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入学編
ep20 魔術演習
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「午後の授業は魔術演習です。ヤソガミ君は初の魔術演習でしょうから、基本の基本から始めます。基礎はとても大事ですので、他のみなさんは復習を兼ねて臨んでください」
ハウ先生によって教壇にスペースが設けられると、その前へ生徒が集まった。
といっても、全員ではない。
「ダリーな。こんなキホンのキホン。やってられねー」
ポランくんをイジメていたトッパーとマイケルは後ろで腰掛けたままだ。
ある意味予想通りの態度。
コイツら本当に国家魔術師を目指してんのか?
謎だ......て、そんなことはいい。
ちゃんと授業を受けなきゃ。
「さて、始めましょう」
先生の説明が始まる。
「現代の魔術の最先端は〔魔法媒介装置〕を使用します。今日では国家魔術師の最前線において詠唱による魔術が使用されることはほとんどありません。
〔魔法媒介装置〕は、魔術の効率的かつ合理的な実行を実現します。特に命の危険を伴うゼノ討伐任務においては必須技術と言えるでしょう」
先生は皆の顔を見まわした。
「したがって、自分に合ったアルマを見つけることは現代の国家魔術師にとって非常に重要なことなのです。みなさんの中にはすでにアルマを所持している生徒もいますが、その生徒はアルマを使用した魔術をどんどん磨いてください」
先生の話を聞いて今さらわかった。
ジェットレディのあのデッカイ銃は〔魔法媒介装置〕だったのか。
そして俺の場合……あの御神札が〔魔法媒介装置〕だったのか!
……ん?でも俺は神様の名前を書いて読み上げているよな?
あれは詠唱ではないのかな?
「それでは、せっかくですのでアルマを使った魔術をどなたかに見せていただきましょうか」
先生は何人かの生徒に視線を運ぶ。
まさか自分が当てられることはないだろうと思って俺は純粋にワクワクした。
誰かの魔術が見られる......!
「は~い先生~」
唐突にトッパーが手を挙げた。
ハウ先生は、ちゃんと授業に参加しようとしない彼らへ注意する素振りは見せず、
「なんですか?」
ごく普通に訊ねた。
「最初に特待生くんのスッゲー魔法が見たいな~」
トッパーがへらへらと言った。
明らかに人をバカにした態度だ。
「おれも見たいで~す」
マイヤーも続いた。
先生は俺に確認を求めてきた。
「ええと...」
答えようがなかった。
確かに俺はアルマも所持している。
でも、魔法といっても島で一回やったことがあるだけ。
それに俺の魔法って、こんな教室の中でやっても大丈夫なものなんだろうか。
「あっ、やっぱり先生~」
俺が返答する前にまたトッパーが口をひらいた。
「フェエルくんにお手本を見せてもらうってのはどうですかぁ?」
急にどうしてか彼はポランくんへ振った。
どういうつもりかはわからないが、他意を感じる。
「えっ??ぼ、ぼく??」
狼狽するポランくん。
「で、でも、ぼくじゃ......」
「ええ~丁度イイじゃん。優秀なフェエルくんは〔アルマ〕も持っているし、お得意のお庭魔法を見せてあげなよ~」
トッパーたちの顔はやたらとニヤニヤしてる。
明らかに悪意がある顔。
ということは......ひょっとしてポランくんは魔術があまり得意ではないのかな?
それともポランくんの使う魔法自体が一般的には微妙なものなのかな?
あるいは〔アルマ〕がダサいとか?
もしそういったことなら、授業とはいえポランくんが晒しものみたいになってしまうぞ。
......どうする?
かといって俺も......いや、ダメだ。
これじゃあの時と同じだ。
同じ過ちは繰り返したくない。
中学の頃の、あんな思いはもうしたくない......!
「俺がやります」
やにわにバッと挙手して立候補してしまった。
「ハウ先生。フツーに魔術をやればいいんですかね?」
「はい。ヤソガミくんがかまわないのなら」
「大丈夫です。やります」
前に出た。
自信はなかった。
けど、トッパーたちの意図はよくわかった。
アイツらは結局、ポランくんをイジメたいんだ。
一度わざわざ俺に振ったのは、イジメをカモフラージュするためか。
だとすれば不愉快な巧妙さだ。
「あ、あの、ヤソガミくん」
あたふたとしながらポランくんが声をかけてきた。
「トッパーくんたちは...」
「最初に俺に振ってきたんだ。だったら俺がやるってだけだよ」
「そ、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
「結果的に、ヤソガミくんがぼくを庇ったことになっちゃうから......」
「なっちゃうからなんなの?」
「だから、ヤソガミくんにも、嫌がらせっていうか、その......」
「後悔したくないんだ」
「えっ?」
ポランくんを押しのけた。
とはいえ......本当にできるのかな。
一応やり方は覚えているけど。
「あっ、御神札を出さなきゃ」
いったん自分の席まで戻って鞄を開けた。
転瞬。
「このタワケがぁ!!」
ビックリ箱のように鞄の中から勢いよく白兎が飛び出てくると、
「ぐはぁっ!!」
ガンッと顎を蹴り上げられた。
「午後の授業は魔術演習です。ヤソガミ君は初の魔術演習でしょうから、基本の基本から始めます。基礎はとても大事ですので、他のみなさんは復習を兼ねて臨んでください」
ハウ先生によって教壇にスペースが設けられると、その前へ生徒が集まった。
といっても、全員ではない。
「ダリーな。こんなキホンのキホン。やってられねー」
ポランくんをイジメていたトッパーとマイケルは後ろで腰掛けたままだ。
ある意味予想通りの態度。
コイツら本当に国家魔術師を目指してんのか?
