14 / 36
ep14 帰り道
しおりを挟む
午後八時。
ネコまっしぐランド、閉店。
「お疲れ様でした~」
「おつかれさん!」
「おつかれさま!」
「お、おおおおつかれさまです!」
「御疲れ様でござる」
バイトを終え、帰路に就く猫実好和。
澄んだ夜空には三日月がやけに明るく浮かんでいる。
「あー疲れた。帰ってから課題やろうと思ってたけど今日は無理かなぁ。あっ、ちょっとそこのコンビニ寄るか」
猫実は帰り道沿いの交差点にあるコンビニに入る。
ドリンクコーナーで飲み物を選んでいると、彼はふと何気なく横を見た。
「あっ」
「えっ」
横に立っていた女性とパッと目が合う。
「......あれ?ナル先輩?」
「ね、猫実くん!?」
女性は、スポーティーなカジュアルファッションに身を包んだナルだった。
ツインテールを下げてツインおさげにした頭には帽子を被り猫耳が隠れている。また、どうやったのか、しなやかな尻尾も上手に隠れている。
「ナル先輩も帰りこっち方向なんですね?」
「わ、わるい!?」
「あ、いえ、わるくないっす」
「...ふん」
ナルの相変わらずのツンな態度にいささか困る猫実だったが、今の彼には問題ではなかった。
...今の猫実好和は、ナルが本当はとっても優しくて良い子だということを知っているのだ!
「あの、ナル先輩」
「な、なに?」
「方向一緒なら、途中まで一緒に帰りませんか?」
「はっ??な、ななななんで!?」
頬を赤らめてびっくりするナル。
「リアクションがもずきゅん先輩とおんなじになってますよ」
「なってない!」
「ハハ。嫌ならいいんですけど、今日はあれからほとんどナル先輩とは話せませんでしたので」
「そ、そう。なら別にいいけど...」
ナルはツンな態度をキープしつつモジモジしながら承諾した。
夜の帰り道。
ナルを路端側に、猫実は車道側に(彼は自然とこういう所で気遣いができる)、二人は共に家路を向かっていた。
ナルは隣の猫実をチラチラ見ながら、気恥ずかしそうに口を開く。
「あ、あの...」
「はい?」
「きょ、今日は、ごめんなさい」
「えっ?」
猫実好和はピタッと立ち止まる。
ナルは前を向いたまま自分の髪先を指でくるくる巻きつつ、
「わ、ワタシの勝手な勘違いであんな事言っちゃって悪かったって言ってるの」
モジモジしながら謝罪した。
猫実は、あ~そうか、という顔をして、
「いえ。全然大丈夫ですよ。むしろ、ナル先輩の新たな一面が知れて良かったです」
安心させるように微笑んだ。
「え?」
「店長の言ったとおりだなって事です」
「なっ!......もう。店長はいつもああやってワタシをからかうのよ」
「そんな感じっぽいですね。でも、店長は本当にそう思って言ってるとも思いますけど」
「ちょ、ちょっとあなたまでワタシをからかう気??後輩でしょ??」
ここで二人は言葉を止めると、
「ぷっ」
どちらともなくと吹き出し、
「アハハハ!」
声を出して笑い合った。
「...ハハ。猫実くんて、なんか不思議なヒトね」
ナルは笑みをこぼしながら言った。
「そ、そうっすか?」
猫実も笑顔で何気なく返事する。
「あの超人見知りなもずきゅんが気に入るのもわかる気がするわ」
「え?気に入ってもらえてるんですか俺?」
「...なるほど。そういうところね、きっと」
「え?全然わからないんすけど」
「わからないならわからないでいいの」
ナルは悪戯っ子のようにフフフと笑った。
すでに二人は、すっかり打ち解けていた。
彼の苦手意識や彼女の誤解があった分、それらの問題が解決されるや否や、二人の間の壁はベルリンの壁の如く崩壊した。
東西冷戦の終結である。(なんのこっちゃ)
結局、二人とも根は良いヤツだったので遅かれ早かれではあったのだろうが、こういう人間関係の経緯はままあると言える。
かくいう私もある。(←だれ?)
ネコまっしぐランド、閉店。
「お疲れ様でした~」
「おつかれさん!」
「おつかれさま!」
「お、おおおおつかれさまです!」
「御疲れ様でござる」
バイトを終え、帰路に就く猫実好和。
澄んだ夜空には三日月がやけに明るく浮かんでいる。
「あー疲れた。帰ってから課題やろうと思ってたけど今日は無理かなぁ。あっ、ちょっとそこのコンビニ寄るか」
猫実は帰り道沿いの交差点にあるコンビニに入る。
ドリンクコーナーで飲み物を選んでいると、彼はふと何気なく横を見た。
「あっ」
「えっ」
横に立っていた女性とパッと目が合う。
「......あれ?ナル先輩?」
「ね、猫実くん!?」
女性は、スポーティーなカジュアルファッションに身を包んだナルだった。
ツインテールを下げてツインおさげにした頭には帽子を被り猫耳が隠れている。また、どうやったのか、しなやかな尻尾も上手に隠れている。
「ナル先輩も帰りこっち方向なんですね?」
「わ、わるい!?」
「あ、いえ、わるくないっす」
「...ふん」
ナルの相変わらずのツンな態度にいささか困る猫実だったが、今の彼には問題ではなかった。
...今の猫実好和は、ナルが本当はとっても優しくて良い子だということを知っているのだ!
