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一章

第8話『青ノ力』(7/9)

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 ――あれから数刻後。
 
 これだけ整えられていて、魔獣もそれなりの数がいる中でも、ヒロは三時間程度で次の階層に降る階段を見つけた。腕時計が示す時刻はそれを意味していた。
 このダンジョンに入る出入り口と同じ作りで、丘のように盛り上がり、その麓に口を開けて待ち構えている姿だ。

 変わらずその中は、視界が確保できるほど明るくなっており、一般的にどこにでもある神社などで見かける石で作られた階段をひたすら降りていくだけだった。

 ラピスは期待しながらいう。
「ようやくね」
 
 ヒロも同じ気持ちでいった。
「いよいよ二階層目か……」

 ラピスは周囲を把握しているのか、ヒロより検知が早く助言をした。
「まだこの先に行った人はいないみたいだら、存分に戦うといいわ」

 ヒロは同意し進む。
「そうだな」

 ここまでの道中、ヒロは襲撃された時以外は腕力だけでたどり着いていた。
 自身の力で他の者への流れ弾なんぞ起きたら、目も当てられない。
 せっかくの今後の戦力が台無しになってしまう。
 
 だからこそ、腕力だけで突き進んでいたものの、誰もいないとなると白の魔人の本領発揮というところだ。
 ただ残念ながらまだ白の魔人になれる感覚がしない。

 ヒロはまっすぐに伸びる下階段へ足を踏み入れた。

 ――数分後。

 真っ直ぐに降りるだけかと思いきや、かなりの時間を降りていたことになる。体感にして、十分程度は降り続けたような気がしていた。

 ヒロが二回層目へ降り立つと、目先には数百以上の群れで存在していた。
 それは人の形で葉のような緑の躯体をもち、平均的な人の背丈の7割程度ほどの大きさで筋骨隆々な姿を見た。
 これはまさにピンチというよりは、大量殲滅の機会が訪れたのだ。

 ラピスは叫ぶ。
「来たー! ヒロ! いっちゃえー!」

 ヒロはすかさずラピスに依頼した。
「援護、頼む」
 
 ヒロはそのまま群れの中央に突っ込み腰を低く構えた。
 掌底のような姿勢をとり腰を落とすと、正面の敵一体に衝撃波が打ち付けられる。
 その波動は、背後に連なる者へと伝わるもののせいぜ三人程度だ。
 ただし、三人とも打ち付けられた瞬間多量に吐血し、息絶えてしまう。
 
 これでは多数の敵は屠ることができない。まさに、多勢に無勢だ。
 
 それならばと、斬馬刀と呼べる身の丈を超える大剣を液体金属を使い瞬時に生成し、水平に薙ぎ払うと目先の五体ほどは一気に切断され、上半身は横凪に倒れていく。
 
 液体金属を礫のように放てない現状では、この斬馬刀が多数相手に最も殲滅速度が高く、数を捌く方を最優先にして回転するように大剣で薙ぎ払いを続ける。
 ラピスはそれを支援するかのように、ヒロの討ち損じた敵を、地面から円錐形の槍を作りだし串刺しにしていく方法で、数を減らしていく。
 
 まさに二人で息の合った戦い方で殲滅をしていく。
 見た目とまるで違うこの大剣は、非常に軽く横凪にするだけで最も簡単に切り裂ける切れ味の鋭さを誇る。
 
 まるでミキサーに肉を放り込んだかのように途端にミンチにされる様相だ。
 この足場とする地面は、凄惨さを物語るには十分すぎるほど血と肉に塗れた場所だった。

 目の前の魔獣たちは、当然そのような物に対して準備などしているわけもなく、全身で受けてしまう。
 無惨にも血肉が弾け飛び、床には無数の肉の欠片と血で溢れていた。

 これこそまさに、蹂躙と呼べる仕業だろう。
 一見無抵抗の者をなぶり殺しにしているように見えても、それは相手側が何もできずに次々と肉片になっているため、そのように見えるだけだ。

 ものの数秒でこの蹂躙劇は終わり、今や血生臭さと静けさが漂う。
 大剣を振り回していたのをぴたりと止めると、それが合図かのようにヒロはいう。
「殲滅、完了!」

 それに合わせてラピスは元気よく答える。
「ヒロ、お疲れー!」

 あれほどまでの数を人の状態でこの短時間に倒し切るとは、本人も思っていなかったのか、やった本人のヒロでさえ呆然としていた。

 しばらくして新たな敵が現れないことを確認して、魔核の採取に努める。
 これほどまに大量だと探すのも腰が折れるところを、今回はラピスが全て回収をしてくれた。

 こういうことはラピスの方でした方がヒロへの負担も少ないし、何より採取中の無防備を晒すこともないため、安全だという。
 
 個体数も多いものだから、多量の魔核を手に入れた。
 すべてラピスが管理する倉庫へ預けておく。
 
 一通り採取を終えてから歩みを進めた。

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