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一章

第8話『青ノ力』(3/9)

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――翌日の昼頃。
 
 国会議事堂地下のダンジョン入り口に、光学迷彩のままヒロはやってきた。
 ヒロの状態を見てラピスはいう。セトラーなんか目じゃないとラピスは舌なめずりをしていた。
 まだ何も攻撃すらしていないのに、ラピスのこの自信はどこからくるのか、ヒロは不思議でならなかった。
 ただし唯一言えるのは、今の状態だと異常に魔力を消費してしまう。
 魔力の質を高めて消費を軽減させるために、ダンジョンで魔獣狩りに勤しむことがベストだとラピスはいう。
 
 セトラーは、食肉となる人に対しては肉としてしか見ないので、賛辞をもらった場合には、注意を払った方がいいという。だからこそ、今のうち強くなっておくことが課題だ。
 それにセトラーたちの見た目は、容姿端麗で頭脳明晰。さらに肉体と魔力は、見た目と異なり強固で長寿。こうなると誰も太刀打ちできないという。

 さらに彼らの『S』シャウトには注意が必要で、これを浴びると大抵恍惚とした表情で洗脳されてしまうという。
 胸元でコの字を作りエネルギーを循環させた後、縦にずらして右を上左をしたにすると正面から見るとS字になる。
 両手をコの字で循環していたエネルギーがS字になることで逃げ場がなくなり、排出される。
 ラピスとほかのもう二つのウイルスは、それに対抗できる。
 いずれにしても、強い者ほど食肉化は避けられず遅かれ早かれ食われてしまう。
 そのため、早々に彼ら第一陣を追い払う準備を進めなければならない。

 結局それは、狩りをするしかないとラピスはいう。
 根本的に力を高めるためには、狩りをして魔獣から魔力を吸収し、魔力の底上げを図り強くなっていくより他にないという。

 ヒロは昨日訪れた国会議事堂の前でぼんやりとラピスと会話をしていた。突入前にいくつか確認しておきたいことがあったからだ。舞い降りた場所には、いつの間にか小高い丘ができており、その麓には大きく口を開けた穴があき、誰かが来るのを待ち望んでいるかのようだ。

 ヒロはラピスにとう。
「突入前に確認しておきたいのは、十層ごとに転移魔法陣が出現し地上に戻れるのと、階層ボスも同じく十層ごとにいるのは間違いないか?」

 ラピスは当たり前のことのように返事をした。
「ええ間違いないわ」

 ヒロは慎重すぎるほど、聞いてしまう。
「魔獣は下層へ降るほど強くなり、倒すと一定の時間後に再度現れるというのも間違いないか?」

 ラピスは公園にでもいく感覚のようで、あくまでも気楽に答えていた。
「そうね。せめてもの救いは、魔獣が倒された記憶は引き継がないから、同じ手が通用するってところね」

 ラピスからの回答を聞いて、小説で読んだことのある内容とは異なっており、どこかヒロは安堵していう。
「なるほどな。最後にこの最下層にはダンジョンの主がいて、それを倒すとダンジョンは消滅するのか?」

 ラピスは、困ったようにして答えた。
「それはないわ。魔獣はあくまでも生成物よ。ダンジョンを管理して司るのは水晶コアなの。それはさらに地中深くに埋まっているから、取り出すどころか見つけるのも不可能に近いわ」

 ヒロは腹を括り、進める決意をしていう。
「それだけわかれば、あとはやりながら確認してみるか。この魔人化もどの程度まで維持できるのか把握しておきたいからな」

 ラピスはほんとに軽くいう。
「多分、今のヒロなら瞬殺よ?」
 
 どこかヒロはに苦笑いをしながら踏み出していう。
「だといいんだけどな」

 ヒロは半信半疑ながらも生まれて初めてのダンジョンへ一歩踏み出した。
 この様子を一部の者は眺めており、入ることに躊躇していた。
 ところが、ヒロこと白の魔人が歩みを進めたことで、それに続くように他の者も各々入り始めた。
 これが、記念すべき人類初めてのダンジョン突入だった。

 ――数刻後。

 ラピスは機嫌良さそうにいう。
「ね、楽勝でしょ?」

 足元には、人型の魔獣が爆散していた。
 単純にヒロは腕力一辺倒で、殴り倒してきたのである。
 膂力が強すぎるあまりか、体に当てるたびに貫通してしまい最も簡単に相手は倒れていく。

 なんともいえない表情でヒロはラピスへ返す。
「魔人が強すぎるのか、それとも魔獣が弱いのかなんとも判断がつかないな……」
 
 ヒロは魔人の力を過信しているわけではないものの、あまりの手応えの無さに拍子抜けしていたのはあった。
 とはいえ、道中魔法を巧みに使い戦闘をしている他の人らは、かなり苦戦しているように見えた。
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