「あの、ナル先輩」
「な、なに?」
「方向一緒なら、途中まで一緒に帰りませんか?」
「はっ??な、ななななんで!?」
頬を赤らめてびっくりするナル。
「リアクションがもずきゅん先輩とおんなじになってますよ」
「なってない!」
「ハハ。嫌ならいいんですけど、今日はあれからほとんどナル先輩とは話せませんでしたので」
「そ、そう。なら別にいいけど...」
ナルはツンな態度をキープしつつモジモジしながら承諾した。
夜の帰り道。
ナルを路端側に、猫実は車道側に(彼は自然とこういう所で気遣いができる)、二人は共に家路を向かっていた。
ナルは隣の猫実をチラチラ見ながら、気恥ずかしそうに口を開く。
「あ、あの...」
「はい?」
「きょ、今日は、ごめんなさい」
「えっ?」
猫実好和はピタッと立ち止まる。
ナルは前を向いたまま自分の髪先を指でくるくる巻きつつ、
「わ、ワタシの勝手な勘違いであんな事言っちゃって悪かったって言ってるの」
モジモジしながら謝罪した。
猫実は、あ~そうか、という顔をして、
「いえ。全然大丈夫ですよ。むしろ、ナル先輩の新たな一面が知れて良かったです」
安心させるように微笑んだ。
「え?」
「店長の言ったとおりだなって事です」
「なっ!......もう。店長はいつもああやってワタシをからかうのよ」
「そんな感じっぽいですね。でも、店長は本当にそう思って言ってるとも思いますけど」
「ちょ、ちょっとあなたまでワタシをからかう気??後輩でしょ??」
ここで二人は言葉を止めると、
「ぷっ」
どちらともなくと吹き出し、
「アハハハ!」
声を出して笑い合った。
「...ハハ。猫実くんて、なんか不思議なヒトね」
ナルは笑みをこぼしながら言った。
「そ、そうっすか?」
猫実も笑顔で何気なく返事する。
「あの超人見知りなもずきゅんが気に入るのもわかる気がするわ」
「え?気に入ってもらえてるんですか俺?」
「...なるほど。そういうところね、きっと」
「え?全然わからないんすけど」
「わからないならわからないでいいの」
ナルは悪戯っ子のようにフフフと笑った。
すでに二人は、すっかり打ち解けていた。
彼の苦手意識や彼女の誤解があった分、それらの問題が解決されるや否や、二人の間の壁はベルリンの壁の如く崩壊した。
東西冷戦の終結である。(なんのこっちゃ)
結局、二人とも根は良いヤツだったので遅かれ早かれではあったのだろうが、こういう人間関係の経緯はままあると言える。
かくいう私もある。(←だれ?)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
ガールズバンド“ミッチェリアル”
西野歌夏
キャラ文芸
ガールズバンド“ミッチェリアル”の初のワールドツアーがこれから始まろうとしている。このバンドには秘密があった。ワールドツアー準備合宿で、事件は始まった。アイドルが世界を救う戦いが始まったのだ。
バンドメンバーの16歳のミカナは、ロシア皇帝の隠し財産の相続人となったことから嫌がらせを受ける。ミカナの母国ドイツ本国から試客”くノ一”が送り込まれる。しかし、事態は思わぬ展開へ・・・・・・
「全世界の動物諸君に告ぐ。爆買いツアーの開催だ!」
武器商人、スパイ、オタクと動物たちが繰り広げるもう一つの戦線。
お昼寝カフェ【BAKU】へようこそ!~夢喰いバクと社畜は美少女アイドルの悪夢を見る~
保月ミヒル
キャラ文芸
人生諦め気味のアラサー営業マン・遠原昭博は、ある日不思議なお昼寝カフェに迷い混む。
迎えてくれたのは、眼鏡をかけた独特の雰囲気の青年――カフェの店長・夢見獏だった。
ゆるふわおっとりなその青年の正体は、なんと悪夢を食べる妖怪のバクだった。
昭博はひょんなことから夢見とダッグを組むことになり、客として来店した人気アイドルの悪夢の中に入ることに……!?
夢という誰にも見せない空間の中で、人々は悩み、試練に立ち向かい、成長する。
ハートフルサイコダイブコメディです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる