ようこそ猫カフェ『ネコまっしぐランド』〜我々はネコ娘である〜

根上真気

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ep14 帰り道

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 午後八時。
 ネコまっしぐランド、閉店。
 
「お疲れ様でした~」
「おつかれさん!」
「おつかれさま!」
「お、おおおおつかれさまです!」
「御疲れ様でござる」

 バイトを終え、帰路に就く猫実好和。
 澄んだ夜空には三日月がやけに明るく浮かんでいる。

「あー疲れた。帰ってから課題やろうと思ってたけど今日は無理かなぁ。あっ、ちょっとそこのコンビニ寄るか」
 猫実は帰り道沿いの交差点にあるコンビニに入る。

 ドリンクコーナーで飲み物を選んでいると、彼はふと何気なく横を見た。

「あっ」
「えっ」

 横に立っていた女性とパッと目が合う。

「......あれ?ナル先輩?」
「ね、猫実くん!?」

 女性は、スポーティーなカジュアルファッションに身を包んだナルだった。
 ツインテールを下げてツインおさげにした頭には帽子を被り猫耳が隠れている。また、どうやったのか、しなやかな尻尾も上手に隠れている。
 
「ナル先輩も帰りこっち方向なんですね?」
「わ、わるい!?」

「あ、いえ、わるくないっす」
「...ふん」

 ナルの相変わらずのツンな態度にいささか困る猫実だったが、今の彼には問題ではなかった。
 ...今の猫実好和は、ナルが本当はとっても優しくて良い子だということを知っているのだ!

「あの、ナル先輩」
「な、なに?」

「方向一緒なら、途中まで一緒に帰りませんか?」

「はっ??な、ななななんで!?」
 頬を赤らめてびっくりするナル。

「リアクションがもずきゅん先輩とおんなじになってますよ」
「なってない!」

「ハハ。嫌ならいいんですけど、今日はあれからほとんどナル先輩とは話せませんでしたので」

「そ、そう。なら別にいいけど...」
 ナルはツンな態度をキープしつつモジモジしながら承諾した。

 夜の帰り道。
 ナルを路端側に、猫実は車道側に(彼は自然とこういう所で気遣いができる)、二人は共に家路を向かっていた。

 ナルは隣の猫実をチラチラ見ながら、気恥ずかしそうに口を開く。
「あ、あの...」

「はい?」
「きょ、今日は、ごめんなさい」

「えっ?」
 猫実好和はピタッと立ち止まる。

 ナルは前を向いたまま自分の髪先を指でくるくる巻きつつ、
「わ、ワタシの勝手な勘違いであんな事言っちゃって悪かったって言ってるの」
 モジモジしながら謝罪した。

 猫実は、あ~そうか、という顔をして、
「いえ。全然大丈夫ですよ。むしろ、ナル先輩の新たな一面が知れて良かったです」
 安心させるように微笑んだ。

「え?」
「店長の言ったとおりだなって事です」

「なっ!......もう。店長はいつもああやってワタシをからかうのよ」

「そんな感じっぽいですね。でも、店長は本当にそう思って言ってるとも思いますけど」

「ちょ、ちょっとあなたまでワタシをからかう気??後輩でしょ??」

 ここで二人は言葉を止めると、
「ぷっ」
 どちらともなくと吹き出し、
「アハハハ!」
 声を出して笑い合った。

「...ハハ。猫実くんて、なんか不思議なヒトね」
 ナルは笑みをこぼしながら言った。

「そ、そうっすか?」
 猫実も笑顔で何気なく返事する。

「あの超人見知りなもずきゅんが気に入るのもわかる気がするわ」

「え?気に入ってもらえてるんですか俺?」

「...なるほど。そういうところね、きっと」
「え?全然わからないんすけど」

「わからないならわからないでいいの」
 ナルは悪戯っ子のようにフフフと笑った。

 すでに二人は、すっかり打ち解けていた。
 彼の苦手意識や彼女の誤解があった分、それらの問題が解決されるや否や、二人の間の壁はベルリンの壁の如く崩壊した。
 東西冷戦の終結である。(なんのこっちゃ)

 結局、二人とも根は良いヤツだったので遅かれ早かれではあったのだろうが、こういう人間関係の経緯はままあると言える。
 かくいう私もある。(←だれ?) 
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