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ep1 猫カフェ『ネコまっしぐランド』

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 彼の名は猫実好和ねこざねよしかず
 身長一八十センチと無駄にタッパはあるが、黒髪アップバングに平凡な顔面を合わせた中肉体型のごくありふれた大学二年生である。
 ただ、彼にはひとつだけ特徴があった。
 それは、大の猫好きということである。(特徴なのか?)
 そして事の間違いの始まりは、彼がある猫カフェにうっかり入ってしまったことだった......。

ーーーーーー
 
「こんにちは!こちら本日からオープンの猫カフェ『ネコまっしぐランド』です!当店名物猫娘店長率いる可愛いネコちゃんが貴方の心を癒します!是非お立ち寄りになってください!」

「あれ?猫カフェ?こんなとこに?今日からオープンしたのか。あ、なんか猫のコスプレした人が呼び込みやってるな」

「あ、おにーさん!ネコは好きですか!?可愛いネコちゃんがたっぷりサービスしちゃいますよ!是非是非!」

「え?は、はい。猫は好きですけど......?」
「なら是非!!さあ、どうぞ!こちらへ!」

「ええっと、じゃあ......」
 猫好きの猫実好和は、呼び込みに促されるまま、オープンしたての猫カフェに足を踏み入れた。

「思ったより広いな。あれ?猫が全然いないな?」

「いらっしゃいませ!お客様、おひとりさまですね?では、こちらにどうぞ」

 彼は案内された壁際の一席に着き、
「まあ、普通の綺麗なカフェって感じかな」
 店内を眺めていると、獣の耳と尻尾を携えた若い女子が近づいて来る。

「ん?またコスプレ女子?」

 黄金がかった銀髪に子どものような大きな目。ノースリーブのタイトな茶色の上衣、縁の茶色い黒のショートパンツ、茶と黒の縞模様の長いソックス。
 背は低く大人びた少女のような体をした彼女は、この店の店長である。

「いらっしゃいませ!本日はご来店いただきありがとうございます!ウチは、当店店長のネコ娘アミと申しますぅ!」

「あ、どうも。店長さんですか(...ずいぶん若いな)」

「はい!ほんでは、早速ですが、当店自慢のキャストをご紹介させてもらいますぅ!」

「キャスト?あっ、猫の事か。じゃ、じゃあお願いします」
 猫実好和は若干戸惑いながら返事した。

「トップバッターはこちら!栗色セミロングに真っ赤なリボンが特徴の正統派美少女!当店不動のエース!宮崎出身のハヤオンやで!」

 アミ店長の紹介の声とともに、店の奥から猫耳と尻尾を装着した若い女子が現れる。
 彼女は見習い魔女のような黒いワンピースを纏い、箒を携えてやってきた。

「どうも。初めまして!私、宮崎から来たハヤオンと申します!」
 ハヤオンはペコリとお辞儀をした。

 店長は紹介を続ける。

「こちら、ハヤオンは、なんと元女優さんなんです!えっと、何の映画に出てはったんやっけ?」

「腐女の宅急便です」

「どうですか!?めっちゃすごくないですか!?」
 店長は興奮気味に言った。

「そ、そんな~もう昔のことですよ!」
 謙遜するハヤオン。

「せやかて一世を風靡したやんか!」
「ま、まあそうですけど......!えへへ...」

「どうですか!?すごいですやん!?」
 店長は興奮に輪をかけて猫実に同意を求める。

「は、はあ」

「ほんだら、次のキャストも紹介しますわ!続いてはこちら!ハヤオンと双璧を成すスター!王道の金髪ツインテールに黒い三日月リボンがチャーミングなテンプレートツンデレ娘!ナルや!」

 店長の掛け声とともに、またまた獣耳と尻尾を装着した若い女子が現れる。
 彼女は制服風の魔法少女のような上下を着て、手には先端に王冠のような物を形どったステッキを持っていた。

「は、初めまして!ワタシはナルよ!べ、別に来店してくれて、嬉しくなんかないんだからね!」
 ナルはふんっ!と横を向きながら腕を組み、いかにも典型的ツン子な挨拶をした。

 店長は続ける。
「ナルもすごいんやで!超人気長編ドラマにずっと出とったんやで!ドラマのタイトルなんやったっけ?」

「そ、ソーラームーンですけど」

「ほら?決め台詞あったやん?」
「もうっ!店長ったら!恥ずかしいからヤメて!」 

「ほら?言うてみ!?」

「ね、猫に代わってマタタビよ!......てもうやだハズいから!」

「おおぉ!どうです?すごいですやろ?」
 再び店長は興奮気味に猫実に求める。

「は、はあ」
「ほんだら次のキャストは...」

「ちょちょちょっと待って!こ、これいつまで続くんですか!?」

「いつまで?全キャスト分まで?」

「いやいや!まだ何も注文もしてないですよ!?と、とりあえず何か飲み物とか注文したいんですけど!」

「あーあー、そんなん気にせんといてもええですよ!今日はオープン初日やし!」

「いや!そーじゃなくて!」

 その時、
「アミーナ!お客様が困っとるぞ?」
 突然、店の奥から年齢のいった男性の声が響いた。
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