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一章

第11話『絶望ニ喰ワレタ』(1/2)

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 鋭い視線や陰湿な視線を感じてから数日後。
 ヒロはいつもどり、大学から家路に向かっている最中だった。
 今日はいつになく、ラピスの反応がなくそれは昨夜から今まで続いていた。
 
 こうなると、何が起きているのか見当がつかないとヒロは思っていた。
 ラピスの実体がないと、いくら体内にいようともこれほどまでに相手のことがわからないのはもどかしいともヒロは思いため息をついていた。

 ヒロはそのようなことを思いながら歩いていた矢先、再び視線を感じ取る。
 今度は前後左右から、まるで囲まれているように感じた。
 そう持ったのも束の間で、本当に囲まれてしまった。
 しかも、ヒロにとっては見覚えのある黒装束の連中だ。

 彼らは日中に堂々と襲撃をしてきたわけだ。
 なぜバレた? と脳裏によぎるものの今は液体金属も動かず魔人にもなれず、ラピスからの助言もない。

 何もかもが虚しく尽き果てていた。

 つまりどういうことかというと、ヒロは一方的にやられるだけだった。

 ――クソッ! なぜだ。どこで間違った。

 ヒロは思わず内心、叫んでしまう。
 ヒロの預かり知らぬところで、密告者がいたのかもしれない。

 確かにヒロは魔人化をするし、衝動的に共食いもした。
 さらには、ダンジョンで襲撃者を殲滅し貪り食らった。
 
 それが一部の者に見られていたのか、どこかの人らに密告されて今は窮地に陥る。
 なぜなら、襲撃を受けているにも変わらず、魔人化ができない状態なのだ。その理由は、全くわからない。

 しかもラピスは眠りについているのか、反応がまるでない。
 さらに悪いことに、これほど危機に陥っても、液体金属がまるで動かない。
 こんなことってあるのかよと、内心苛立ちを覚えながらも悪いことは重なるものだと、どこか冷静な自分もいた。
 
 魔法ウイルスに感染する以前と比べて、体力や筋力はダンジョンで活動していた分は向上していた。
 そうであっても、状況としては最悪に近い。それは、魔力を持つやつに丸腰の素手で挑むような状態になっていた。
 
 丸腰では、飛び道具を使う相手に太刀打ちができるわけもない。
 ゆえに、あっという間に包囲され複数人からタコ殴りにされると、魔力で拘束されどこかにつれてこられた。

 ーー数刻後。

 わずかに壁の隙間から薄明かりが差し込む以外に、光源がない場所に放り込まれた。
 当然周りには人の気配はなく、ただ一人暴行の傷で痛みが酷くうずくまっていた。

 カビ臭く、声が響くことからおそらくはこの部屋は、機密性が高くコンクリートで覆われた部屋なのだろうと想像に難しくなかった。

 今回の襲撃はヒロにとっては心当たりはかなりあるし、どこかのグループに所属していた者を食らったのは間違いない。

 それは以前ダンジョンで、複数人から襲撃を受けたからだ。

 だからといってヒロから手を出したわけではなく、向こう側から一方的に手を出してきたので、自衛のために倒した。

 それが今となって、逆恨みをされている。

 なのでいくら事情を言おうとも、ヒロの声は届かないし、相手の怨嗟を晴らす肉人形と化している。

 ーーまったく酷いよな……。

 内心そう思っても、現実を変えるには戦って勝つより他にない。
 残念なことは、今は戦う力も武器も何一つ無い。
 何よりラピスは、沈黙を保ったままなのが心が張り裂けてしまいそうだった。

 窓の無い部屋に放り込まれて真っ暗闇の中、背中から全身にかけて痛みで蠢いていた。

 痛いし苦しいと。
 
「……ラピス。……ラピス。くそっ……いないか」

 ヒロの肉体は、悲鳴をあげて今にも生を手放しそうな状態を、寸前のところでどうにか生を保っていた。
 状態は体をくの字に曲げて、ざらついた砂埃にまみれた石作りの床に身を丸めていた。
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