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一章
第5話『葛藤』(3/3)
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脳へ届く刺激に酔いしれ、ヒロは豹変してしまった。
もはや、完全にスイッチが入った状態になってしまった。
まだ魔人になっていないだけ、マシといえるだろう。
このテンションの状態でなったら、それこそ町が一つ消し飛んでしまう。
ヒロは絶叫に近い声で叫びながら言った。
「最高だ! もっとだー!」
ヒロの状態を確認すべくラピスは尋ねるも、こうなることは予見ずみでそうなるように仕向けたのもラピス当人だった。
「あれ? ヒロー? 大丈夫?」
あまりの脳へ伝わる衝撃からなのか、白目を剥きながらたどたどしく言葉をヒロは吐き出す。
「もっと……人を……よごせ」
完全にキレたヒロを見て、ラピスはどこか楽しそうにいう。
「あらー。これってもしかして豹変しちゃうタイプ?」
口調だけでなく言葉もおかしくなるのは、初めての『共食い』ならではの状態だ。
「俺は行ぐぞ」
ラピスは内心、してやったりといったところだ。
「あらら、これなら大丈夫かしら?」
また別のところで人を襲撃していた。
しかも液体金属の扱い方が非常にうまい。
「グハハハ! うまいじゃねーかー!」
ラピスは思わず舌なめずりをしながらいう。
「ヒロは初めての魔力で酔っちゃうのね……。可愛いわ」
しばらく共食いを繰り返したのち、ヒロはビルの壁面を背にしてしゃがみ込んでいた。
頭痛がするのかしきりに頭を押さえている。
「なんだ……痛い……な……」
ラピスは膝をくの字に曲げて前屈みになりながら、ヒロの顔を覗き込むようにいう。
「あらあらあら? 元に戻ったのかしら?」
こめかみをさすりながら、痛そうに顔を顰めながらヒロはいう。
「元に? 俺は……俺だぞ?」
ラピスは、ニコニコと言うよりニヤニヤとしながら先のことをそのまま言う。
「やっぱ戻ったのね? もしかして頭痛?」
この後に及んで、まだヒロは夢などと言う。
「ああ、なんかひどく悪い夢を見ていたようなんだ」
ラピスはまっすぐたつと、胸の前で小さく拍手をしながらいう。
「夢? 立派に『共食い』していたわ。これで『共食い童貞』卒業ね、おめでと!」
そんなことあるわけ……ないとは、言い切れなかった。
ヒロは先ほどまでのことを思い起こす。
朧げにではあるけど記憶はあり、自分とは異なる意志が介在していたような気さえする。そしてその時味わった脳への甘美な誘いは、忘れようもない。
諦念したかのようにヒロはつぶやく。
「あれが……食うことなのか……」
ラピスはこれまた嬉しそうに人差し指を立てて、インターフォンを押す仕草でいう。
「ピンポーン! 大正解!」
ヒロは、一つずつ確認するかのように言った。
「あれを繰り返し、やるってことなのか……」
さらにラピスは、何度もインターフォンを押すような仕草で楽しそうにしていう。
「ピンポーン! ピンポーン! またまた、大正解!」
ヒロは悲痛な声を出しているものの、その表情は真逆で悪魔的な笑みを浮かべながらいう。
「つまり……。殺しまくる殺人鬼だな」
その表情にラピスは気がついても、淡々と事実を語る。
「そうよ。生きるためには誰かが死んで、誰かが生き残るの」
ラピスのいうことを一瞬否定しようとしたものの、そうでないことにヒロは気が付く。
「そんなことできるわけ……」
ラピスはそれに気がつき、あえてヒロへ尋ねた。
「ないわけ、ないわよね?」
ラピスに返す言葉などない。あるのは先の人を喰うことへの渇望だ。
「……」
それにヒロは何もいえないのは、理由があった。
やってまった過去を消せないのは、今十分すぎるほど味わってしまった。
