中途半端ブルース

根上真気

文字の大きさ
上 下
2 / 24

2話 ファミコン

しおりを挟む
 小学校時代に進んでみようか。
 小学生の頃を思い出す時、僕は必ず最初に、ある出来事が思い浮かぶ。

 入学式の日、つまり六年間の小学校生活一番最初の日、僕は幼稚園時代唯一の友達のアキト君と一緒に登校していた。
 家から小学校に行く道のりには、途中で必ず通らなければならない、車の通りも激しめの大通りがあり、その道を渡る横断歩道には、毎日登校時間中みどりのおばさんが子供達の安全を管理していた。
 僕とアキト君は、どういう訳かその横断歩道を使わないで、信号のない道を車が走っている中の隙を見つけて、ダーッと渡ってしまったのだ。
 事故はなかったが、その光景をみどりのおばさんが目撃していて、その事が学校に伝わり、入学式が終わった後に僕は先生に呼び出されて、入学早々叱られてしまったのである。(なぜそれが自分だという事が判明したのか、それは覚えていない)

 記念すべき小学校生活の第一歩を、そんな感じで見事に踏み外した僕だったが、小学校に入ってからの僕は、幼稚園時代とは違い、数人の友達ができ、それ以外の生徒達とも普通にしゃべれるようになっていた。
 その数人の友達の中でも、伊藤君という生徒とは特に仲が良く、僕は毎日のように伊藤君の家へ遊びに行った。

 伊藤君の家にはファミコンがあり、さらにはそのファミコンとディスクシステムが一体になったツインファミコンも持っていて、二人で毎日のようにそのツインファミコンに没頭した。
 そしてこのツインファミコンのバグり易さにはよく悩まされた。
 ディスクの読み込みエラーも多く、その度に、ツインファミコンの本体をぶったたいたりして強引に読み込ませていた。(ぶったたくのが効果的だった、と思う)
 とにかく、僕は伊藤君の家でゲームをひたすらやりまくっていた。

 今の時代は、それこそ親もゲームをやる世代で、家庭でのゲームに対する規制はかなり緩やかなもののようだが、僕の子供の頃は、親はゲームなどやらない世代で、例えば友達の家でみんなでゲームをやっていても、そこの親が出てきて「ゲームは一時間まで!」などと言われたりする。
 つまり、伊藤君の家は、ゲームをやりまくる事ができる非常に貴重な空間だったのである。
 ゲーム大好き少年だった僕にとっては、そういう意味でも、伊藤君はとても重要な友達だったのだ。

 そんな感じでゲームばかりやっていた僕と伊藤君だが、ゲーム以外の遊びでよくやっていたのが、フィギュアを使った遊びだ。
 お互いウルトラマンが大好きで、伊藤君はウルトラマンやその怪獣のフィギュアをたくさん持っていて、お互いそのフィギュアを使って空想を駆使し、二人で数々のバトルを繰り広げたのである。
しおりを挟む

処理中です...