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一章
第1話『プロローグ』(2/2)
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窓もない部屋だからだろうかと思うものの、あれだけの音や振動があれば何か気が付くはずだと思っていた。
あまりに突拍子もない事故だったので、ヒロは先ほどのことを思い浮かべながら歩いて帰った。
ヒロは大学近くのオンボロアパートに住んでおり、歩いて5分の近さが魅力だ。
ボロでも風呂とトイレはあるし、キッチンももちろんある。
単に築年数が古いだけだ。
家に着くと、荷物を放り出しベットに飛び込む。
思わず、声に出てしまう。
「ああ、疲れたな」
すると不意に気配もないのに、聞きなれない同世代ぐらいの女性の声がした。
「大変ね、お疲れさま」
驚きのあまりヒロは飛び起き、再び声を上げた。
「え?」
ヒロしかいない部屋でしかも女性の声がし、気配はない。
まるで幽霊かのように思えてくる。
そのようなことは非科学的で、あり得ないとヒロは思う。
ところがその思いとは関係なく、声は続きを話そうとする。
まるでごく当たり前のように、繰り返し言葉がやってくきた。
「あらら? お初だったわね。あたしはラピスよろしくね」
ヒロは唐突すぎて、頭がおかしくなったんだろうかと周りを見回す。
「誰も……。いない? 幻聴か?」
普通にまるで隣にいるような感覚で、再び声がした。
「いるよ? ヒロの中にね」
またしても、衝撃的な答えに襲われる。
「俺の中? どういうこと?」
するとごく当たり前のことを話していると言わんばかりの雰囲気でラピスはいう。
「さっき葉っぱ触ったでしょ? 魔法ウイルスに感染したんだよ?」
ヒロは思わず自分の手のひらを見つめ、開いたり閉じたりと繰り返し動かしていた。
「げっ、マジ?」
魔法ウイルスなど聞いたこともないし、見たこともない。
そのような物の存在など、生からして怪しいと思っていまう。
ところがラピスはごく当たり前のように、気軽にヒロへ答えた。
「うん。マジの大マジ」
ヒロは突然、精神病になったのかと悩んでしまう。
こうした異常な時はなんというのか、精神科に行けばいいのかそれとも内科に行くべきなのか。
幻聴が聞こえるばかりか、その幻聴と会話までしている状態だ。
どう考えたところで、一般的でないのは間違いないだろう。
思わず言葉を漏らす。
「ヤバイ……」
すぐにその言葉に反応したのか、ラピスと名乗る女性はいう。
「大丈夫だよ? ヒロは普通だよ? あっ、ちょっと違うか……」
そこで最後の『違う』に思わずヒロは、反応してしまう。
「え? どう違うんだ?」
ラピスはどこか嬉しそうにいう。
「ウイルス的にみて、抱かれたい男ナンバーワンかな」
そこでようやく声が女性であることに、ヒロは今更ながら気がつく。
それだけ気が動転していたのだろう。
そしてヒロはいう。
「……って。ラピスは女なのかよ?」
ラピスは、気を悪くしたかのように言葉を返す。
「そうよ? 悪い?」
ヒロは思わず怒らせたと焦り、訂正した。
「いや、そういう意味でないんだけど……」
するとラピスは、奇想天外なことを言い出した。
「そしたらさ、ヒロには見えるようにしてあげる」
ヒロは驚きのあまり、大きな声を出してしまう。
「何を? うわっ!」
ラピスはヒロの様子や反応を楽しむかのように、妖艶な笑みを向けていう。
「ね? 見えたでしょ」
そこにはヒロと一メートルにも満たない距離感で、誰しもが振り返るほどの美少女が現れた。
ラピスは、胸の手前で小さく手を振る。
まるで幽霊のごとく半透明な姿は、現実には存在していないことを示していた。
ラピスと思われる美少女をヒロは、思わず凝視をしてしまう。
見た目は、タイトなウエットスーツをきた姿で佇む。
銀髪の背中まである髪はストレートで、美しく輝く。
横に流した前髪に、長いまつ毛が影を落とす。
黒目がちな目は、潤んでいてすいこまれそうになる。
桜色の唇から送り出される声は、ついつい聞いてしまうほど透き通る声だ。
ヒロにしてみたら何もかもが突然起きており、今度は幻覚まで見るようになったと内心困惑していた。
しかもかなり好みの美少女でド・ストライクときたものだ。
だから、妄想もここまでくると病気かもしれないと、ヒロは冷静に考えていた。
ヒロは右手のひらをおでこに当てて、熱を測るかのような仕草を見せるとヒロは言う。
「俺、頭がおかしくなったんだろうか……」
笑顔を絶やさずラピスは楽しそうに言う。
「大丈夫だよ?」
何が大丈夫なのか、それともおかしくなっても大丈夫なのか、わけがわからなくなってきた。
明日は昼以降からだし、早いけどもう寝てしまおうと不貞寝を決め込む。
ただ、とりあえず目の前の妄想へ言葉を交わしてみた。
「俺はもう寝る。おやすみ」
変わらず、ラピスの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「うん。ヒロおやすみね」