謎だ......て、そんなことはいい。
ちゃんと授業を受けなきゃ。
「さて、始めましょう」
先生の説明が始まる。
「現代の魔術の最先端は〔魔法媒介装置〕を使用します。今日では国家魔術師の最前線において詠唱による魔術が使用されることはほとんどありません。
〔魔法媒介装置〕は、魔術の効率的かつ合理的な実行を実現します。特に命の危険を伴うゼノ討伐任務においては必須技術と言えるでしょう」
先生は皆の顔を見まわした。
「したがって、自分に合ったアルマを見つけることは現代の国家魔術師にとって非常に重要なことなのです。みなさんの中にはすでにアルマを所持している生徒もいますが、その生徒はアルマを使用した魔術をどんどん磨いてください」
先生の話を聞いて今さらわかった。
ジェットレディのあのデッカイ銃は〔魔法媒介装置〕だったのか。
そして俺の場合……あの御神札が〔魔法媒介装置〕だったのか!
……ん?でも俺は神様の名前を書いて読み上げているよな?
あれは詠唱ではないのかな?
「それでは、せっかくですのでアルマを使った魔術をどなたかに見せていただきましょうか」
先生は何人かの生徒に視線を運ぶ。
まさか自分が当てられることはないだろうと思って俺は純粋にワクワクした。
誰かの魔術が見られる......!
「は~い先生~」
唐突にトッパーが手を挙げた。
ハウ先生は、ちゃんと授業に参加しようとしない彼らへ注意する素振りは見せず、
「なんですか?」
ごく普通に訊ねた。
「最初に特待生くんのスッゲー魔法が見たいな~」
トッパーがへらへらと言った。
明らかに人をバカにした態度だ。
「おれも見たいで~す」
マイヤーも続いた。
先生は俺に確認を求めてきた。
「ええと...」
答えようがなかった。
確かに俺はアルマも所持している。
でも、魔法といっても島で一回やったことがあるだけ。
それに俺の魔法って、こんな教室の中でやっても大丈夫なものなんだろうか。
「あっ、やっぱり先生~」
俺が返答する前にまたトッパーが口をひらいた。
「フェエルくんにお手本を見せてもらうってのはどうですかぁ?」
急にどうしてか彼はポランくんへ振った。
どういうつもりかはわからないが、他意を感じる。
「えっ??ぼ、ぼく??」
狼狽するポランくん。
「で、でも、ぼくじゃ......」
「ええ~丁度イイじゃん。優秀なフェエルくんは〔アルマ〕も持っているし、お得意のお庭魔法を見せてあげなよ~」
トッパーたちの顔はやたらとニヤニヤしてる。
明らかに悪意がある顔。
ということは......ひょっとしてポランくんは魔術があまり得意ではないのかな?
それともポランくんの使う魔法自体が一般的には微妙なものなのかな?
あるいは〔アルマ〕がダサいとか?
もしそういったことなら、授業とはいえポランくんが晒しものみたいになってしまうぞ。
......どうする?
かといって俺も......いや、ダメだ。
これじゃあの時と同じだ。
同じ過ちは繰り返したくない。
中学の頃の、あんな思いはもうしたくない......!
「俺がやります」
やにわにバッと挙手して立候補してしまった。
「ハウ先生。フツーに魔術をやればいいんですかね?」
「はい。ヤソガミくんがかまわないのなら」
「大丈夫です。やります」
前に出た。
自信はなかった。
けど、トッパーたちの意図はよくわかった。
アイツらは結局、ポランくんをイジメたいんだ。
一度わざわざ俺に振ったのは、イジメをカモフラージュするためか。
だとすれば不愉快な巧妙さだ。
「あ、あの、ヤソガミくん」
あたふたとしながらポランくんが声をかけてきた。
「トッパーくんたちは...」
「最初に俺に振ってきたんだ。だったら俺がやるってだけだよ」
「そ、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
「結果的に、ヤソガミくんがぼくを庇ったことになっちゃうから......」
「なっちゃうからなんなの?」
「だから、ヤソガミくんにも、嫌がらせっていうか、その......」
「後悔したくないんだ」
「えっ?」
ポランくんを押しのけた。
とはいえ......本当にできるのかな。
一応やり方は覚えているけど。
「あっ、御神札を出さなきゃ」
いったん自分の席まで戻って鞄を開けた。
転瞬。
「このタワケがぁ!!」
ビックリ箱のように鞄の中から勢いよく白兎が飛び出てくると、
「ぐはぁっ!!」
ガンッと顎を蹴り上げられた。
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