ようこそ猫カフェ『ネコまっしぐランド』〜我々はネコ娘である〜

根上真気

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ep5 もずきゅんの新人育成大作戦

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ーーーーーー

 午前十時。
 猫カフェ『ネコまっしぐランド』
 開店。

「......あ、あの~、もずきゅん先輩」
「な、ななな、なんですか!?」

「嫌われたわけではないということは理解しましたので......せめてもう少し近くに来てもらえませんか?」

「じゅ、じゅうぶん、ちちち近いじゃないですか!」

「あの、五メートルって、会話する距離としては遠いですよ...」

「えええ??これ以上??」
「これだと、生理的に嫌われている距離感かと...」

「だ、だから、きききらっているわけじゃないって言ったじゃないですかぁ~!!」

「極度の人見知りで人が苦手なのはよくわかりましたけど、これだと仕事の話もしづらいですよね...」

「そ、そそそれは...」

「結局、開店前には何も教えてもらえませんでしたし、俺、ぶっちゃけ今、超不安です......。今日のバイト、マジで大丈夫かな......」
 猫実好和はうつむいてズーンとなった。

 そんな彼の様子を見て、もずきゅんはハッとする。
ーーーそうだ!猫実くんは今日初バイトで不安なんだ!
 しかもわたしがこんなだからますます不安になっちゃって......
 どうしよう、わたしのせいだ。先輩のわたしがしっかりしなきゃいけないのに......!
 でもコミュ障のわたしがどうすれば?ーーー

 もずきゅんは五メートルの距離をじりじりと保ちながら目をうるうるさせて猫実を見ている。

 猫実はもずきゅんをチラッと見て「...ああこりゃダメだ.....」と半ば諦めながら、だしぬけに何となく質問してみた。
「......もずきゅん先輩は、何か好きな事とかあるんですか?趣味とか」

「......えええっ???」
 猫実の突然の質問に虚をつかれたもずきゅん。
 彼女は数秒程度してからモジモジ答える。
「......げ、ゲームとか、アニメとか、す、すす好きですけど...」

「もずきゅん先輩は、ゲームが好きなんですね。......あっ!」
「??」

「あの、もずきゅん先輩!」
「な、なななんですか!?」

「これはゲームです!!」
「へ??」

「新人バイトを育てるゲームだと思ってみてください!」
「えええ???」

「つまり俺はゲームキャラで、これは新人バイトである俺を育てるゲームなんです!先輩はプレイヤーとして、ゲームキャラの俺に接してください!」

「...な、なるほど!!」

「これならもずきゅん先輩もやりやすいのではないかと!」
「......や、やってみます!!」

 ということで......
 『新人バイト・猫実好和育成ゲーム』
 プレイヤー:人見知りネコ娘もずきゅん
 いざプレイ、スタート!

「......もずきゅん先輩の顔が、変わった?」

 雰囲気の変化したもずきゅんは、猫実好和のすぐ隣まで近づいてきた。

「もずきゅん先輩。なんかイケそうですね?」
 猫実が微笑みかける。

「......」
 返事がない。

「...もずきゅん先輩?」


 もずきゅんは思考する。
 
 ......

 猫実好和×1があらわれた。
 どうする?

・たたかう
・にげる
・ぼうぎょ
・どうぐ

ーーーよし、ここは『どうぐ』だ!ーーー

・どうぐ
グラス
マグカップ
スプーン
フォーク
お皿
フライパン

ーーーうーん。フライパンだ!ーーー

フライパンで
・なぐる
・なぐる
・なぐる
・なぐる

ーーーもはや、殴るしかない!ーーー


「もずきゅん先輩?大丈夫ですか?」
 唐突にうつむいて黙るもずきゅんに問いかける猫実好和。

 もずきゅんはおもむろにぬらりと動き始める。
 彼女は黙ったままフライパンを手にすると、猫実に体を向けた。

「もずきゅん先輩?......ハッ!これは......殺気!?」

 無言のまま、もずきゅんは両手持ちのフライパンを猫実の頭上まで振り上げ...

「むんっ!!」

 ブンっと振り下ろす!

「!!」

 間一髪!
 猫実はひらりと攻撃をかわした!

「あぶなっ!!っていきなり何するんですか!!?」
 絶叫する猫実。

 引き続きフライパンを持ったままぬらりとする狂気のもずきゅん。

「もずきゅん先輩!一体どうしたんですか!?」

 もはや凶猫と化したもずきゅんに人間の言葉は通じないのか!?
 眼を青く光らせた彼女は、再び猫実に向かってフライパンを振り上げた!

「や、ヤバい!殺られる!!」

 その時!

「にん」の一声とともに

 トンッ

 もずきゅんのうなじに手刀の一撃が放たれた!
 もずきゅんはフライパンをカラーンと落とし、その場にドサッと崩れ落ちた。

「猫実殿。大丈夫でござるか?」
「お、お千代先輩!!」

 くノ一ネコ娘・千代が猫実好和の危機を救ったのである。
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