もう、どうにでもなれと思いながら、ふて寝のつもりがいつの間にか疲れもあり、完全に寝てしまった。
あまりに突拍子もない事故だったので、ヒロは先ほどのことを思い浮かべながら歩いて帰った。
ヒロは大学近くのオンボロアパートに住んでおり、歩いて5分の近さが魅力だ。
ボロでも風呂とトイレはあるし、キッチンももちろんある。
単に築年数が古いだけだ。
家に着くと、荷物を放り出しベットに飛び込む。
思わず、声に出てしまう。
「ああ、疲れたな」
すると不意に気配もないのに、聞きなれない同世代ぐらいの女性の声がした。
「大変ね、お疲れさま」
驚きのあまりヒロは飛び起き、再び声を上げた。
「え?」
ヒロしかいない部屋でしかも女性の声がし、気配はない。
まるで幽霊かのように思えてくる。
そのようなことは非科学的で、あり得ないとヒロは思う。
ところがその思いとは関係なく、声は続きを話そうとする。
まるでごく当たり前のように、繰り返し言葉がやってくきた。
「あらら? お初だったわね。あたしはラピスよろしくね」
ヒロは唐突すぎて、頭がおかしくなったんだろうかと周りを見回す。
「誰も……。いない? 幻聴か?」
普通にまるで隣にいるような感覚で、再び声がした。
「いるよ? ヒロの中にね」
またしても、衝撃的な答えに襲われる。
「俺の中? どういうこと?」
するとごく当たり前のことを話していると言わんばかりの雰囲気でラピスはいう。
「さっき葉っぱ触ったでしょ? 魔法ウイルスに感染したんだよ?」
ヒロは思わず自分の手のひらを見つめ、開いたり閉じたりと繰り返し動かしていた。
「げっ、マジ?」
魔法ウイルスなど聞いたこともないし、見たこともない。
そのような物の存在など、生からして怪しいと思っていまう。
ところがラピスはごく当たり前のように、気軽にヒロへ答えた。
「うん。マジの大マジ」
ヒロは突然、精神病になったのかと悩んでしまう。
こうした異常な時はなんというのか、精神科に行けばいいのかそれとも内科に行くべきなのか。
幻聴が聞こえるばかりか、その幻聴と会話までしている状態だ。
どう考えたところで、一般的でないのは間違いないだろう。
思わず言葉を漏らす。
「ヤバイ……」
すぐにその言葉に反応したのか、ラピスと名乗る女性はいう。
「大丈夫だよ? ヒロは普通だよ? あっ、ちょっと違うか……」
そこで最後の『違う』に思わずヒロは、反応してしまう。
「え? どう違うんだ?」
ラピスはどこか嬉しそうにいう。
「ウイルス的にみて、抱かれたい男ナンバーワンかな」
そこでようやく声が女性であることに、ヒロは今更ながら気がつく。
それだけ気が動転していたのだろう。
そしてヒロはいう。
「……って。ラピスは女なのかよ?」
ラピスは、気を悪くしたかのように言葉を返す。
「そうよ? 悪い?」
ヒロは思わず怒らせたと焦り、訂正した。
「いや、そういう意味でないんだけど……」
するとラピスは、奇想天外なことを言い出した。
「そしたらさ、ヒロには見えるようにしてあげる」
ヒロは驚きのあまり、大きな声を出してしまう。
「何を? うわっ!」
ラピスはヒロの様子や反応を楽しむかのように、妖艶な笑みを向けていう。
「ね? 見えたでしょ」
そこにはヒロと一メートルにも満たない距離感で、誰しもが振り返るほどの美少女が現れた。
ラピスは、胸の手前で小さく手を振る。
まるで幽霊のごとく半透明な姿は、現実には存在していないことを示していた。
ラピスと思われる美少女をヒロは、思わず凝視をしてしまう。
見た目は、タイトなウエットスーツをきた姿で佇む。
銀髪の背中まである髪はストレートで、美しく輝く。
横に流した前髪に、長いまつ毛が影を落とす。
黒目がちな目は、潤んでいてすいこまれそうになる。
桜色の唇から送り出される声は、ついつい聞いてしまうほど透き通る声だ。
ヒロにしてみたら何もかもが突然起きており、今度は幻覚まで見るようになったと内心困惑していた。
しかもかなり好みの美少女でド・ストライクときたものだ。
だから、妄想もここまでくると病気かもしれないと、ヒロは冷静に考えていた。
ヒロは右手のひらをおでこに当てて、熱を測るかのような仕草を見せるとヒロは言う。
「俺、頭がおかしくなったんだろうか……」
笑顔を絶やさずラピスは楽しそうに言う。
「大丈夫だよ?」
何が大丈夫なのか、それともおかしくなっても大丈夫なのか、わけがわからなくなってきた。
明日は昼以降からだし、早いけどもう寝てしまおうと不貞寝を決め込む。
ただ、とりあえず目の前の妄想へ言葉を交わしてみた。
「俺はもう寝る。おやすみ」
変わらず、ラピスの嬉しそうな声が聞こえてくる。
「うん。ヒロおやすみね」
もう、どうにでもなれと思いながら、ふて寝のつもりがいつの間にか疲れもあり、完全に寝てしまった。
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