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入学編

ep41 ロリッ娘

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「で、でも、先生はどうするの?ぼくは先生に許可をもらってヤソみんに会いに来ることができたけど、今のヤソみんに外出の許可が出るとは...」

「なら変装したらどうじゃ?」

「へ、変装?他人に変装するってこと?」

「そうじゃ。完璧な変装ができれば教師の許可も何もないじゃろう。どうじゃ小僧?」

 どうじゃ?と言われても、そんなこと簡単にできるわけがない。
 道具やら何やらも集めないといけないし。
 そもそもやったこともない。

「それは、ちょっと難しいかと...」

「違うぞ小僧。オイラが聞いているのはそういうことじゃないわ」

「え?」

「そういう魔法はないのか?と聞いておるのじゃ」

 目から鱗が落ちる。
 なるほど、そうか。
 それこそ変身する魔法があれば、寮を抜け出してミアに会いにいくことは充分可能だ。

「魔法か......」

 何かあるだろうか?
 俺の魔法は、日本の八百万の神様の力を行使する魔法。
 変装の神様はわからないけど、日本神話...すなわち古事記の中で変装にまつわるエピソードがあればもしかして......。

「あった!」

「ふむ。ではそれをやってみい」

「ヤソみんって、そんな魔法まで使えるの!?」

 俺はフェエルに頷いて見せて、鞄から御神札おふだを取り出した。
 御神札に書いて読み上げる神の名は......。

「〔倭比売命ヤマトヒメノミコト〕」

 倭比売命は変装の神様というわけではない。
 小碓尊オウスノミコト(後のヤマトタケル)が女に変装して酒宴に紛れこんで熊襲くまそ征伐を成功させたエピソードの中で、その変装を手伝ったのが倭比売命。
 だから、もしかしたらこれで変装ができるかもと思ってやってみたけど、はたしてうまくいくか......!

「お札から、女の人が!?」

 フェエルの驚きとともに、御神札からぼんやりと神々しく光る神御衣かむみそまとった女神が出現。
 女神はゆっくりとまぶたを開く。
 すると、今度は俺の全身がピカーッと光り出した。

「な、なんだ!?」

 思わず俺もフェエルも眩しさに目を覆った。
 
「ふんっ。どうやらうまくいったようじゃな」

 イナバの声がした。
 目をひらく。
 光はおさまっている。
 
「あれ?」

 自分の腕を見て、あっとなる。
 服が、ブカブカになっている?

「や、ヤソみんなの??」

 フェエルが目を見ひらいて口を半開きにしてワナワナと震えている。

「や、ヤソみんなんだよね??」

 どうしたんだ?
 なんでそんなに驚いているんだ?
 
「ほ、本当に、ヤソみん??」

 なんだかフェエルの様子が変だぞ。
 本当に俺かだって?

「俺に決まっているだろ?どんな変化をしたかわからないけど、いくらなんでも驚きすぎだろ」

「だ、だって、ヤソみん......」

「?」

「女の子になっているよ!?」

「は??」

 意味がわからない。
 鏡の前に立って確かめてみる。
 んん?背の低い、前髪ぱっつん、黒髪ロングの......女の子??
 
「お、お、おおお女の子になってるー!!」

 なんと俺は、見目麗みめうるわしい童女に変身していた!
 けどなんで女に?
 あっ、そうか!
 小碓尊は女装したんだった!
 にしても完全に女体化するなんて想定外すぎるぞ!?

「わっはっは!見事な変装...否、変身じゃ!」

 イナバが愉快に笑ったが、これはマズい。

「こ、これじゃ逆に怪しすぎるだろ!」

「なんでじゃ。それなら小僧とバレんじゃろうて」

「寮からブカブカの男子の制服を着た少女が出てきたらどう考えてもオカシイだろ!」

「なら女子の制服に着替えたらどうじゃ?」

「そんなもん持ってるか!」

 とその時。
 玄関からガタゴトと物音がして誰かの声が聞こえた。

「なんだ?ヤソガミ氏が客を連れ込んだのか?」

 ライマスだ。
 よりによってこんなタイミングで変態ルームメイトが帰ってきやがった。

「おーい、ヤソガミ氏。ちょっと外で写生していたのだが、オタクギーク同胞はらからとして見てもらえるか」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってくれ!」

「ん?お前は誰だ?いやそもそも......その声は女子?」

 しまった!
 今の俺は女子なんだ!
 だから声も女声になっていたんだ!

「まさか......ヤソガミ氏の彼女なのか!?」

「ライマス少年よ。とりあえず部屋まで入ってくるがよい。良いモノが見られるぞ」

「ちょっ!イナバ!」

「良いではないか。お主の化けぐあいの完成度が確かめられるぞ」

「や、ヤソガミ氏。ほ、本当に、入るぞ」

「はよ入ってこい」

「待ってぇぇぇ!!」

 ガチャッと、部屋の扉が開いた。
 次の瞬間、ライマスの手に持った荷物がばたんと床に落下する。

「......な、ななななんだ!?この尊いロリッ娘はぁぁぁ!?」
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