ただし、過去は変えられないが、未来は選べるはずだ。
それにしても、その未来も怪しくなってきた……。
もはや、完全にスイッチが入った状態になってしまった。
まだ魔人になっていないだけ、マシといえるだろう。
このテンションの状態でなったら、それこそ町が一つ消し飛んでしまう。
ヒロは絶叫に近い声で叫びながら言った。
「最高だ! もっとだー!」
ヒロの状態を確認すべくラピスは尋ねるも、こうなることは予見ずみでそうなるように仕向けたのもラピス当人だった。
「あれ? ヒロー? 大丈夫?」
あまりの脳へ伝わる衝撃からなのか、白目を剥きながらたどたどしく言葉をヒロは吐き出す。
「もっと……人を……よごせ」
完全にキレたヒロを見て、ラピスはどこか楽しそうにいう。
「あらー。これってもしかして豹変しちゃうタイプ?」
口調だけでなく言葉もおかしくなるのは、初めての『共食い』ならではの状態だ。
「俺は行ぐぞ」
ラピスは内心、してやったりといったところだ。
「あらら、これなら大丈夫かしら?」
また別のところで人を襲撃していた。
しかも液体金属の扱い方が非常にうまい。
「グハハハ! うまいじゃねーかー!」
ラピスは思わず舌なめずりをしながらいう。
「ヒロは初めての魔力で酔っちゃうのね……。可愛いわ」
しばらく共食いを繰り返したのち、ヒロはビルの壁面を背にしてしゃがみ込んでいた。
頭痛がするのかしきりに頭を押さえている。
「なんだ……痛い……な……」
ラピスは膝をくの字に曲げて前屈みになりながら、ヒロの顔を覗き込むようにいう。
「あらあらあら? 元に戻ったのかしら?」
こめかみをさすりながら、痛そうに顔を顰めながらヒロはいう。
「元に? 俺は……俺だぞ?」
ラピスは、ニコニコと言うよりニヤニヤとしながら先のことをそのまま言う。
「やっぱ戻ったのね? もしかして頭痛?」
この後に及んで、まだヒロは夢などと言う。
「ああ、なんかひどく悪い夢を見ていたようなんだ」
ラピスはまっすぐたつと、胸の前で小さく拍手をしながらいう。
「夢? 立派に『共食い』していたわ。これで『共食い童貞』卒業ね、おめでと!」
そんなことあるわけ……ないとは、言い切れなかった。
ヒロは先ほどまでのことを思い起こす。
朧げにではあるけど記憶はあり、自分とは異なる意志が介在していたような気さえする。そしてその時味わった脳への甘美な誘いは、忘れようもない。
諦念したかのようにヒロはつぶやく。
「あれが……食うことなのか……」
ラピスはこれまた嬉しそうに人差し指を立てて、インターフォンを押す仕草でいう。
「ピンポーン! 大正解!」
ヒロは、一つずつ確認するかのように言った。
「あれを繰り返し、やるってことなのか……」
さらにラピスは、何度もインターフォンを押すような仕草で楽しそうにしていう。
「ピンポーン! ピンポーン! またまた、大正解!」
ヒロは悲痛な声を出しているものの、その表情は真逆で悪魔的な笑みを浮かべながらいう。
「つまり……。殺しまくる殺人鬼だな」
その表情にラピスは気がついても、淡々と事実を語る。
「そうよ。生きるためには誰かが死んで、誰かが生き残るの」
ラピスのいうことを一瞬否定しようとしたものの、そうでないことにヒロは気が付く。
「そんなことできるわけ……」
ラピスはそれに気がつき、あえてヒロへ尋ねた。
「ないわけ、ないわよね?」
ラピスに返す言葉などない。あるのは先の人を喰うことへの渇望だ。
「……」
それにヒロは何もいえないのは、理由があった。
やってまった過去を消せないのは、今十分すぎるほど味わってしまった。
ただし、過去は変えられないが、未来は選べるはずだ。
それにしても、その未来も怪しくなってきた……。
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