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ep11 暗黒魔導師
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「そうだ」
唐突に魔人が何かを思いついたように言った。
「なあエル。レードにやらせるのはどうだ?」
「その子にやらせるとは?」
「こいつら追い出せってつったろ?レードにやらせろよ」
「貴方が自分でやるのが面倒臭いだけでは?」
「ちげーよ。可愛い子には旅をさせろって言うだろ?いつまでも箱入りで育ててちゃレードも退屈になっちまうぞ」
幻惑の魔女は少しだけ考えてから「そうですね」と賛同した。
「つーわけだ。テメーらの相手はレードがやってやる」
魔人は隣の青年を示して愉快に笑ってから、エヴァンスへ挑発的な視線を投げつける。
「それともテメーはオレとやるか?」
反射的にマイルスがエヴァンスを守るように前へ出ようとするが、エヴァンスはそれを制して幻惑の魔女に向き直った。
「幻惑の魔女エルフォレス様。改めて確認させてください」
「何でしょう?」
「交渉には応じていただけないのですか?」
「フフフ。魔女はそんなに安くはないかしら」
「それは残念だ。貴女はもっと賢い方だと思っていたのに」
エヴァンスは両手をかざした。
「何のつもりです?」
「こうなってしまった以上、もうこの森には用はないので、焼き払います」
「あら。それは物騒ですね」
「これで元々の目的は達成できる。そうですよねぇ?」
エヴァンスは騎士長へ目をやった。
不意を突かれた騎士長は困惑する。
「確かに、討伐軍の目的は森の魔物の討伐。しかしマイルスは生きていて、そのマイルスが勇者様を刺した。それにエヴァンス殿が共謀している。もはや目的など......というより、貴方は何がしたいのだ?」
エヴァンスは若干の間を置いてから、奇妙な微笑を浮かべた。
「君ら如きに説明しても意味がない。さあ、炎の宴を始めようか」
エヴァンスの両手から燃えるような紅い光が放たれると同時に激しい魔力が噴出する。
口元に残酷な笑みを浮かべて彼は唱えた。
「〔テラ・ブレイズ〕」
転瞬、森中が灼熱の炎に包まれた。
すべてを焼き尽くさんと激烈な炎が吹き荒れ燃え狂う。
ゴォォォォォォォォ!!
このまま全員森ごと消し炭になる。
討伐軍の誰もがそう思った時だ。
突如として辺りに黒い何かが発生したかと思うと、それは炎を打ち消すように呑み込み始めた。
「こ、これは?」
騎士長と討幕軍が周囲を見回した。
黒い何かはズズズズッと見る見るうちに炎を呑み込んでいく。
「賢者様。これはまさか」
驚くマイルスにエヴァンスが答えた。
「闇の炎だ」
黒い何かは、黒い炎だった。
それは見る人が見なければ炎だとはわからないだろう。
「闇の黒炎、ダーク・ブレイズ。闇の炎は、燃えさかる炎をも呑み込みます」
魔女が恍惚の表情で両手を広げる。
「美しき闇の炎よ。すべてを燃やし尽くしてしまいなさい!」
間もなく森は闇の黒炎に覆い尽くされた。
いったい誰の仕業なのだろうか。
「いいぞレード!もっとやっちまえ!ガッハッハァ!」
魔人が豪快に笑った。
暗色の魔導師風の衣を纏った青年レードは、右手を掲げて立っている。
強大な闇の魔力を放ちながら立つその姿は、もはや人間を凌駕する何かだった。
唐突に魔人が何かを思いついたように言った。
「なあエル。レードにやらせるのはどうだ?」
「その子にやらせるとは?」
「こいつら追い出せってつったろ?レードにやらせろよ」
「貴方が自分でやるのが面倒臭いだけでは?」
「ちげーよ。可愛い子には旅をさせろって言うだろ?いつまでも箱入りで育ててちゃレードも退屈になっちまうぞ」
幻惑の魔女は少しだけ考えてから「そうですね」と賛同した。
「つーわけだ。テメーらの相手はレードがやってやる」
魔人は隣の青年を示して愉快に笑ってから、エヴァンスへ挑発的な視線を投げつける。
「それともテメーはオレとやるか?」
反射的にマイルスがエヴァンスを守るように前へ出ようとするが、エヴァンスはそれを制して幻惑の魔女に向き直った。
「幻惑の魔女エルフォレス様。改めて確認させてください」
「何でしょう?」
「交渉には応じていただけないのですか?」
「フフフ。魔女はそんなに安くはないかしら」
「それは残念だ。貴女はもっと賢い方だと思っていたのに」
エヴァンスは両手をかざした。
「何のつもりです?」
「こうなってしまった以上、もうこの森には用はないので、焼き払います」
「あら。それは物騒ですね」
「これで元々の目的は達成できる。そうですよねぇ?」
エヴァンスは騎士長へ目をやった。
不意を突かれた騎士長は困惑する。
「確かに、討伐軍の目的は森の魔物の討伐。しかしマイルスは生きていて、そのマイルスが勇者様を刺した。それにエヴァンス殿が共謀している。もはや目的など......というより、貴方は何がしたいのだ?」
エヴァンスは若干の間を置いてから、奇妙な微笑を浮かべた。
「君ら如きに説明しても意味がない。さあ、炎の宴を始めようか」
エヴァンスの両手から燃えるような紅い光が放たれると同時に激しい魔力が噴出する。
口元に残酷な笑みを浮かべて彼は唱えた。
「〔テラ・ブレイズ〕」
転瞬、森中が灼熱の炎に包まれた。
すべてを焼き尽くさんと激烈な炎が吹き荒れ燃え狂う。
ゴォォォォォォォォ!!
このまま全員森ごと消し炭になる。
討伐軍の誰もがそう思った時だ。
突如として辺りに黒い何かが発生したかと思うと、それは炎を打ち消すように呑み込み始めた。
「こ、これは?」
騎士長と討幕軍が周囲を見回した。
黒い何かはズズズズッと見る見るうちに炎を呑み込んでいく。
「賢者様。これはまさか」
驚くマイルスにエヴァンスが答えた。
「闇の炎だ」
黒い何かは、黒い炎だった。
それは見る人が見なければ炎だとはわからないだろう。
「闇の黒炎、ダーク・ブレイズ。闇の炎は、燃えさかる炎をも呑み込みます」
魔女が恍惚の表情で両手を広げる。
「美しき闇の炎よ。すべてを燃やし尽くしてしまいなさい!」
間もなく森は闇の黒炎に覆い尽くされた。
いったい誰の仕業なのだろうか。
「いいぞレード!もっとやっちまえ!ガッハッハァ!」
魔人が豪快に笑った。
暗色の魔導師風の衣を纏った青年レードは、右手を掲げて立っている。
強大な闇の魔力を放ちながら立つその姿は、もはや人間を凌駕する何かだった。
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