八十神天従は魔法学園の異端児~神社の息子は異世界に行ったら特待生で特異だった

根上真気

文字の大きさ
上 下
22 / 163
入学編

ep22 呼び出し

しおりを挟む
 *

 授業が終わり、先生に別室へ呼び出される。

「ヤソガミくん。とりあえず座ってください」

「何の用じゃ?わざわざ教室から移動させおって」

「ちょっとイナバ!」

 イナバの口を塞いでそそくさと腰を下ろした。
 先生には特に怒っている様子はないけど......やっぱり怒られるんだよな。
 教室を水びたしにしたし、それどころかヘタしたら誰かをおぼれ死にさせたかもしれないし......。
 とにかく、まず謝ろう。

「あ、あの、すいませんでしたぁ!!」

 勢いよく頭を下げた。

「教室をめちゃくちゃにしてしまって!みんなを危険な目に遭わせてしまって!すいませんでした!」

「ヤソガミくん。頭を上げてください」

「は、はい」

 顔を上げると、先生の表情は普段とまったく変わっていなかった。

「あ、あの、先生?」

「ヤソガミくん。ここは魔法学園です。こういったことは起こりうることです」

「そ、そうなんですか」

「かつて教室を全焼させた生徒もいましたからね」

 そんなヤバい奴もいたのか!
 いや、俺も似たようなものか......。

「本校は魔術建築による特殊な施工により相当な強化が施されています。ですのであれぐらいでは壊れたりしません。その点はまずご安心ください」

「そ、そういえば、ガラスひとつ割れたりしなかったな...」

「あとはヤソガミくん自身よくわかっていますね?」

「え?あ、はい」

「よろしい。それがわかればもういいです。戻っていいですよ」

「えっ?あの、ええと、怒らないんですか?」

「怒ってどうなるんですか?」

「えっ??」

「さあ、もう教室に戻りなさい。私に余計な仕事を与えないでください」

 先生は初めから終わりまで表情ひとつ変えなかった。
 なんだか釈然としない。
 怒られたいわけではないけど......これでいいのだろうか。

 ハウ先生の考えが今いちよくわからない。
 最初は真面目で優しそうで良い先生かと思ったけど、どうもよくわからなくなってきた。
 先生も国家魔術師レース・マグスだから、ちゃんとした人ではあるんだろうけど。
 生徒の自主性を重んじているってことなんだろうか。
 ただやる気がないだけのようにも見えるのは気のせいかな......。

 いずれにしても、まだ初日だ。
 現時点で判断してしまうのは早計。

「し、失礼しました」

 気持ちはモヤモヤしたままだけど、俺は教室へ戻っていった。


「なんか、クラスのみんなと顔合わせるの気まずいな......」

「気にするな。ハウ教師も言ってたじゃろ。よくあることじゃと」

「よくあるとは言ってないけど」

「似たようなもんじゃ。それに皆、むしろ小僧に一目置いたかもしれんぞ?」

「そうであればいいんだけど」

「ほれ、着いたぞ」

「てゆーかイナバは余計なこと言わないでくれよ」

「ふんっ。仕方ないのう。なら黙っていてやる。そのかわり助けもせんからな」

「それでいいよ」

「ほら、胸張って入るがよい。オイラは寝る。今日は小僧のせいで疲れたわ」

「なんだよそれ。ハァー......」

 大きくため息をつきながらイナバを抱いた。
 重々しい気持ちで教室のドアをガラッと開ける。 
 みんなの視線が一気に集まった。
 多くの生徒の表情は、どこかギョッとしている。
 その中で、待ってましたといわんばかりにツカツカとひとりの女子が歩み寄ってきた。

「ヤソガミくん」

 ジークレフ学級委員長が説教感全開でビシッと俺を指さす。
 
「貴方は加減ってものを知らないの?」

「あっ、さっきの魔法のことだよね。そ、それは本当にごめん」

 ちゃんと頭を下げて謝罪した。
 が、顔を上げると、より厳しいものになった彼女の表情が目に入った。

「ごめんで済むハナシ?あれは下手したら誰かを殺しかねないほどの力よ?なぜ加減しなかったの?」

「い、いや、最小限に抑えたつもりだったんだけど......」

「あれで最小限ですって!?」

 学級委員長の声がうわずり一段と大きくなった。
 同時にクラス内が騒然とする。

「あれが最小限?」
「どんな火力なんだよ」
「バケモンだぜアイツ」
「関わらないほうがいいよ」
「そーだそーだ」
「ジェットレディも理事長も、とんでもない厄介モン押しつけやがったな」
「勘弁してほしいぜ」
 
 この感じ......知っている。
 みんなの視線に込められている感情......あれは異物に対する嫌悪と忌避だ。
 俺は気味悪がられているんだ。
 中学の頃と同じように......。

「ええと......」

 言葉に詰まった。
 途端に胸が苦しくなった。
 もうこんな思いは、二度としたくなかったのに。

「チッ。気に入らねえ!」

 トッパーが教室の奥から怒り混じりに吐き棄てた。

「おもしろくねーヤツだ!」

「特待生だからって力自慢しやがって!きっとバカなんだアイツ!」

 ツレのマイヤーも同調する。
 アイツらだけじゃないかもしれない。
 みんな思っているのかもしれない。

 俺は目の前で唖然としている学級委員長を避けながら、
「もう、いいよね......」
 ガックリと肩を落としてトボトボと自分の席に戻った。

 戻る時、後ろの席でポランくんがなにか言いたげだったように見えたけど、気にする余裕がなかった。
 すっかり落ち込んでいたから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...