コアラと私の恋人日記

chouchou

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コアラと夜のお散歩

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8時半からご飯を食べ始めて、そこから寝るまでの2時間ほどが平日の自由時間になる。
食器を洗ってぐだぐだしていると、ゴミ出しを終えたコアラが袖を引っ張ってきた。
「おさぽ?」
うん、とコアラが頷く。
散歩に行きたいみたいだ。
「ちょっとめんどくさいなぁ」
「ンー!」
コアラがむくれる。
「パジャマだし」
「ンー…」
コアラも自分が着ているお揃いのパジャマを見下ろす。
「わかったわかった、行こう」
コアラの興が醒めないうちに着替えさせる。
外の気温は、なんというかとてもちょうどよかった。
暑くも寒くもなく、弱い風が吹いていた。
「星見えないねぇ」
コアラと手を繋ぐ。コアラの手はちょっと繋ぎにくい。 
夜のお散歩はいつも、歩いて10分くらいのコンビニに行って、そこでアイスを買って食べながら帰ってくる。今日はバニラ味にするか、それともラムネ味にしようか。
「お散歩楽しいね」
「ンー♪」
ドラマだったらここで深い話とか悩み相談するんだろうなと思いつつ、コアラにはそんなことできないと諦める。
不意にコアラがぐいと袖を引っ張ってきた。
「ンンン」
「こっちに行きたいの?」
ぶんぶん頷く。
「えー…」
コアラの指さす先は細くて、街灯が一本もない暗い道だった。
「やだよ、暗いし怖い」
「ンンン!」
それでも行こうと言ってくる。
「嫌。行かない。」
こういう時の私は絶対譲らない。以前コアラの行こうと言った道で怖い思いをしたからだ。
動かない私をみて観念したコアラは、車道の向こう側の歩道を指差した。
「ンー」
「せめて違う道を歩きたいのね」
「ンン」
コアラはこういう時にあまり同じことをするのが好きではない。お決まりのメニューとか、ルーティンとか、身につけるものはいつも固定のくせに。
横断歩道を渡って、むこうがわのみちで帰った。
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