かった!?」
それがあーしにとって本当に良かったのか、今となってはわからない。
あのとき合格していなければ、すっぱり諦められていた気がする。
無論、そのときのあーしには、その後のことなど知る由もない。
のん気に合格通知を見ながら喜びを爆発させていた。
「よーし!がんばるぞ!」
いよいよ喜び勇んでリュケイオンの学園生活を迎えると、あーしに待っていたのは厳しい現実だった。
まわりのヤツらが楽々できることも、あーしにはやっとできるかできないか。
予習をしても復習をしても、追いつくどころか引き離されるだけ。
見る見るうちにあーしは授業についていけなくなった。
ある日の放課後。
「フィッツジェラルド。ちょっといいか?」
ガブリエル先生に呼び出されたあーしは、ある提案を受ける。
「普通科に、興味はあるか?」
学校側としては苦肉の策だったんだと思う。
フィッツジェラルドバンクはリュケイオン魔法学園への寄付も行っていたから。
きっとあーしを追い出すわけにはいかなかったんだ。
かといって魔法科で抱えているわけにもいかない。
惨めな気持ちになった。
そんなあーしに先生は言う。
「魔法への関わり方は、何も国家魔術師を目指すだけじゃないぞ」
先生の言っていることは正しい。
だけどそれは、
「お前には国家魔術師になるのは無理だ」
と突きつけられたのと同義。
実際そういう意味だったに違いない。
結局、あーしの夢は、所詮はただの夢だったということだ。
そんな時だった。
どういうわけか、あーしは教頭先生から別の提案を受ける。
しかもそれは、教頭先生いわく「理事長からの提案」だった。
最初は迷ったけど、それでも、少しでも可能性があるなら、と承諾した。
そして、あーしは特異クラスに入ったんだ。
「あーしはエマ・フィッツジェラルド。よろしくね」
「わ、わたしはミア・キャットレーです!よ、よろしくお願いします」
あーしが特異クラスで最初に話したのはミア。
あのコは不器用で優秀でもなかったけど、誰よりもひたむきで一生懸命だった。
そんなコは、特別クラスにいなかった。
ふたりが「ミャーミャー」「エマちゃん」と呼び合うようになるまでに、たいした時間は要しなかった。
運命の、リュケイオン魔法学園入学試験の日。
まさに国家魔術師への道の、第一歩となるその日。
実技試験で、あーしはガツンと打ちのめされた。
まわりのヤツらのレベルの高さに。
小さい頃に〔魔法媒介装置〕を取得しているからって完全に調子に乗っていた。
基本能力であーしは完全に劣っていた。
あーしの自信は見るも無惨に打ち砕かれた。
「ぜったい落ちた......」
あの日の夜は、それまでで一番落ち込んだ夜だったと思う。
それからしばらく、あーしは抜け殻のような日々を送っていた。
ところが。
奇跡が起きる。
家に届いた一通の封書。
送り主はリュケイオン魔法学園。
「う、う、ううう受かった!?」
それがあーしにとって本当に良かったのか、今となってはわからない。
あのとき合格していなければ、すっぱり諦められていた気がする。
無論、そのときのあーしには、その後のことなど知る由もない。
のん気に合格通知を見ながら喜びを爆発させていた。
「よーし!がんばるぞ!」
いよいよ喜び勇んでリュケイオンの学園生活を迎えると、あーしに待っていたのは厳しい現実だった。
まわりのヤツらが楽々できることも、あーしにはやっとできるかできないか。
予習をしても復習をしても、追いつくどころか引き離されるだけ。
見る見るうちにあーしは授業についていけなくなった。
ある日の放課後。
「フィッツジェラルド。ちょっといいか?」
ガブリエル先生に呼び出されたあーしは、ある提案を受ける。
「普通科に、興味はあるか?」
学校側としては苦肉の策だったんだと思う。
フィッツジェラルドバンクはリュケイオン魔法学園への寄付も行っていたから。
きっとあーしを追い出すわけにはいかなかったんだ。
かといって魔法科で抱えているわけにもいかない。
惨めな気持ちになった。
そんなあーしに先生は言う。
「魔法への関わり方は、何も国家魔術師を目指すだけじゃないぞ」
先生の言っていることは正しい。
だけどそれは、
「お前には国家魔術師になるのは無理だ」
と突きつけられたのと同義。
実際そういう意味だったに違いない。
結局、あーしの夢は、所詮はただの夢だったということだ。
そんな時だった。
どういうわけか、あーしは教頭先生から別の提案を受ける。
しかもそれは、教頭先生いわく「理事長からの提案」だった。
最初は迷ったけど、それでも、少しでも可能性があるなら、と承諾した。
そして、あーしは特異クラスに入ったんだ。
「あーしはエマ・フィッツジェラルド。よろしくね」
「わ、わたしはミア・キャットレーです!よ、よろしくお願いします」
あーしが特異クラスで最初に話したのはミア。
あのコは不器用で優秀でもなかったけど、誰よりもひたむきで一生懸命だった。
そんなコは、特別クラスにいなかった。
ふたりが「ミャーミャー」「エマちゃん」と呼び合うようになるまでに、たいした時間は要しなかった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる